ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ーかなうの診療所ー
吉音「いたたっ、痛い、痛いよ先生……っ」
かなう「いいからじっとしていろ。……うむ、手当が良かったな。しばらく痛むだろうが、なに、跡も残らず治るさ。それにしてもなんで火傷なんか」
悠「えーと……」
おれはことの顛末をかなうさんにはなした。
かなう「はっはっは、そりゃあ悠、お前がいかん」
悠「あー?おれすか?」
かなう「そうさ。料理なんて難しいことを、新にやらせちゃあいかん」
吉音「あうーーー」
悠「そ……そんなに難しかったかな……」
寒天を斬るだけなんだけどなぁ…………。素朴な疑問におれが頭を抱えていると……。
「た……助けて……っ」
かなう「なんなんだ、おいっ」
養成所の戸板をぶち破りそうな勢いで転がり込んできたのはひとりの男子生徒だった。
男子生徒「助けて……っ、殺される……っ」
殺されるとは穏やかじゃないぞ?おれ達が駆けよると、男子生徒が倒れた畳の上に、泥と、そして血の跡が。
かなう「おい、しっかりしろ!切られたのか?おいっ」
男子生徒「助けて……助けてくれ……っ」
男子生徒は余ほど動揺しているのか、同じことばかり繰り返している。よほど恐ろしい目にあったのか。
悠「とにかく落ち着け。ここなら安心だ、なに鬼より恐ろしいのがふたりも……」
かなう「なんだと?」
吉音「悠ぅ……」
悠「あー……うん、とにかく落ち着こう。おいおい、よく見たらふちこち血が出てるじゃんか。かなうさん」
かなう「あぁ。頭と、足に喰らったのがちょっと酷いな。錯乱してるのもそのせいだろう」
かなうさんはおれに生徒を預けると、治療道具を取りに立ちあがった。そのとき。
「おうっ、ここに男が逃げ込まなかった……おおっと、いたいた」
最初の怪我人同様土足で上がり込んできたのは数人の男子生徒だった。揃いも揃ってえらくガラが悪い。あーあ、またかなうさんが怒るぞ……。
不良生徒A「そいつをこっちに渡してもらおうか」
かなう「なんだと?」
不良生徒A「そいつにはちっと用があるんでな。おう、黒部。まさか本気で逃げられると思ったんじゃねえだろうな」
黒部「…………ひぃっ」
すごまれて、黒部と呼ばれた怪我人はおれの腕から逃げ出そうとした。よほど恐ろしいらしい。
悠「なんの用事か知らんが、こいつはケガ人だぞ」
不良生徒A「知ったことか。どうせすぐにそんなものはどうでもよくなるさ」
男達は下卑た調子で笑った。
悠「どうやら、この怪我もお前達の仕業らしいな」
吉音「そうなの?」
不良生徒A「だったらどうした?」
かなう「ならいっそうお前達に、こやつを渡すわけにはいかんということだ」
不良生徒A「んだと、このガキ!」
かなう「ふん。お前たち、この辺の者じゃないようだな」
かなうさんがつかつかと男達に近づいていく。彼女の正体を知らない彼らは、まだ余裕の身体で笑っているが……。
不良生徒B「おいおい、あんまり駄々こねると痛い目みるぜ?」
不良生徒C「気持ちいい目の間違いだろ?ぐへへっ」
不良生徒D「手前ぇはこういうのが好みかよ。まあいい、行きがけの駄賃だ。運が悪かったと思ってあきらめてくれや」
かなう「まったくだ……な」
不良生徒D「あがっ!」
かなうさんの傘で急所を一撃された男子生徒は、一声呻いて悶絶した。あの傘、柄が鋼鉄製だからなぁ……。あんなもんで突かれたら痛いだけじゃ済まないぞ、普通。
吉音「いたたっ、痛い、痛いよ先生……っ」
かなう「いいからじっとしていろ。……うむ、手当が良かったな。しばらく痛むだろうが、なに、跡も残らず治るさ。それにしてもなんで火傷なんか」
悠「えーと……」
おれはことの顛末をかなうさんにはなした。
かなう「はっはっは、そりゃあ悠、お前がいかん」
悠「あー?おれすか?」
かなう「そうさ。料理なんて難しいことを、新にやらせちゃあいかん」
吉音「あうーーー」
悠「そ……そんなに難しかったかな……」
寒天を斬るだけなんだけどなぁ…………。素朴な疑問におれが頭を抱えていると……。
「た……助けて……っ」
かなう「なんなんだ、おいっ」
養成所の戸板をぶち破りそうな勢いで転がり込んできたのはひとりの男子生徒だった。
男子生徒「助けて……っ、殺される……っ」
殺されるとは穏やかじゃないぞ?おれ達が駆けよると、男子生徒が倒れた畳の上に、泥と、そして血の跡が。
かなう「おい、しっかりしろ!切られたのか?おいっ」
男子生徒「助けて……助けてくれ……っ」
男子生徒は余ほど動揺しているのか、同じことばかり繰り返している。よほど恐ろしい目にあったのか。
悠「とにかく落ち着け。ここなら安心だ、なに鬼より恐ろしいのがふたりも……」
かなう「なんだと?」
吉音「悠ぅ……」
悠「あー……うん、とにかく落ち着こう。おいおい、よく見たらふちこち血が出てるじゃんか。かなうさん」
かなう「あぁ。頭と、足に喰らったのがちょっと酷いな。錯乱してるのもそのせいだろう」
かなうさんはおれに生徒を預けると、治療道具を取りに立ちあがった。そのとき。
「おうっ、ここに男が逃げ込まなかった……おおっと、いたいた」
最初の怪我人同様土足で上がり込んできたのは数人の男子生徒だった。揃いも揃ってえらくガラが悪い。あーあ、またかなうさんが怒るぞ……。
不良生徒A「そいつをこっちに渡してもらおうか」
かなう「なんだと?」
不良生徒A「そいつにはちっと用があるんでな。おう、黒部。まさか本気で逃げられると思ったんじゃねえだろうな」
黒部「…………ひぃっ」
すごまれて、黒部と呼ばれた怪我人はおれの腕から逃げ出そうとした。よほど恐ろしいらしい。
悠「なんの用事か知らんが、こいつはケガ人だぞ」
不良生徒A「知ったことか。どうせすぐにそんなものはどうでもよくなるさ」
男達は下卑た調子で笑った。
悠「どうやら、この怪我もお前達の仕業らしいな」
吉音「そうなの?」
不良生徒A「だったらどうした?」
かなう「ならいっそうお前達に、こやつを渡すわけにはいかんということだ」
不良生徒A「んだと、このガキ!」
かなう「ふん。お前たち、この辺の者じゃないようだな」
かなうさんがつかつかと男達に近づいていく。彼女の正体を知らない彼らは、まだ余裕の身体で笑っているが……。
不良生徒B「おいおい、あんまり駄々こねると痛い目みるぜ?」
不良生徒C「気持ちいい目の間違いだろ?ぐへへっ」
不良生徒D「手前ぇはこういうのが好みかよ。まあいい、行きがけの駄賃だ。運が悪かったと思ってあきらめてくれや」
かなう「まったくだ……な」
不良生徒D「あがっ!」
かなうさんの傘で急所を一撃された男子生徒は、一声呻いて悶絶した。あの傘、柄が鋼鉄製だからなぁ……。あんなもんで突かれたら痛いだけじゃ済まないぞ、普通。