ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ーとある街路ー
八鳥「何っ?おまえ、どうやって……」
往水「なぁに、蛇の道は蛇ってやつですよ。ちょいとばかり金がかかりましたが、三人ともすぐに見つかりました。」
八鳥「金を撒いてまで探したのか?何故だ?」
往水「いやなに、アタシの金じゃないんですよ。臨時収入がありましてね」
八鳥「そんなことは聞いておらん。どうして、そこまでして探したのかと聞いているんだ」
往水「アタシだって、袖の下に小金を差し入れてもらうのが好きな小悪党ですよ」
八鳥「話を逸らすな!私の質問に答えんか!」
往水「けどね、貰った分は便宜を図るのが筋ってもんです。貰うだけ貰って知らんぷりってのは……外道の所業だ」
八鳥「同類のおまえが、私を責めるか!?」
往水「同類?そうだな。俺もおまえと同じく、お天道様にそっぽを向けた邪道のもんだ。けどな……邪道の道すら踏み外した外道が、俺を同類呼ばわりするんじゃねえや!」
八鳥「抜かせぇ!!」
往水「……」
ズバッッ!!
八鳥「ぐあっ!」
往水「おい、気をつけろ。おまえは弱い者いじめしかできない畜生風情なんだ。俺に敵うはずがないだろ」
八鳥「うぅ……わ、分かった。金だろ。金が欲しいんだろ。金ならあるんだ。ほら、いくら欲しいか言え。な?」
往水「ああほら、やっぱり畜生だ。おまえら外道はどいつもこいつも、金、金、金と最後は同じに啼きやがる。」
八鳥「ひぁ――ッ……や、止めて――たっ、助けて、くれえぇぇぇぇ……」
往水「諦めろ――この世にゃ、神も仏もないんだからよ」
八鳥「ひいいいっ!!」
ズバッ……!!
ー大江戸学園:教室ー
朝の教室は、仕打ち人の話題で持ちきりだった。
輝「おいら、登校前に寄り道して取材して来たんだけど、いやぁ見事なもんだったよ」
由真「うん、聞いた聞いた。お寺の鐘に、ロープでぐるぐる巻きにされてたんでしょ。えぐいわよねー」
そうなのだ。早朝、北町同心の八鳥佐外が寺の鐘に括り付けられた姿で発見されたのだ。
吉音「仕打ち人の仕業だって話し、本当なのかな?」
輝「たぶんね。他にこんなことする変人、いないでしょ。それに、犯行声明まででてるんだし」
悠「それ、瓦版にも書いてあったな」
八鳥が発見されたのも、輝のところに仕打ち人の名前で犯行声明が届けられたからだそうだ。
由真「でもどうして、奉行所じゃなくて輝のところに声明を出したりしたのかな?」
悠「……たぶん、そのほうが噂を早く広められると思ったからだろうな」
これまで遅々として集まらなかった証言や目撃情報が、今朝になってから、ぞくぞくと集まっているらしい。それもこれも、証言をして恨まれても仕打ち人が助けに来てくれる――と勇気づけられたからだろう。
輝「おいらも、悠ちゃんの想像通りだと思うよ」
内心が顔に出ていたらしい。輝がにやりと笑っている。
悠「……」
輝「でもね、悠ちゃん。おいらも思惑に乗ってやっただけじゃないのさ」
悠「というと?」
輝「例のウェイトレス。元はライバル店に勤めていたって話しだけど、さらにその前は越後屋にいたんだなぁ。んで、見玖亭は依然、越後屋のフランチャイズ勧誘を断ったことがある――どうだい?わかるかい?」
悠「……分かりたくは、ない」
輝「これを記事にしたら、大スクープになると思わないかい?いや、思うだろ!」
悠「そのふたつを事実につなげる証拠があれば、な」
輝「ソイツは目下、情報提供者募集中」
悠「証拠はないってことか」
輝「いまはまだ、ね」
肩をすくめたおれに向けて、輝は楽しげに笑っている。
由真「ちょっとぉ、さっきから何を二人だけで話しているのよ!」
悠「別に大したことじゃないよ」
輝「そうそう。ただのつまんない世間話だって。妬かない妬かない」
由真「はぁ?誰が誰に妬いてるっていうのよ。というか、妬くわけないでしょ」
悠「あー?どうしておれを睨むんだよ」
輝「そりゃあもう、目は口ほどにものをいう、ってねぇ」
由真「てーるぅ!あんまいうと、ほんとに怒るよっ」
輝「おおっと、怖い怖い」
悠「ははは……」
――おれ達がいつもの調子で話している横で、吉音はずっと神妙な顔をしたままだった。
吉音「仕打ち人って、善い人なのかな?それとも悪い人なのかな……?」
その呟きへの答えは、おれの中にも見つからなかった。
八鳥「何っ?おまえ、どうやって……」
往水「なぁに、蛇の道は蛇ってやつですよ。ちょいとばかり金がかかりましたが、三人ともすぐに見つかりました。」
八鳥「金を撒いてまで探したのか?何故だ?」
往水「いやなに、アタシの金じゃないんですよ。臨時収入がありましてね」
八鳥「そんなことは聞いておらん。どうして、そこまでして探したのかと聞いているんだ」
往水「アタシだって、袖の下に小金を差し入れてもらうのが好きな小悪党ですよ」
八鳥「話を逸らすな!私の質問に答えんか!」
往水「けどね、貰った分は便宜を図るのが筋ってもんです。貰うだけ貰って知らんぷりってのは……外道の所業だ」
八鳥「同類のおまえが、私を責めるか!?」
往水「同類?そうだな。俺もおまえと同じく、お天道様にそっぽを向けた邪道のもんだ。けどな……邪道の道すら踏み外した外道が、俺を同類呼ばわりするんじゃねえや!」
八鳥「抜かせぇ!!」
往水「……」
ズバッッ!!
八鳥「ぐあっ!」
往水「おい、気をつけろ。おまえは弱い者いじめしかできない畜生風情なんだ。俺に敵うはずがないだろ」
八鳥「うぅ……わ、分かった。金だろ。金が欲しいんだろ。金ならあるんだ。ほら、いくら欲しいか言え。な?」
往水「ああほら、やっぱり畜生だ。おまえら外道はどいつもこいつも、金、金、金と最後は同じに啼きやがる。」
八鳥「ひぁ――ッ……や、止めて――たっ、助けて、くれえぇぇぇぇ……」
往水「諦めろ――この世にゃ、神も仏もないんだからよ」
八鳥「ひいいいっ!!」
ズバッ……!!
ー大江戸学園:教室ー
朝の教室は、仕打ち人の話題で持ちきりだった。
輝「おいら、登校前に寄り道して取材して来たんだけど、いやぁ見事なもんだったよ」
由真「うん、聞いた聞いた。お寺の鐘に、ロープでぐるぐる巻きにされてたんでしょ。えぐいわよねー」
そうなのだ。早朝、北町同心の八鳥佐外が寺の鐘に括り付けられた姿で発見されたのだ。
吉音「仕打ち人の仕業だって話し、本当なのかな?」
輝「たぶんね。他にこんなことする変人、いないでしょ。それに、犯行声明まででてるんだし」
悠「それ、瓦版にも書いてあったな」
八鳥が発見されたのも、輝のところに仕打ち人の名前で犯行声明が届けられたからだそうだ。
由真「でもどうして、奉行所じゃなくて輝のところに声明を出したりしたのかな?」
悠「……たぶん、そのほうが噂を早く広められると思ったからだろうな」
これまで遅々として集まらなかった証言や目撃情報が、今朝になってから、ぞくぞくと集まっているらしい。それもこれも、証言をして恨まれても仕打ち人が助けに来てくれる――と勇気づけられたからだろう。
輝「おいらも、悠ちゃんの想像通りだと思うよ」
内心が顔に出ていたらしい。輝がにやりと笑っている。
悠「……」
輝「でもね、悠ちゃん。おいらも思惑に乗ってやっただけじゃないのさ」
悠「というと?」
輝「例のウェイトレス。元はライバル店に勤めていたって話しだけど、さらにその前は越後屋にいたんだなぁ。んで、見玖亭は依然、越後屋のフランチャイズ勧誘を断ったことがある――どうだい?わかるかい?」
悠「……分かりたくは、ない」
輝「これを記事にしたら、大スクープになると思わないかい?いや、思うだろ!」
悠「そのふたつを事実につなげる証拠があれば、な」
輝「ソイツは目下、情報提供者募集中」
悠「証拠はないってことか」
輝「いまはまだ、ね」
肩をすくめたおれに向けて、輝は楽しげに笑っている。
由真「ちょっとぉ、さっきから何を二人だけで話しているのよ!」
悠「別に大したことじゃないよ」
輝「そうそう。ただのつまんない世間話だって。妬かない妬かない」
由真「はぁ?誰が誰に妬いてるっていうのよ。というか、妬くわけないでしょ」
悠「あー?どうしておれを睨むんだよ」
輝「そりゃあもう、目は口ほどにものをいう、ってねぇ」
由真「てーるぅ!あんまいうと、ほんとに怒るよっ」
輝「おおっと、怖い怖い」
悠「ははは……」
――おれ達がいつもの調子で話している横で、吉音はずっと神妙な顔をしたままだった。
吉音「仕打ち人って、善い人なのかな?それとも悪い人なのかな……?」
その呟きへの答えは、おれの中にも見つからなかった。