ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園ー

十兵衛「皆、修練ご苦労」

静かだがよく通る声が道場に響いた。
生徒たちはみんな気圧されるように頭を下げた。

十兵衛「ここにいる君たちのほとんどが剣徒ではない。」

悠「……(おれに至っては生徒でもない。)」

十兵衛「帯刀も許されぬ自分等が剣の修練など無駄とは思ってはいないだろうか?だが逆だ。普段剣を持たぬ君らこそ修練が必要なのだ。剣の修練はけっして強さを求めるものではない。心を高めるものだと思って頑張って欲しい。以上だ。南国先生の指導によく従い、修練を続けてくれ。」

悠「なんかよくわからんがすごい迫力だな。」

十兵衛「?」

おもわず盛れた声が指南役の耳に届いたようだ。
おれと目があうとゆっくり近づいてくる。

悠「やべっ…」

十兵衛「新しく見る顔だな。転入生か?」

悠「いやいや、なんっーか…あれです、ただの通りすがりの人です。あ、小鳥遊悠です」

十兵衛「はは、そんなにしゃっちょこばるな」

悠「は、はい」

近くに来てはっきりした彼女の威圧感は梔姉さんに似ている。

十兵衛「剣を振ってみろ」

悠「はっ…」

ビュン!ビュン!

十兵衛「ほぅ…剣道の経験があるな?」

二、三度上段から降り下ろすのを見ただけで、当てられてしまった。

悠「ま、ほんの少しだけですがね」

十兵衛「そして何年も前にやめている」

またも、大正解。

悠「はい。」

十兵衛「なぜ諦めた?」

悠「素質がないんっすよ。おれと武器は相性が悪い。鑑賞は好きだけど。扱うとなると別。」

十兵衛「それは誰が決めた?自分か?」

悠「まぁ、そうかな」

十兵衛「もったいないな、筋はいいのに」

悠「はは。」

十兵衛「大江戸学園に来たのも天命かもしれん。お前が望むなら鍛え直してやろう」

悠「は、はぁ…」

十兵衛「なんだ、覇気の無い返事だな。まぁいい、無理強いはしない。気が向いたらこい。」

悠「はい、わかりました。」

指南役はぽんとおれの肩を叩くと、おれの前を去った。

男子生徒A「すごいな、お前。あの柳宮十兵衛にあんな風に声をかけられるなんて」

男子生徒B「そのまま、弟子入りしちまえばいいのに」

悠「いや、剣は苦手なんだよ。」

男子生徒A「もったいないな」

そうはいわれても、おれにだっていろいろ事情がある。
その後、指南役は生徒の素振りをひととおり見ていくと道場をあとにした。

悠「柳宮十兵衛か…梔姉さんバリにプレッシャーがあったな」

南国「ほうら、さらに素振り百回だ。小鳥遊もやりやがれぃ」

悠「なんで…なんで…おれ、素振り強要されてんの……。」
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