ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
往水「いやですね、そんなじっと見つめないでくださいよ。二人っきりでそんな、アタシだって照れちゃいますって」
悠「見つめてませんよ。それに、二人っきりじゃない……あ、あれ?」
そこまで言ってようやく、おれはまだ吉音が着ていないことに気がついた。いつもならとっくに来ている頃合いなんだけど……。
往水「新さんのことですから、どっかで道草食ってるんじゃないですか?それか、他所で餌付けされてるとか」
悠「そんな、野良猫じゃないんだから」
中村の軽口にゲンナリさせられてると、不意に甲高い鳴き声が聞こえてきた。
セン『ぴょっ、ぴょーっ』
リツ『ぴぴーっ』
騒ぎだしたのは、中村の剣魂だ。
悠「中村さん、これは?」
往水「大したことじゃありません。電話が入ってるから早く出ろってさわいでるだけです」
悠「……早く出てくださいよ」
剣魂に電話に出るように催促される人なんて、中村くらいのものだろう。ちなみにおれは携帯不携帯だ。
往水「それじゃ、ちょいと失礼しまして」
中村は懐から取り出した携帯電話を耳に当てる。
悠「……」
往水「はい、こちら中村屋で……おや、おやおや……ほほぅ、そりゃまた……はい、どうも助かりました。では」
悠「電話、なんだったんですか?」
目のまえで電話されると、どうしたって気になるものだ。
往水「んー、なんといったらいいんでしょうかねぇ……」
悠「あ、奉行所からの連絡とかでおれにいえないんだったら別にいいんですけど」
往水「いいえ、そういうのではないんです。アタシの個人的なお仲間からの連絡で」
悠「個人的な……?」
往水「いまぁ、それは置いときまして……新さんの居場所、わかりましたよ」
悠「え?」
往水「北町の番屋にしょっ引かれたそうです」
悠「あー?」
中村は寒がるように、ひょいと首をすくめた。おれはただただ、唖然とするしかなかった。
ー北町番所ー
吉音「あっ、悠!」
番屋の奥から同心らしき生徒に連れられてやってきたのは、確かに吉音だった。
悠「新、おまえ一体、何をやったんだ?」
吉音「なんにもしてないよっ!」
八鳥「この女は、街中で喧嘩騒ぎを起こしていたんだ」
抗議の声をあげる吉音に代わって、吉音を連れて来た同心がそう告げてきた。
悠「喧嘩ぁ?マジか?」
おれは、吉音に目を向ける。
吉音「違うよ!あたしは、喧嘩を止めようとしたんだもん!」
往水「そうなると、喧嘩を止めようとしたのに喧嘩でお縄になったわけですか」
おれをここまで案内してくれた中村さんが、面白そうな顔で嘴を突っ込んでくる。すると、吉音を連れて来た同心は驚きの顔を浮かべた。
八鳥「お、中村?」
往水「へへっ、さっき振りですね」
二人の態度からすると、どうやら知り合いらしい。北と南の違いはあっても、同じ同心として交流があるものなのだろう。
往水「それでー、こちらの新さんは喧嘩をしてたんで?それとも喧嘩を止めようとしてたんで?」
吉音「だから、ふたしは喧嘩を止めようとしたの!だけど、止めてくれないから、ちょっと怒ったの!それだけっ!」
悠「……それ、いい訳になってないぞ」
吉音は結局、喧嘩していないとは言っていないわけだ。
往水「いやですね、そんなじっと見つめないでくださいよ。二人っきりでそんな、アタシだって照れちゃいますって」
悠「見つめてませんよ。それに、二人っきりじゃない……あ、あれ?」
そこまで言ってようやく、おれはまだ吉音が着ていないことに気がついた。いつもならとっくに来ている頃合いなんだけど……。
往水「新さんのことですから、どっかで道草食ってるんじゃないですか?それか、他所で餌付けされてるとか」
悠「そんな、野良猫じゃないんだから」
中村の軽口にゲンナリさせられてると、不意に甲高い鳴き声が聞こえてきた。
セン『ぴょっ、ぴょーっ』
リツ『ぴぴーっ』
騒ぎだしたのは、中村の剣魂だ。
悠「中村さん、これは?」
往水「大したことじゃありません。電話が入ってるから早く出ろってさわいでるだけです」
悠「……早く出てくださいよ」
剣魂に電話に出るように催促される人なんて、中村くらいのものだろう。ちなみにおれは携帯不携帯だ。
往水「それじゃ、ちょいと失礼しまして」
中村は懐から取り出した携帯電話を耳に当てる。
悠「……」
往水「はい、こちら中村屋で……おや、おやおや……ほほぅ、そりゃまた……はい、どうも助かりました。では」
悠「電話、なんだったんですか?」
目のまえで電話されると、どうしたって気になるものだ。
往水「んー、なんといったらいいんでしょうかねぇ……」
悠「あ、奉行所からの連絡とかでおれにいえないんだったら別にいいんですけど」
往水「いいえ、そういうのではないんです。アタシの個人的なお仲間からの連絡で」
悠「個人的な……?」
往水「いまぁ、それは置いときまして……新さんの居場所、わかりましたよ」
悠「え?」
往水「北町の番屋にしょっ引かれたそうです」
悠「あー?」
中村は寒がるように、ひょいと首をすくめた。おれはただただ、唖然とするしかなかった。
ー北町番所ー
吉音「あっ、悠!」
番屋の奥から同心らしき生徒に連れられてやってきたのは、確かに吉音だった。
悠「新、おまえ一体、何をやったんだ?」
吉音「なんにもしてないよっ!」
八鳥「この女は、街中で喧嘩騒ぎを起こしていたんだ」
抗議の声をあげる吉音に代わって、吉音を連れて来た同心がそう告げてきた。
悠「喧嘩ぁ?マジか?」
おれは、吉音に目を向ける。
吉音「違うよ!あたしは、喧嘩を止めようとしたんだもん!」
往水「そうなると、喧嘩を止めようとしたのに喧嘩でお縄になったわけですか」
おれをここまで案内してくれた中村さんが、面白そうな顔で嘴を突っ込んでくる。すると、吉音を連れて来た同心は驚きの顔を浮かべた。
八鳥「お、中村?」
往水「へへっ、さっき振りですね」
二人の態度からすると、どうやら知り合いらしい。北と南の違いはあっても、同じ同心として交流があるものなのだろう。
往水「それでー、こちらの新さんは喧嘩をしてたんで?それとも喧嘩を止めようとしてたんで?」
吉音「だから、ふたしは喧嘩を止めようとしたの!だけど、止めてくれないから、ちょっと怒ったの!それだけっ!」
悠「……それ、いい訳になってないぞ」
吉音は結局、喧嘩していないとは言っていないわけだ。