ｰ新宿:茶屋小鳥遊堂ｰ

光姫「お?なにか思い当たる節があるようじゃの」

由佳里「なんですかなんですか?」

悠「いやぁ、大したことないっすよ」

光姫「なんじゃそれは、そんなふうに言われたら余計に気になるではないか」

由佳里「教えてくださいよぉ!」

悠「うーん……笑わない?」

光姫「人の真摯な気持ちを笑ったりするものか、のうハチ」

由佳里「はいっ!そういうのって大事だと思います!」

悠「……おれが命より大事ってか、守りたいものって、街かなって、おれは結局年中深海魚みたいに色んな場所をウロウロしてる。色んな奴にあって助けてやって助けてもらって……まぁ、結局自分の居場所でなら命張れるんじゃないかなーって……ここでもずいぶんと色んな場所に行動範囲が増えたし……なーんちゃって」

光姫「照れんでもよい、誰も笑ったりはしておらんじゃろ?」

由佳里「立派だと思います!恰好いいです悠さん!」

おー、やばいぞー……すげー顔が暑いぞ。

悠「は、ははっ……なんかすいません……」

由佳里「浩太郎君も悠さんみたいに恰好良く……あれ?浩太郎君」

悠「あー?帰っちゃったのかな?」

光姫「お?わしの杖はどこじゃ?はて、確かにここに立てかけておったはずなんじゃが……」

おれの中で悪い予感が浮かぶ。

悠「まさか……浩太郎が持っていったんじゃ」

由佳里「そんなっ!杖には印籠と、スケとカクもいるのに!」

悠「まだそんなに遠くに行ってないはい゛だ、捕まえて話を聞かないと!」

光姫「ずずず……」

悠「……み、光姫さん?」

光姫「んー?なんじゃ?」

悠「いつも落ち着いているとは思ってましたけど、今回ばかりは少し慌てた方がいいんじゃないでしょうか……」

光姫「ほう、そうかの?」

由佳里「だだだだ、だって印籠っ、印籠が入ってるわけで……あれがないと控えおれられなくなれちゃれ……」

光姫「落ち着かんかいハチ、日本語がおかしくなっておるぞ。そう心配せずとも大丈夫じゃ、手は打ってあるでの。それに……わしは浩太郎の強さ、浩太郎の心を信じておるからの」

光姫さんはそういうと、再びお茶をずずずっとすすった。





ｰとある境内ｰ

浩太郎「…………」

乙級男子A「ははっ、こいつ本当に盗ってきやがったよ!」

浩太郎「……その杖をどうするの?」

乙級男子A「決まってるだろ?売り飛ばして金にするんだよ!」

乙級男子B「そんな杖が、高値で売れたりすんのかー?」

乙級男子C「ここ見てみろよここ……これ徳河の家紋だぜ」

乙級男子B「徳河って……あの徳河か!?」

乙級男子C「他にどの徳河があるっていうんだよ」

乙級男子B「すげーじゃん!超レアじゃん!」

乙級男子A「最初に見た時からこれは値打ちもんだって思ってたんだよなー」

乙級男子C「これでしばらく遊ぶ金には困らないなッ!」

「「「はーっはっはっはー!」」」

光姫『おぬしは自分のことを情けないと言ったがの、さっきの連中に比べれば随分立派じゃぞ。ちゃんと礼がいえる、弱い者いじめをしない……どれも当たり前のことじゃが、それができる人間は少ない。だからもう泣くのはよせ、胸を張るんじゃ』

お姉さん……。

悠『いきなり変わることは出来なくても、積み重ね次第でどうにでもなる。意気地がないと諦めるのは簡単だ。泣かされても逃げても、殴られても100回耐えてみろよ。痛い目は見るし心はすり減るかもしれない。それでも一回一回を少しずつ変えられたなら、100回もし耐え抜けたなら今と同じ位置にはいないと思うぞ。』

由佳里『気持ちだけじゃなく、行動に起こすことが大事ですよね』

吉音『そうだよ!強くなって、いじめっ子なんてぶっ飛ばしちゃえ!』

僕にできるのかな……。

光姫『浩太郎にはまだ難しかったかの。じゃが、浩太郎にもわかるときがくる。身命を賭して守らなければならないもの、そのために人はいくらでも強くなれるのだから』