ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー路地ー
小鳥遊堂の裏で稽古をつけてもらった帰り道、浩太郎は自ら行動を起こしたことで少しの自信がついていた。お姉さんたちがいっていた心の強さ、それが大事なんだ。気持ちで負けちゃいけない、もうあいつらの言いなりにはならないぞ!そう自分に気合を入れ直す。
乙級男子A「ずいぶんあいつらと仲よさそうじゃねぇかよぉ」
浩太郎「くっ……今日も待ち伏せ……」
いじめっ子たちはニヤニヤと笑いながら浩太郎を取り囲む。ぐっと歯を食いしばって、自分を奮い立たせようとする。しかし、すり込まれた恐怖は根が深く、淹れなおしたはずの気合はいつの間にか霧散してしまっていた。
乙級男子B「実はさ、お前にちょっと頼みたいことがあるんだよねぇ」
乙級男子A「それやってくれたらさ、もうお前のこといじめないからさ」
乙級男子C「仲間はずれにもしないしよぉ」
いままでの関係を変えるという提案に、浩太郎は戸惑った。いじめられなくなるのは嬉しいが、その要求には裏があるような気がした。
乙級男子B「どうなんだよっ!やるのかやらないのかどっちだ!」
恫喝され、頭の中が真っ白になる。
浩太郎「……それをすれば、本当にもういじめないんだよね?」
自分はやっぱり弱い……。
乙級男子A「約束は守るさ……」
浩太郎「ぼ、僕は、なにをすればいいの?」
乙級男子A「なーに、簡単なことだよ……」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
放課後、今日もひとりで店を開ける。ていうかいい加減吉音も学習したらどうだろうか……いやまあ、補習を受けてるから学習はしてるんだけど。常勤してない用心棒ってどうなのかな……。こんど報酬をネタに交渉してみようかな。勉強するか、昼飯の量を減らすか、どっがいいって。……ガチ泣きされそうな気がする。
浩太郎「こ、こんにちは……」
悠「おう、浩太郎じゃないか。今日も来てくれたんだな」
浩太郎「あ、あの……今日はお姉さんはまだ?」
悠「光姫さんも忙しい人だからね、いつもここに来るとは限らないよ」
浩太郎「そうなんですか……」
悠「ミッキさんに何か用事だった?」
浩太郎「い、いえ、そういうことじゃないんです……」
悠「ならいいんだが……まあ座れよ、いまお茶入れるから」
なんだろう、浩太郎の様子が少しおかしい気がする。どぎまぎしてるっていうか、落ち着きがない。
浩太郎「は、はい……」
「おや?今日は先客が居るのう」
浩太郎「お姉さんたちっ!」
光姫「浩太郎も悠の茶の味がわかるか、ますます将来が楽しみじゃの」
由佳里「常連さんが増えることはいいことですよね!」
悠「二人ともいらっしゃい。よかったな浩太郎、光姫さんにあえて」
光姫「なんじゃ、浩太郎はわしに遭いに来てくれたのか?」
浩太郎「は、はい……いろいろとまたお話しを聞こうと思って……」
光姫「そうかそうか、勉強熱心なのはいことじゃ」
悠「その熱心さ、新にも分けてやりたいよ」
お茶を淹れてお茶請けと一緒に出すと、おれたち四人はいつものように世間話を始めた。
光姫「この杖がどうかしたのか?」
浩太郎「いや、その……お姉さんいつも持ってるから、大事なものなのかなって……」
由佳里「大事も大事、超大事なものですよ!」
浩太郎「そ、それって高価なものってことですか?」
光姫「これに値段はつけられんよ。いくら積まれようと、売るつもりはない。ここには大事なものがたくさん詰まっておるからの」
浩太郎「大事なもの、ですか……」
光姫「そうじゃ。そういう意味では命よりも大事なものじゃ」
浩太郎「…………」
光姫「浩太郎にはまだ難しかったかの。じゃが、浩太郎にもわかるときがくる。身命を賭して守らなければならないもの、そのためにひとはいくらでも強くなれるのだから」
悠「命より大事なものかぁ……おれにとったらなんだろうなぁ」
由佳里「お店はどうです?悠さんの名前もついてますし」
悠「確かに、光姫さんにつけてもらった名前も、この店も気にいってるけど……命より大事かって言うと、ぴんとこないかなぁ……」
光姫「悠が生きておれば、店はいくらでもひらけれるからの」
悠「んー、なんだろ、おれにとって命よりも大事なもの……あっ」
小鳥遊堂の裏で稽古をつけてもらった帰り道、浩太郎は自ら行動を起こしたことで少しの自信がついていた。お姉さんたちがいっていた心の強さ、それが大事なんだ。気持ちで負けちゃいけない、もうあいつらの言いなりにはならないぞ!そう自分に気合を入れ直す。
乙級男子A「ずいぶんあいつらと仲よさそうじゃねぇかよぉ」
浩太郎「くっ……今日も待ち伏せ……」
いじめっ子たちはニヤニヤと笑いながら浩太郎を取り囲む。ぐっと歯を食いしばって、自分を奮い立たせようとする。しかし、すり込まれた恐怖は根が深く、淹れなおしたはずの気合はいつの間にか霧散してしまっていた。
乙級男子B「実はさ、お前にちょっと頼みたいことがあるんだよねぇ」
乙級男子A「それやってくれたらさ、もうお前のこといじめないからさ」
乙級男子C「仲間はずれにもしないしよぉ」
いままでの関係を変えるという提案に、浩太郎は戸惑った。いじめられなくなるのは嬉しいが、その要求には裏があるような気がした。
乙級男子B「どうなんだよっ!やるのかやらないのかどっちだ!」
恫喝され、頭の中が真っ白になる。
浩太郎「……それをすれば、本当にもういじめないんだよね?」
自分はやっぱり弱い……。
乙級男子A「約束は守るさ……」
浩太郎「ぼ、僕は、なにをすればいいの?」
乙級男子A「なーに、簡単なことだよ……」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
放課後、今日もひとりで店を開ける。ていうかいい加減吉音も学習したらどうだろうか……いやまあ、補習を受けてるから学習はしてるんだけど。常勤してない用心棒ってどうなのかな……。こんど報酬をネタに交渉してみようかな。勉強するか、昼飯の量を減らすか、どっがいいって。……ガチ泣きされそうな気がする。
浩太郎「こ、こんにちは……」
悠「おう、浩太郎じゃないか。今日も来てくれたんだな」
浩太郎「あ、あの……今日はお姉さんはまだ?」
悠「光姫さんも忙しい人だからね、いつもここに来るとは限らないよ」
浩太郎「そうなんですか……」
悠「ミッキさんに何か用事だった?」
浩太郎「い、いえ、そういうことじゃないんです……」
悠「ならいいんだが……まあ座れよ、いまお茶入れるから」
なんだろう、浩太郎の様子が少しおかしい気がする。どぎまぎしてるっていうか、落ち着きがない。
浩太郎「は、はい……」
「おや?今日は先客が居るのう」
浩太郎「お姉さんたちっ!」
光姫「浩太郎も悠の茶の味がわかるか、ますます将来が楽しみじゃの」
由佳里「常連さんが増えることはいいことですよね!」
悠「二人ともいらっしゃい。よかったな浩太郎、光姫さんにあえて」
光姫「なんじゃ、浩太郎はわしに遭いに来てくれたのか?」
浩太郎「は、はい……いろいろとまたお話しを聞こうと思って……」
光姫「そうかそうか、勉強熱心なのはいことじゃ」
悠「その熱心さ、新にも分けてやりたいよ」
お茶を淹れてお茶請けと一緒に出すと、おれたち四人はいつものように世間話を始めた。
光姫「この杖がどうかしたのか?」
浩太郎「いや、その……お姉さんいつも持ってるから、大事なものなのかなって……」
由佳里「大事も大事、超大事なものですよ!」
浩太郎「そ、それって高価なものってことですか?」
光姫「これに値段はつけられんよ。いくら積まれようと、売るつもりはない。ここには大事なものがたくさん詰まっておるからの」
浩太郎「大事なもの、ですか……」
光姫「そうじゃ。そういう意味では命よりも大事なものじゃ」
浩太郎「…………」
光姫「浩太郎にはまだ難しかったかの。じゃが、浩太郎にもわかるときがくる。身命を賭して守らなければならないもの、そのためにひとはいくらでも強くなれるのだから」
悠「命より大事なものかぁ……おれにとったらなんだろうなぁ」
由佳里「お店はどうです?悠さんの名前もついてますし」
悠「確かに、光姫さんにつけてもらった名前も、この店も気にいってるけど……命より大事かって言うと、ぴんとこないかなぁ……」
光姫「悠が生きておれば、店はいくらでもひらけれるからの」
悠「んー、なんだろ、おれにとって命よりも大事なもの……あっ」