ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】

ーとある境内ー

光姫「ん?どうした?やっぱりどこか痛むのか?」

浩太郎「そ、そうじゃないんです……あいつらの言いなりになってやられっぱなしの自分が情けなくて……でも、僕はお姉さんみたいに強くないから……」

光姫「ははっ、お姉さんか」

浩太郎「あ、あのっ……助けてくれて、ありがとうございました!」

光姫「なあに、たまたま通りかかっただけじゃよ。おぬしにケガがなければよかった。おぬしは自分のことを情けないと言ったがの、さっきの連中に比べればずいぶんと立派じゃぞ。ちゃんと礼がいえる、弱い者いじめをしない……どれも当たり前のことじゃが、それができる人間は少ない。だからもう泣くのはよせ、胸を張るんじゃ」

浩太郎「は、はいっ」

光姫「さて、運動したら甘いものが食べたくなったのう、ハチ、悠の所へ行くか」

由佳里「いいですねぇっ!」

光姫「坊主、おぬし名前はなんという?」

浩太郎「浩太郎です……」

光姫「浩太郎か、いい名前じゃ。わしらはこれから甘いものを食べに行くんじゃが、浩太郎もどうじゃ?」

浩太郎「えっ、でも……僕お金が……」

光姫「なあに、そこはお姉さんに任せておけ。付き合ってくれるかの?」

柔和な笑顔で誘われて、浩太郎は自然と頷いていた。





ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「おや」

光姫「邪魔するぞ」

悠「光姫さん、いらっしゃいませ」

由佳里「こんにちはー!」

悠「由佳里もいらっしゃい。ん?そちらは初めましてかな?」

浩太郎「は、初めましてっ……乙級一年の浩太郎といいますっ」

悠「おっす、一応甲級二年の小鳥遊悠だ、初めまして。礼儀正しくてしっかりしてるな」

浩太郎「あ、ありがとうございます……」

光姫「茶と茶うけを三人分頼む」

悠「了解しました」

おれはいったん奥に引っ込むと、お茶を淹れてお茶請けを用意する。それを、表の縁台、いつもの場所に座る光姫さんらに提供した。

由佳里「わぁっ!今日のお茶請けはみたらし団子なんですね!」

悠「時間がたっぷりあるんでたれを気合入れて作ってみたんだわさ」

光姫「ふむ……甘みが後に引かず、さっぱりとしておる。また腕をあげたのう」

悠「ありがとうございます、光姫さんにそういってもらえると凄くうれしいっすよ」

浩太郎「…………」

光姫「ん?どうした浩太郎、食べんのか?」

悠「あー?みたらし団子苦手だったか?それならあんこもあるから、そっちに代えてやろうか?もしくは激辛せんべいもあるが」

浩太郎「い、いえ、大丈夫ですっ」

光姫「さっきのこと、まだ引きずっておるのか?」

悠「さっき?なんかあったんですか?」

光姫「浩太郎、悠は信用できる男じゃ、話してもよいか?」

浩太郎「自分のことなので……自分で話します」

光姫「そうか、偉いの……悠、浩太郎の話しをきいてくれるか?」

悠「もちろんですよ」

浩太郎「実は僕、クラスメイトからいじめにあっていて……」

浩太郎は、ぽつりぽつりと自分の状況を話してくれた。入学当初は平和だったのだが、時間が立ち、みんなが学園生活に慣れ友達ができはじめたころ、ちょっとした出来事からクラスメイトによるいじめが始まった。最初はふざけ合ってる延長のようなものだったのだが、段々とエスカレートしていった。持ち物にイタズラをされたり、稽古だと言われて暴力を受けたり。
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