ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】

ー大江戸学園:教室ー

男子生徒「待たせたな、一也」

一也「悪いね、辰也兄さん。わざわざ呼び出したりして」

辰也「どうしたんだ?そんな急にあらたまって」

一也「ああ。兄さんにちょっっと相談があってね」

辰也「俺に相談?なんだよ、いってみろよ」

一也「あ……うん、あの……さ。その……実はさ、僕には……僕には好きな子がいるんだっ!」

辰也「好きな……子?」

一也「うん。兄さんも良く知ってる子だ」

辰也「それは……ひょっとして、美波のことか?」

一也「うん、そうだ。僕は美波が好きだ」

辰也「っ!」

一也「美波とは、いままでずっと仲の良い幼馴染として接してきた。だけどもう、それだけじゃ我慢できないんだよっ。僕は恋人として彼女と付き合いたい」

辰也「一也、お前……」

一也「だから、僕は美波に告白しようと思う。いいかい?兄さん」

辰也「なッ、なんでそんなことをおれに聞くんだ?お前の問題だろ、好きにすればいいじゃないか」

一也「本当にいいんだな?辰也兄さん」

辰也「……勝手にしろよ。おれには関係ない」

一也「そうか。分かったよ」

辰也「話、それだけか?なら行くな?」

一也「……ああ」

辰也「じゃあな、一也」

一也「兄さんっ、僕は本気だからなッ!」

辰也「……頑張れよ」

一也「…………辰也兄さん、僕はもう遠慮はしないよ」


ー大江戸学園:廊下ー

辰也「……」

女生徒「あ……っ!?」

辰也「美波!?お前……聞いてたのか?」

美波「ご、ごめん。タっちゃんを見かけたから追いかけてきたんだけど、その……」

辰也「そっか。で、どうするんだ?一也はお前に告白するっていってるけど」

美波「それは……確かにカッちゃんのことは好きだし、大切な幼馴染だけど。でも、私は……」

辰也「っ!」

美波「タッちゃん、私……」

辰也「お似合いだぜ、お前と一也。学園の人気者どうし、ぴったりじゃないか。このまま付き合っちゃえよ」

美波「っ!そんなことっ!」

辰也「アイツは本気なんだ。だから、お前も真剣に考えてやってくれ、美波」

美波「…………」

辰也「それじゃあな」

美波「タッちゃん……」





ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「『私には、幼馴染の双子の兄弟がいます。その弟の方から、自分につき合って欲しいと告白されてしまいました。三人の関係を壊さないためには、どう返事をしたら良いのでしょう?教えてください』だってさ」

想「恋愛相談というやつですか……」

吉音が読み上げた投書に関し、逢岡さんが渋い顔をして考え込む。

悠「うーん、ムカつく……じゃなくて、こういう方面は、正直苦手なんだけどな」

想「あはは、それは私だって同じですよ。色恋沙汰には疎いですから」

困惑した呟きを漏らすおけに苦笑いすると、逢岡さんは軽く肩をすくめて見せる。

吉音「こういうのってアレでしょ、さんかくかんけーってヤツ?」

一方、吉音と言えば、何だか妙にワクワクしたように目を輝かせていた。

悠「あのよぉ、こーいう問題ってのは外野が興味本位で首を突っ込むべきじゃな気がするんだけど」

吉音「そんなんじゃないよっ、マンガみたいですご~い、とか思ったりなんかしてないよっ!」

いや、めちゃくちゃ思ってるだろ。

想「この方も困っているようですし。お話をお聞きして、意見を聞くぐらいなら問題ないでしょう。小鳥遊君が言う通り結局は当人同士の問題ですから、余計なお世話にならぬよう、十分気をつけるべきですが」

吉音「うんうん。分かってるって!」

満面の笑顔が、逆にもの凄く不安なのだが……。まぁ、逢岡さんもついているわけだし、勝手に突っ走ることもないだろうと信じたい。

想「それでは、まず差出人の方に連絡を取り、実際にお会いしてみましょう」

悠「分かりました。すぐに出かける準備をします。吉音、ちょっと手伝ってもらえるか?」

吉音「おっけー!えへへっ、わくわく♪」

……はぁ、嫌な予感しかしない。無駄に期待感を募らせている吉音に一抹の不安を抱きつつ、おれは店の入り口に『準備中』の札を掛けるのだった。
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