ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

深夜。
大江戸学園、第八校舎、校門前…

天狗面の男「……」

黒ずくめの男があらわれる。辺りに人の居ないことを確かめた男は手に持ったぽり容器から校門にガソリンのようなものを振りかける。

ポリ容器の中身をすべてかけきると、今度はビラを苦無のようなもので校門に張り付けた。
そして最後に男は懐からマッチを取り出した。

面の奥からはくぐもった笑いが聞こえる。男は火のついたマッチを投げる。
ガソリンに引火し、瞬く間に校門が火に包まれる。

炎に面を赤く染めながらしばらくその有り様をみつめた後、男は暗闇へと逃げ去った。

激しい炎の中でビラが揺らめく。ビラは不燃布に書かれたものらしく燃え尽きることなくその主張を続けている。

ビラにはこう書かれていた。

『世直し。天狗堂』







ー大江戸学園ー

輝「瓦版だよ」

悠「よう。輝」

輝「おや、悠じゃないかまた来てたの。」

悠「先日の一件のお陰でな許可さえ得たら出入りオッケーもらえたんだ。で、なんの記事だ?」

輝「残念ながら今回は特ダネってわけじゃないよ。学校行事のご連絡ってやつだ」

悠「ああ、そういうときもあるのか」

輝「毎日、特ダネだったらいいんだけどね~」

悠「それはそれでヤバイだろ。平和なのに越したことはないって」

輝「記事を書くほうはつまんないんだよにゃ~」

悠「つまる、つまらんじゃないだろ」

輝「まあ、広報も一応の仕事だからね。記事に手は抜いてないよ。」

悠「ふぅん……全校集会?なんだこりゃ。」

由真「年に四回、全校生徒が集まるイベントよ」

悠「おはよ、由真」

由真「おはよう。っていうか、自然に挨拶したけどなんでいるの?」

悠「まぁ、なんとなく。っか、大江戸学園全校生徒って十万人からいるんじゃなかったけ?」

由真「そうよ。だから学園行事の中でも最大級のイベントになるわ」

悠「へ~そりゃ祭りなみだな。」

由真「その通り。学園中から人があつまるからねずみやにとっても稼ぎどきなの」

悠「商売熱心だな、あい変わらず」

由真「あったりまえでしょ。それよりあんたの店をねずみやに組み込む話は決心ついた?」

悠「しつこいなぁ」

由真「ふん。」

悠「っか、瓦版のさ天狗堂のこと…って居ねぇし」

天狗堂騒動はここしばらく学園の最大の関心事となっていた。
世直しを標榜する謎の集団で、学園島の各地で放火や破壊活動を行っては、犯行声明文を現場に残していくのだ。

目撃者によると彼らは皆、黒尽くめに天狗の面をつけた姿をしているらしい。
瓦版にも天狗等の放火事件の記事が載っている。

悠「物騒な世の中だな。なぁ、新…」

新「ふえ?何?」

悠「何でもない。朝のお前に話しかけた俺が悪いんだ。」
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