ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー大江戸学園:廊下ー
男子生徒「おい、眠利」
シオン「……」
男子生徒「眠利シオン!聞こえてるんだろ、無視するな!」
シオン「……誰だ、お前」
男子生徒「辻斬りだよ」
シオン「へぇ?」
男子生徒「この前は油断して後れを取ったけれど、今度はやられない。だから、もう一度立ちあえ」
シオン「この前?身に覚えがないな。人違いだろ。」
男子生徒「とぼけるな。輪月殺法の使い手が、おまえ以外にいるか!」
シオン「なるほど。それもそうだ」
男子生徒「分かったのなら、決闘を受けるな?」
シオン「ああ、イヤだ」
男子生徒「よし……はぁ?イヤだ?」
シオン「おまえ、やる気の出る顔じゃないんだよ」
男子生徒「馬鹿にしやがって……!」
シオン「じゃ、そういうわけで、さようなら」
男子生徒「あっ、待て!」
シオン「……なんだよ」
男子生徒「おっ……お前が辻斬りだって噂を流したのは、俺だ」
シオン「……で?」
男子生徒「果たし合いに応じるなら、辻斬りが俺だったってことを学園中にいってまわってやる」
シオン「興味ない」
男子生徒「よし、分かればいいん……はっ?興味ないだと!?」
シオン「噂のひとつやふたつ、いまさらだ。どうでもいいね。好きにしな」
男子生徒「あっ、おい待て!……くそっ!……いいさ。そっちがその気なら、どうあっても闘いたくなるようにしてやる……!」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「さてと……今日はそろそろ店じまいするかな……」
夕暮れ時の人影疎らな通りに向けて独りゴチながら、暖簾を片づけるため、店の表へ出た時だった。
男子生徒「やあ、小鳥遊。店じまいするところだったか?」
悠「……あー?」
かけられた声に振り向くも、おれはその相手に見覚えがなかって……いや、あるような、なるような……。
男子生徒「あ、俺は道場で一緒に汗を流している稽古仲間だよ」
悠「あっ……」
言われてみれば、見覚えがある……ような……?
男子生徒「まあ、あんまり話したこと無かったから、覚えてなくても仕方ないか」
悠「わりぃ、すまんね」
男子生徒「いいさ。そんなことより、おまえ、眠利シオンと仲が良いんだって?」
悠「え?あ、うーん……たぶん、それなりには……」
男子生徒「あのシオンを相手に「それなりに」仲が良いなんて、普通はいえないぜ」
悠「あー……そうか?」
男子生徒「そうだよ。つまり、おまえはシオンを呼びだすための人質にする価値があるってことだ」
悠「あ?」
男子生徒「お前になんて、いつでも勝てるんだよ……いいきになるな……!」
鳩尾に拳が突き刺さる激痛の中で意識が暗くなっていく最後に、そんな声を聞いた気がした。
……ああ、そうだ。思い出した。こいつの名前、岡多だ。岡多射蔵。いつだったか試合して、おれがこてんぱんに負けた相手だった……。
男子生徒「おい、眠利」
シオン「……」
男子生徒「眠利シオン!聞こえてるんだろ、無視するな!」
シオン「……誰だ、お前」
男子生徒「辻斬りだよ」
シオン「へぇ?」
男子生徒「この前は油断して後れを取ったけれど、今度はやられない。だから、もう一度立ちあえ」
シオン「この前?身に覚えがないな。人違いだろ。」
男子生徒「とぼけるな。輪月殺法の使い手が、おまえ以外にいるか!」
シオン「なるほど。それもそうだ」
男子生徒「分かったのなら、決闘を受けるな?」
シオン「ああ、イヤだ」
男子生徒「よし……はぁ?イヤだ?」
シオン「おまえ、やる気の出る顔じゃないんだよ」
男子生徒「馬鹿にしやがって……!」
シオン「じゃ、そういうわけで、さようなら」
男子生徒「あっ、待て!」
シオン「……なんだよ」
男子生徒「おっ……お前が辻斬りだって噂を流したのは、俺だ」
シオン「……で?」
男子生徒「果たし合いに応じるなら、辻斬りが俺だったってことを学園中にいってまわってやる」
シオン「興味ない」
男子生徒「よし、分かればいいん……はっ?興味ないだと!?」
シオン「噂のひとつやふたつ、いまさらだ。どうでもいいね。好きにしな」
男子生徒「あっ、おい待て!……くそっ!……いいさ。そっちがその気なら、どうあっても闘いたくなるようにしてやる……!」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「さてと……今日はそろそろ店じまいするかな……」
夕暮れ時の人影疎らな通りに向けて独りゴチながら、暖簾を片づけるため、店の表へ出た時だった。
男子生徒「やあ、小鳥遊。店じまいするところだったか?」
悠「……あー?」
かけられた声に振り向くも、おれはその相手に見覚えがなかって……いや、あるような、なるような……。
男子生徒「あ、俺は道場で一緒に汗を流している稽古仲間だよ」
悠「あっ……」
言われてみれば、見覚えがある……ような……?
男子生徒「まあ、あんまり話したこと無かったから、覚えてなくても仕方ないか」
悠「わりぃ、すまんね」
男子生徒「いいさ。そんなことより、おまえ、眠利シオンと仲が良いんだって?」
悠「え?あ、うーん……たぶん、それなりには……」
男子生徒「あのシオンを相手に「それなりに」仲が良いなんて、普通はいえないぜ」
悠「あー……そうか?」
男子生徒「そうだよ。つまり、おまえはシオンを呼びだすための人質にする価値があるってことだ」
悠「あ?」
男子生徒「お前になんて、いつでも勝てるんだよ……いいきになるな……!」
鳩尾に拳が突き刺さる激痛の中で意識が暗くなっていく最後に、そんな声を聞いた気がした。
……ああ、そうだ。思い出した。こいつの名前、岡多だ。岡多射蔵。いつだったか試合して、おれがこてんぱんに負けた相手だった……。