ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「……ん?辻斬り?」
何気なく手にした投書の内容に、思わず手が止まった。
想「どうしました?」
悠「あー……いや、この投書に、辻斬りが最近また出ているようなので怖いからので怖いから早くなんとかしてほしい、って……」
吉音「へえ、また出たんだー」
悠「え……ま、また……?」
おれとしては、辻斬りが出ているという状況だけでもう理解の限界だというのに……またってどういうことだよ。
想「編入生の小鳥遊君には珍しいことかもしれませんけど、昔から年になんどか、あるんです」
悠「あるって……辻斬りが、ですか?」
想「はい」
まったく逡巡せずに頷かれても、おれは一体どんな顔をしたらいいのやら……。
悠「…………っか、辻斬りなんて成り立つんすか?」
想「なり立つ?」
悠「いやほら、斬ると言っても所詮は峰打ちなわけだし、被害者の証言ですぐに犯人が挙がるんじゃないんすか?」
想「ですが大抵、辻斬り犯はズキンなどで顔を隠しています。それに、顔を見たとしても……」
悠「……しても?」
想「学園の生徒総数およそ十万の中から、モンタージュでたった一人を探すことは、容易なことではないんです」
悠「あー……なるほど」
想「ですが、犯行を重ねるようなら、それだけ目撃証言も集まりますから、私たちも見逃しはしませんよ」
逆にいえば、情報が集まるくらい犯行を重ねてもらわないと、手の出しようがない、ということなのか……。
吉音「まー、夜遊びしないように気をつけましょーっていう張り紙をしておけばいいんじゃないかな」
悠「えっ、新……」
吉音「え、え?あたし、なんか変なこと言った?」
悠「いや、すごくまっとうなこと言ったから驚いたんだ」
吉音「……怒っていい?」
悠「ごめんなさい」
唇をむすっと引き結んだ吉音と、頭を下げるおれ。
想「相変わらず中が良いですね、ふふっ」
そんなおれ達の傍らで、逢岡さんが楽しげな笑い声をこぼすのだった。
ー路地ー
「ふ、ふふ……」
辻斬り「(はぁはぁ……もう少し、もう少し……早く近づいて来い……そうしたら、おまえも切ってやる……っ。来い……来い、来い来い……っ!)でえりゃあぁっ!!」
「……」
ガギンッ!
辻斬り「うっ……受けられた……!?」
シオン「……誰だ、お前は」
辻斬り「なっ?!眠利……シオン……!」
シオン「まあ誰でもいいか……おまえ、私がさっき抱いた女に感謝するんだな」
辻斬り「……?」
シオン「いまは気分が良いから見逃してやる。さっさと逃げろ」
辻斬り「なにっ……な、舐めているのか……ッ!?」
シオン「舐めたくなるほど美味そうでもないから消えろ――と言っているんだ」
辻斬り「貴様!輪月殺法なんて子供だまししか能のないやつが調子にのるなよ!あんな隙だらけな子供騙し、道場剣法では通用しても殺し合いの役には立つものかっ!!」
シオン「……分かった。殺してやるよ」
辻斬り「う……うっ、うおおおっ!!」
シオン「……」
ザシュッ!
辻斬り「ぐはっ!……な、なんでっ……俺が斬ったのに……隙だらけ、だったのに……」
シオン「……」
辻斬り「くっ……こ、殺すのか……!?」
シオン「おまえ、やっぱりつまらないよ」
辻斬り「え……」
シオン「殺意ってのはもてあそぶから楽しいんだ。それをいちいち、本気で殺すとか殺さないとか……暑苦しい」
辻斬り「ぇ……な、っ……馬鹿に……馬鹿にしているのか!?俺を馬鹿にしてるのかっ!?」
シオン「……」
辻斬り「あっ……待て!答えろ、眠利シオン!答えろよ!畜生おおおぉッ!!」
悠「……ん?辻斬り?」
何気なく手にした投書の内容に、思わず手が止まった。
想「どうしました?」
悠「あー……いや、この投書に、辻斬りが最近また出ているようなので怖いからので怖いから早くなんとかしてほしい、って……」
吉音「へえ、また出たんだー」
悠「え……ま、また……?」
おれとしては、辻斬りが出ているという状況だけでもう理解の限界だというのに……またってどういうことだよ。
想「編入生の小鳥遊君には珍しいことかもしれませんけど、昔から年になんどか、あるんです」
悠「あるって……辻斬りが、ですか?」
想「はい」
まったく逡巡せずに頷かれても、おれは一体どんな顔をしたらいいのやら……。
悠「…………っか、辻斬りなんて成り立つんすか?」
想「なり立つ?」
悠「いやほら、斬ると言っても所詮は峰打ちなわけだし、被害者の証言ですぐに犯人が挙がるんじゃないんすか?」
想「ですが大抵、辻斬り犯はズキンなどで顔を隠しています。それに、顔を見たとしても……」
悠「……しても?」
想「学園の生徒総数およそ十万の中から、モンタージュでたった一人を探すことは、容易なことではないんです」
悠「あー……なるほど」
想「ですが、犯行を重ねるようなら、それだけ目撃証言も集まりますから、私たちも見逃しはしませんよ」
逆にいえば、情報が集まるくらい犯行を重ねてもらわないと、手の出しようがない、ということなのか……。
吉音「まー、夜遊びしないように気をつけましょーっていう張り紙をしておけばいいんじゃないかな」
悠「えっ、新……」
吉音「え、え?あたし、なんか変なこと言った?」
悠「いや、すごくまっとうなこと言ったから驚いたんだ」
吉音「……怒っていい?」
悠「ごめんなさい」
唇をむすっと引き結んだ吉音と、頭を下げるおれ。
想「相変わらず中が良いですね、ふふっ」
そんなおれ達の傍らで、逢岡さんが楽しげな笑い声をこぼすのだった。
ー路地ー
「ふ、ふふ……」
辻斬り「(はぁはぁ……もう少し、もう少し……早く近づいて来い……そうしたら、おまえも切ってやる……っ。来い……来い、来い来い……っ!)でえりゃあぁっ!!」
「……」
ガギンッ!
辻斬り「うっ……受けられた……!?」
シオン「……誰だ、お前は」
辻斬り「なっ?!眠利……シオン……!」
シオン「まあ誰でもいいか……おまえ、私がさっき抱いた女に感謝するんだな」
辻斬り「……?」
シオン「いまは気分が良いから見逃してやる。さっさと逃げろ」
辻斬り「なにっ……な、舐めているのか……ッ!?」
シオン「舐めたくなるほど美味そうでもないから消えろ――と言っているんだ」
辻斬り「貴様!輪月殺法なんて子供だまししか能のないやつが調子にのるなよ!あんな隙だらけな子供騙し、道場剣法では通用しても殺し合いの役には立つものかっ!!」
シオン「……分かった。殺してやるよ」
辻斬り「う……うっ、うおおおっ!!」
シオン「……」
ザシュッ!
辻斬り「ぐはっ!……な、なんでっ……俺が斬ったのに……隙だらけ、だったのに……」
シオン「……」
辻斬り「くっ……こ、殺すのか……!?」
シオン「おまえ、やっぱりつまらないよ」
辻斬り「え……」
シオン「殺意ってのはもてあそぶから楽しいんだ。それをいちいち、本気で殺すとか殺さないとか……暑苦しい」
辻斬り「ぇ……な、っ……馬鹿に……馬鹿にしているのか!?俺を馬鹿にしてるのかっ!?」
シオン「……」
辻斬り「あっ……待て!答えろ、眠利シオン!答えろよ!畜生おおおぉッ!!」