ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー大江戸学園:道場ー
十兵衛「はっはっはっ、小鳥遊に岡多の相手はまだ早かったか」
悠「ではしたねー」
なんだかんだいって、終わってみればおれの惨敗だ。結局、一度もこちらから打ちこむ機会を与えてもらえなかったしな。
十兵衛「まあ、試合中に考え事している人間が勝てるとは思ってなかったが」
悠「あ、ははは……バレテーラ」
十兵衛「そこらのゴロツキに勝てるからと言って慢心するんじゃないぞ。」
悠「へーい」
うーむ、この人は完全にことの力量見えてるからなぁ。
十兵衛「へーい?」
悠「いえ、精進します」
十兵衛「うん、いい返事だ。頑張れよ」
悠「あいーす」
十兵衛「それから、岡多」
岡多「はい」
十兵衛「おまえは、少し慢心があったな」
岡多「え……」
十兵衛「小鳥遊になら勝てると思ったからなんだろうが、斬るぞ斬るぞという殺気が表に出過ぎだったぞ」
岡多「……」
十兵衛「納得しかねるという顔だな。だが、小鳥遊に三度も剣を合わせられたのを偶然だと思うな」
岡多「あ……」
十兵衛「いいか、岡多。強くなりたければ、不必要な殺気など捨ててしまえ。それができなくば、もっと殺気を込めろ」
岡多「……はい」
十兵衛「このまま中途半端なままだと……小鳥遊に追い抜かれる日も近いかもな」
岡多「……!?」
悠「あー?」
二人の会話にぼんやり耳を傾けていたおれは、いきなり話題に出されて変な声を出してしまった。うぉ……岡多の視線が痛いよ……。
十兵衛「はっはっはっ、まあ二人ともはげむことだ」
師匠は笑いながらいってしまった。あとに残されたおれと岡多は、微妙な空気のなかで互いに黙々と素振りを再開するのだった。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
数日後。今日も今日とて稽古を終えて戻ってきたおれは、吉音と逢岡さんとの三人で目安箱の中身を検めていた。おれも稽古で開店が遅れたし、逢岡さんも強なら時間が取れるというから、お互い都合が良かったわけだ。それにしても……今日の稽古はとくにきつかった……。
悠「ふあぁぁぁぁぁーーふぅ。」
想「おや、小鳥遊君。お疲れですか?」
悠「あふぅ、すいやせん。ちょっと稽古の後だったもんでね……」
吉音「そういや悠、最近なんだか熱心だよね」
想「やや、何か熱心になる理由でもあるんですか?」
悠「いや、コレと言っては。まぁ、でも、ちょっと試合の真似ごとでねアレだったんでやられたらやり返す。倍返しだって奴ですよ」
想「ああ、なるほど。小鳥遊君も男の子ですね、ふふっ」
悠「そういうんじゃないですけど。一分で決められるとやっぱねぇ……っか、おれはがっつり男ですから。」
想「試合の内容と時間は比例しませんよ。短くとも濃密な試合は、いくらでもありますから」
悠「内容も大して無いって感じでしたけど、寅や風雷コンビとした時くらいだったら超成長するんだろうけど……」
吉音「え?内容がないよう?」
想「……」
悠「……」
吉音「……ごめんなさい」
想「ん……ともかく、剣に限らず物事は近道しないことが一番の近道です。焦らずに頑張ってください。」
悠「ですね。幸い暇人なおれは時間だけはあるし」
吉音「そうそう。剣なんて適当にぶんぶん振り回してたら、なんだか上手いこと当たるもんだよ」
悠「……それで本当に上手くいってるのが羨ましいよ」
吉音「え、そぉ?いやぁ、照れちゃうなぁ」
悠「褒めてねぇー……いや、褒めちゃってるか、うん」
おれは苦笑いしながら、まだ見ていなかった投書に目を落とした。
十兵衛「はっはっはっ、小鳥遊に岡多の相手はまだ早かったか」
悠「ではしたねー」
なんだかんだいって、終わってみればおれの惨敗だ。結局、一度もこちらから打ちこむ機会を与えてもらえなかったしな。
十兵衛「まあ、試合中に考え事している人間が勝てるとは思ってなかったが」
悠「あ、ははは……バレテーラ」
十兵衛「そこらのゴロツキに勝てるからと言って慢心するんじゃないぞ。」
悠「へーい」
うーむ、この人は完全にことの力量見えてるからなぁ。
十兵衛「へーい?」
悠「いえ、精進します」
十兵衛「うん、いい返事だ。頑張れよ」
悠「あいーす」
十兵衛「それから、岡多」
岡多「はい」
十兵衛「おまえは、少し慢心があったな」
岡多「え……」
十兵衛「小鳥遊になら勝てると思ったからなんだろうが、斬るぞ斬るぞという殺気が表に出過ぎだったぞ」
岡多「……」
十兵衛「納得しかねるという顔だな。だが、小鳥遊に三度も剣を合わせられたのを偶然だと思うな」
岡多「あ……」
十兵衛「いいか、岡多。強くなりたければ、不必要な殺気など捨ててしまえ。それができなくば、もっと殺気を込めろ」
岡多「……はい」
十兵衛「このまま中途半端なままだと……小鳥遊に追い抜かれる日も近いかもな」
岡多「……!?」
悠「あー?」
二人の会話にぼんやり耳を傾けていたおれは、いきなり話題に出されて変な声を出してしまった。うぉ……岡多の視線が痛いよ……。
十兵衛「はっはっはっ、まあ二人ともはげむことだ」
師匠は笑いながらいってしまった。あとに残されたおれと岡多は、微妙な空気のなかで互いに黙々と素振りを再開するのだった。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
数日後。今日も今日とて稽古を終えて戻ってきたおれは、吉音と逢岡さんとの三人で目安箱の中身を検めていた。おれも稽古で開店が遅れたし、逢岡さんも強なら時間が取れるというから、お互い都合が良かったわけだ。それにしても……今日の稽古はとくにきつかった……。
悠「ふあぁぁぁぁぁーーふぅ。」
想「おや、小鳥遊君。お疲れですか?」
悠「あふぅ、すいやせん。ちょっと稽古の後だったもんでね……」
吉音「そういや悠、最近なんだか熱心だよね」
想「やや、何か熱心になる理由でもあるんですか?」
悠「いや、コレと言っては。まぁ、でも、ちょっと試合の真似ごとでねアレだったんでやられたらやり返す。倍返しだって奴ですよ」
想「ああ、なるほど。小鳥遊君も男の子ですね、ふふっ」
悠「そういうんじゃないですけど。一分で決められるとやっぱねぇ……っか、おれはがっつり男ですから。」
想「試合の内容と時間は比例しませんよ。短くとも濃密な試合は、いくらでもありますから」
悠「内容も大して無いって感じでしたけど、寅や風雷コンビとした時くらいだったら超成長するんだろうけど……」
吉音「え?内容がないよう?」
想「……」
悠「……」
吉音「……ごめんなさい」
想「ん……ともかく、剣に限らず物事は近道しないことが一番の近道です。焦らずに頑張ってください。」
悠「ですね。幸い暇人なおれは時間だけはあるし」
吉音「そうそう。剣なんて適当にぶんぶん振り回してたら、なんだか上手いこと当たるもんだよ」
悠「……それで本当に上手くいってるのが羨ましいよ」
吉音「え、そぉ?いやぁ、照れちゃうなぁ」
悠「褒めてねぇー……いや、褒めちゃってるか、うん」
おれは苦笑いしながら、まだ見ていなかった投書に目を落とした。