ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ーさびれた寺ー
そして、やってきたのは。
悠「ずいぶんさびしい場所だなあ……」
吉音「なにここ……お寺?」
はじめ「……いた」
目は見えないはずの佐東が、まるで見えているかのようにそちらを向くと。
吉音「あ、ほんとだ……さっきの犬だ」
犬はなにやら穴を作っている。掘っているのか、それとも埋めているのか。と、その時。
犬『わんっ!』
こちらに気づいた犬が、まっしぐらにかけて寄ってくる。そして、佐東の回りを嬉しそうにグルグル回り始めた。
はじめ「な……なに……」
吉音「なんか、なつかれてない?」
悠「まあ、さっき悪者から自分を助けてくれた恩人だし」
吉音「悪者って、あたしたち?」
はじめ「あ……えーと……」
佐東は、犬に対して何か戸惑っている様子だった。犬が怖い……のとは違うような。むしろ、手を差し伸べようとして躊躇っているように見える。
悠「……」
はじめ「わっ!こ、こら、何をする!くすぐったい!」
突然、犬が佐東に飛び付いた。犬は佐東にじゃれつき、顔をぺろぺろ舐めている。佐東にこんなことをして、斬られないのは犬の特権なんだろうけど……いつまでもほっとくわけにもいくまい。
悠「あー……大丈夫か」
犬を背後から抱きかかえ、佐東から離す。
はじめ「あ、ああ……」
佐東は立ちあがり、服についた砂を払うと……
悠「……」
はじめ「見苦しい姿をさらしてしまったね」
悠「イヤ、別に……」
吉音「悠ー、ちょっとこっち来てー」
悠「新……なんだ?」
吉音は、さっき犬が掘っていた穴を覗きこんでいた。
吉音「ほら、こり。このコが埋めたのかな」
悠「うわ……壮観だな、こりゃ」
吉音「だね」
穴の中にはパンティーやブラジャー、靴下といった、色とりどりの下着類。それから……
悠「クリス・ディオーネ?ココ・シャベル……香水瓶かな。それになんだ……バニラエッセンス?」
「コロー、どこにいるの、コロー」
その時、遠くでそんな女の子の声が聞こえてきた。
犬『わんっ!』
突然、抱えていた犬がじたばた暴れ出し、おれの腕から逃げ出す。
悠「あ、こら」
そのまま犬は、寺にやって来た女の子に飛び付いた。乙級の子だな。
乙級女子A「あ、いた……コロ、こんなところで何をしてたの?」
コロと呼ばれた犬は、嬉しそうに女の子にすり寄っている。
悠「もしかして、この子の飼い主さんか?」
乙級女子A「あ、はい……えーと、何でしょう」
吉音「なんでこのコがここにいるってなんで分かったの?」
いきなり吉音が横から割りこんできた。重要なのは、そこじゃないだろ。
乙級女子A「首輪に迷子防止用の発信機が付いていますから。GPSで、それを辿って来たんです。」
吉音「あ、なるほど」
悠「それはおいといて……ちょっと、これを見て欲しいんだけど」
乙級女子A「は、はい……」
悠「こっち、こっち」
穴の中身を、おれは彼女に見せた。
乙級女子A「ええっ!?これを、コロが……!?」
犬『わんっ!』
吉音「最近この近くで起こってたぱんつ泥棒はこの子が犯人だったみたいなの」
盗まれたのはぱんつに限らないけどな。
乙級女子A「ご、ごめんなさい!このコ、いい匂いがするものが大好きで。昔から、何処からかこういうものを集めてくるクセがあったんですけど……」
いいにおい、ね。だから香水やバニラエッセンスまで集めていたわけか。そう言えば……下着類も洗濯したてのヤツが狙われていたみたいだしな。
悠「……」
乙級女子A「でもまさか、こんなことしてたなんて……」
悠「まあ……犬のしたことだし、罪には問えないけど」
吉音「でもどろぼうはだめだよ。ちゃんと教えておかないと」
乙級女子A「わ……わかりました!このコにはちゃんと、きつくいって聞かせます!本当にすみませんでした!」
女の子はぺこぺこ謝りながら、犬を抱えて走り去った。しかし……
悠「きつく言い聞かせたって、福ちゃんでもなきゃ人語は理解させれないだろ……」
吉音「そんなことないよ。マゴベエだって鳥だけど、話せば分かってくれるもん」
そりゃ剣魂だからだろ。
悠「まぁ、うちのマリオとバロンもそうだしな…」
吉音「とにかく、これで一件落着だね。よかったよかった」
ふと気がつくと、佐東が走り去っていった女の子の後ろ姿を、名残惜しそうにいつまでも見ていた。……いや目は見えていないのだから、おれがそんなふうに感じたというだけで。
悠「佐東もお疲れさん。助かったよ」
はじめ「……問題ない」
いつものように無愛想に、そうとだけ答えて佐東は立ち去る。……何となくその後ろ姿がさびしそうに見えたのは、おれの気のせいだっただろうか。……そこでコケるなよ。いいシーンが台無しだ。
悠「……」
はじめ「だ、大丈夫……うん」
またコウモリが上空から降りて来て、佐東の頭上を心配そうに飛び回る。甲斐甲斐しい剣魂だなぁ。
吉音「何か……変わったコだね」
悠「まあ……悪い人じゃないとは思うけど」
吉音「そだね。あたしたちの仕事も手伝ってくれたし」
悠「ああ。おかげで思ったよりも迅速に解決できたしな。」
吉音「ところでさ……これ、どうしよ」
そういって吉音が指さしたのは……地面の穴。
悠「あー……そうだった。まだ肝心なところが解決できていなかったじゃないか」
吉音「みんなに返さなきゃだよね」
悠「とはいえ、どれが誰の持ち物か……新、わかるか?」
吉音「分かるわけないじゃん。名前でも書いてあれば別だけど」
悠「だよなあ……」
それにしても……考えようによっちゃ、これって結構ものすごいお宝だよな。闇ルートに流したら、いったいいくらに……って!なに朱金みたいなこと考えてるんだよおれ!
吉音「どうしたの、くねくねして!」
悠「べっ、別に、何も」
吉音「あー……さてはぱんつの山に埋もれたいとおもってるな!おぬしも好きヨのぉ」
悠「違うっ!ってかそりゃどんな発想だよ!」
吉音「わーい、やっぱり悠はぱんつ好きの変態さんだー」
悠「ちーがーうーっ!おい、変な噂を広めるなッ!」
ああ、今日もこの世は事もなし。平和で騒がしい日常よ、永遠なれ。
そして、やってきたのは。
悠「ずいぶんさびしい場所だなあ……」
吉音「なにここ……お寺?」
はじめ「……いた」
目は見えないはずの佐東が、まるで見えているかのようにそちらを向くと。
吉音「あ、ほんとだ……さっきの犬だ」
犬はなにやら穴を作っている。掘っているのか、それとも埋めているのか。と、その時。
犬『わんっ!』
こちらに気づいた犬が、まっしぐらにかけて寄ってくる。そして、佐東の回りを嬉しそうにグルグル回り始めた。
はじめ「な……なに……」
吉音「なんか、なつかれてない?」
悠「まあ、さっき悪者から自分を助けてくれた恩人だし」
吉音「悪者って、あたしたち?」
はじめ「あ……えーと……」
佐東は、犬に対して何か戸惑っている様子だった。犬が怖い……のとは違うような。むしろ、手を差し伸べようとして躊躇っているように見える。
悠「……」
はじめ「わっ!こ、こら、何をする!くすぐったい!」
突然、犬が佐東に飛び付いた。犬は佐東にじゃれつき、顔をぺろぺろ舐めている。佐東にこんなことをして、斬られないのは犬の特権なんだろうけど……いつまでもほっとくわけにもいくまい。
悠「あー……大丈夫か」
犬を背後から抱きかかえ、佐東から離す。
はじめ「あ、ああ……」
佐東は立ちあがり、服についた砂を払うと……
悠「……」
はじめ「見苦しい姿をさらしてしまったね」
悠「イヤ、別に……」
吉音「悠ー、ちょっとこっち来てー」
悠「新……なんだ?」
吉音は、さっき犬が掘っていた穴を覗きこんでいた。
吉音「ほら、こり。このコが埋めたのかな」
悠「うわ……壮観だな、こりゃ」
吉音「だね」
穴の中にはパンティーやブラジャー、靴下といった、色とりどりの下着類。それから……
悠「クリス・ディオーネ?ココ・シャベル……香水瓶かな。それになんだ……バニラエッセンス?」
「コロー、どこにいるの、コロー」
その時、遠くでそんな女の子の声が聞こえてきた。
犬『わんっ!』
突然、抱えていた犬がじたばた暴れ出し、おれの腕から逃げ出す。
悠「あ、こら」
そのまま犬は、寺にやって来た女の子に飛び付いた。乙級の子だな。
乙級女子A「あ、いた……コロ、こんなところで何をしてたの?」
コロと呼ばれた犬は、嬉しそうに女の子にすり寄っている。
悠「もしかして、この子の飼い主さんか?」
乙級女子A「あ、はい……えーと、何でしょう」
吉音「なんでこのコがここにいるってなんで分かったの?」
いきなり吉音が横から割りこんできた。重要なのは、そこじゃないだろ。
乙級女子A「首輪に迷子防止用の発信機が付いていますから。GPSで、それを辿って来たんです。」
吉音「あ、なるほど」
悠「それはおいといて……ちょっと、これを見て欲しいんだけど」
乙級女子A「は、はい……」
悠「こっち、こっち」
穴の中身を、おれは彼女に見せた。
乙級女子A「ええっ!?これを、コロが……!?」
犬『わんっ!』
吉音「最近この近くで起こってたぱんつ泥棒はこの子が犯人だったみたいなの」
盗まれたのはぱんつに限らないけどな。
乙級女子A「ご、ごめんなさい!このコ、いい匂いがするものが大好きで。昔から、何処からかこういうものを集めてくるクセがあったんですけど……」
いいにおい、ね。だから香水やバニラエッセンスまで集めていたわけか。そう言えば……下着類も洗濯したてのヤツが狙われていたみたいだしな。
悠「……」
乙級女子A「でもまさか、こんなことしてたなんて……」
悠「まあ……犬のしたことだし、罪には問えないけど」
吉音「でもどろぼうはだめだよ。ちゃんと教えておかないと」
乙級女子A「わ……わかりました!このコにはちゃんと、きつくいって聞かせます!本当にすみませんでした!」
女の子はぺこぺこ謝りながら、犬を抱えて走り去った。しかし……
悠「きつく言い聞かせたって、福ちゃんでもなきゃ人語は理解させれないだろ……」
吉音「そんなことないよ。マゴベエだって鳥だけど、話せば分かってくれるもん」
そりゃ剣魂だからだろ。
悠「まぁ、うちのマリオとバロンもそうだしな…」
吉音「とにかく、これで一件落着だね。よかったよかった」
ふと気がつくと、佐東が走り去っていった女の子の後ろ姿を、名残惜しそうにいつまでも見ていた。……いや目は見えていないのだから、おれがそんなふうに感じたというだけで。
悠「佐東もお疲れさん。助かったよ」
はじめ「……問題ない」
いつものように無愛想に、そうとだけ答えて佐東は立ち去る。……何となくその後ろ姿がさびしそうに見えたのは、おれの気のせいだっただろうか。……そこでコケるなよ。いいシーンが台無しだ。
悠「……」
はじめ「だ、大丈夫……うん」
またコウモリが上空から降りて来て、佐東の頭上を心配そうに飛び回る。甲斐甲斐しい剣魂だなぁ。
吉音「何か……変わったコだね」
悠「まあ……悪い人じゃないとは思うけど」
吉音「そだね。あたしたちの仕事も手伝ってくれたし」
悠「ああ。おかげで思ったよりも迅速に解決できたしな。」
吉音「ところでさ……これ、どうしよ」
そういって吉音が指さしたのは……地面の穴。
悠「あー……そうだった。まだ肝心なところが解決できていなかったじゃないか」
吉音「みんなに返さなきゃだよね」
悠「とはいえ、どれが誰の持ち物か……新、わかるか?」
吉音「分かるわけないじゃん。名前でも書いてあれば別だけど」
悠「だよなあ……」
それにしても……考えようによっちゃ、これって結構ものすごいお宝だよな。闇ルートに流したら、いったいいくらに……って!なに朱金みたいなこと考えてるんだよおれ!
吉音「どうしたの、くねくねして!」
悠「べっ、別に、何も」
吉音「あー……さてはぱんつの山に埋もれたいとおもってるな!おぬしも好きヨのぉ」
悠「違うっ!ってかそりゃどんな発想だよ!」
吉音「わーい、やっぱり悠はぱんつ好きの変態さんだー」
悠「ちーがーうーっ!おい、変な噂を広めるなッ!」
ああ、今日もこの世は事もなし。平和で騒がしい日常よ、永遠なれ。