ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「お前……ときどき素で酷いのな」

吉音「けど、悠はあたしのぱんつが盗まれても平気なんだ。」

そういって、恨めしそうな目でおれを見る吉音。だから何でそんなにぱんつにこだわる。

悠「……手伝わないとはいってないだろ。だけどせめて、ある程度時間を限定してくれ。」

吉音「時間?」

悠「例えば……被害に遭った人に聞き込みをして、事件が起こった時間帯を絞るとか」

吉音「あ、うん、なるほど。悠、頭いいねっ」

悠「…………」

っか、お前こそもう少し頭を使え。なんでも力技で解決するんじゃなく。





ー女子寮長屋ー

んで。

吉音「投書した人から詳しい話し、聞いて来たよ。ぱんつがなくなるのは、だいたい昼過ぎから夕方みたい」

悠「ってことは、犯人はまだ日が出ているうちから犯行に及んでいるわけか。大胆だな。目撃者は居ないのか?犯人の特徴とか」

吉音「それがほかってたら捕まえるか通報してる、ってさ」

悠「そりゃそうだな。仕方がない、二手に分かれるか」

悠「おれは外で怪しいのがいないか調べる。新は一戸一戸尋ねて、聞きこみなりなんなりを続けてくれ」

吉音「ん、じゃああたしもぱんつ干してこよ」

悠「囮か?……新の色気のないぱんつに、はたして犯人がくいついてくれるかどうかは怪しいけどな」

吉音「なによぅ」

吉音は不満そうに頬を膨らませる。盗まれたいのか、お前。

悠「……」

吉音「とにかく、やれることはやるの」

悠「はいはい、了解」

おれがそう返事すると、吉音はぱたぱたと駆けていった。普段からこれだけの意欲を見せてくれればなぁ……。さて、おれも外から調査するか。


~少年調査中~


ひと通り、寮施設の周りを確認してみたが……出てきたのは問題ばかりだった。周囲にまともな塀もなく、窓一枚あけただけで簡単に中の洗濯ものを奪っていけそうだ。通路もお世辞にも広いとはいえないし、死角になるところも多い……。

往水「おや、悠のダンナじゃないですか。こんなところでなにをしていらっしゃるんです?」

悠「あれ、中村さん。見回りですか」

中村さんの住まいは、この近くではなかったはずだけど。

往水「いやですねぇ、質問を質問で返すのは反則ですよ。もう一度お聞きしますけど、こんなところでなにをしていらっしゃるんで?」

悠「……それは、職務質問か?」

往水「ですから、質問に質問で返すのは反則ですって」

……いつもは全然職務に忠実じゃない癖に、今日は妙に絡んでくるなぁ。

悠「……」

往水「なんでも、この界隈で下着ドロが出るらしいって噂があるそうじゃないですか」

悠「先に断っておくけど、おれじゃねーですよ」

往水「アタシはまだ何も言ってませんが」

悠「でも言う気だっただろ。下着でも盗もうとしてるんですかって」

往水「いやですねえ、アタシはちゃんとわかっていますから」

悠「…………」

往水「けど、知り合いをお縄にってぇのも気が進みませんし、よければアタシの下着を売ってさしあげても……」

悠「わかってないだろ全然!!おれはその下着泥棒を捕まえようとしてるんだよっ。目安箱にそういう依頼がはいってたものだからっ!」

往水「ははあ、なるほどなるほど」

全てを理解した、といった風にうなずく中村さん。しかし、本当に理解しているのかどうかは非常に怪しい。もっとも、全てを理解したうえでおれをからかっている可能性の方が高いのも事実だけど。
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