ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】

ー栗田の店ー

悠「おい、おま――」

朱金「オラオラてめぇらなにやってやがんでぃ!」

乱暴に扉をけ破り、店内へとなだれ込む。そこには栗田と鼻高々だった博徒、それにガラの悪い男子が二人。博徒は殴られたのだろう、手で覆った下の顔を赤く腫らせている。

栗田「お、お前は金さん!?」

朱金「おうよ!ちっと前に一杯喰わされた、遊び人の金さんよ!へへへっ、なんだ面白いことしてるじゃねぇか。またボッタクリの上、ついでにカツアゲか?」

栗田「どっ、どっ、どういうことなんだ。なんであんたがここにいる。」

朱金「オレをナメてんのか?騙されっぱなしで泣き寝入りするはずねぇだろが」

用心棒A「……なんだこいつらは」

ガラの悪いのが、こちらに不審げな顔を向けてきた。彼らはおれたちのときには出て来なかった。展開を考えるに支払いを渋ったら脅しに出てくるんだろう。これが引っかかった人たちが、訴え出て来なかった理由なのかもしれない。

栗田「前回のカモだ。お礼参りにきたつもりらしい」

用心棒B「フン、なんだかしらねぇが、怪我したくないなら今のうちにとっとと帰れ!」

悠「すぐに町方が来る。お前たちこそ、大人しくしておいた方が良いんでねーの?」

用心棒A「ハシャギやがって……その前にお前らをフクロにしてやらぁ!」

朱金「ハッ!てめぇらのようなカトンボに……この桜吹雪、散らせるもんなら散らして見やがれぃ!」

……こういうの、バカバカしいけれどちょっと羨ましいな。おれもなにか考えようか?

用心棒A「口の方はいっちょ前だなぁ!」

朱金「どっちが口だけなんだよっ!」

用心棒A「がぁっ!?」

用心棒B「この、てめぇっ!」

朱金「どこに目をつけてやがんだ?このノロマがぁ! 」

用心棒B「ぐはっ……!」

朱金の強さにかげりは無い。今回は敵の数が少なかったこともあり、あっという間に終わってしまった。

栗田「な……なんだこいつ、強すぎるっ……?」

悠「あとはお前だけだ。ここでの悪事を、奉行所で素直に告白してきなっせ。」

栗田「誰がそんなことっ……ぁぁあああっ!」

悠「お前バカだな…。」

突っ込んできた栗田の腋の下から自分の首を差し入れた後、肩の上に相手を担ぎ上げて投げ落とした。

栗田「ぐぇっ……!!」

悠「神姫直伝ファイヤーマンズキャリーボム……下が材木で良かったな。コンクリだったら死んでるぜ。って、聞こえてないか」

二人の用心棒に加え、栗田も倒れ伏した。

朱金「ほぅ、プロレスの大技を喧嘩で使うなんてやるじゃねーか」

悠「何十回と投げつけられてるからな……」

神姫に投げられた数だけ、鍛えられている気がする。

男子生徒C「た……たすかった、ありがとう」

尻もちをついていた博徒が、立ち上がって礼をいってきた。その顔は痛々しく腫れているが、もう恐怖の色は見られない。

朱金「礼をいわれることじゃねぇよ。さっきのヤツがいってた通り、オレたちもだまされたクチでな。やり返す理由にさせてもらったぜ」

男子生徒C「それはいいんだが、あんたたち一体何者なんだ。金さんとかいってたが」

朱金「おうよ。オレは遊び人の金さんって呼ばれてるぜ」

男子生徒C「遊び人……あんたもあそこの博打うちなのか」

真留「何を騒いでいるのですかーッ!ケンカはいいですが、いきすぎはいけませんよーっ!」

朱金「げっ……来やがった。ずらかるぜ!」

悠「あれは真留の声だろ。別に見つかっても良いんじゃないのか?」

朱金「今回はそういうわけにゃいかねーんだよ!裏口だ!早くしろ!」

悠「あー……毎度あわただしいなッ!」

という具合に逃げ慣れてる自分が少し悲しくなる。っか、おれ名乗ってなかったな……次からはお茶屋の悠さんとでも名のろうかな…………うん、やめとこう。
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