ｰ新宿:茶屋小鳥遊堂ｰ

『普通の商品に、想像もしない値段がつけられていたり、ほとんど詐欺のようなことをする人がいる。被害者は恥のせいか、何か脅されているのか、あまり語りたがらないが……そういうところの取り締まりは出来ないだろうか』

悠「いわゆるぼったくりってことかな。本当になんでもあるんだな、この学園は」

あるいは、美人局(つつもたせ)的な……。それだったら申し出にくいのも分かってしまう。

朱金「おう悠、景気はどうだ?」

悠「いらっしゃい。いつもと変わらんよ」

朱金「だから前にもいったじゃねぇか、シンにもっとこう、ぎゅいんパツンな格好をさせてたたせろと」

悠「ここはそういう店じゃねーよ。いくら効果が期待できても……」

吉音だったら喜んでやってしまいそうな気もするけどな。

朱金「あん?そのシンはどうしたんだよ。いねぇのか?」

悠「ああ。腹壊してうごけないってさ」

朱金「へぇ～、珍しいこともあるもんだな。いったい何を喰ったんだろう」

悠「朱金こそまたここに来てて大丈夫なのか?」

朱金「いんや、大丈夫じゃねぇよ。近いうちに真留あたりが怒鳴りこんでくるだろうな」

悠「やっぱりか。サボるのもいい加減にしておけよな……」

朱金「へっ、奉行所に閉じこもって何が出来るってんだよ。与力どもがいりゃ充分だ。」

このやり取りも何度めだろう。真留の根気強さには頭が下がる。

悠「やれやれ……」

朱金「よし、今日はもう店じまいだ。どっか遊びに行こうぜ!」

悠「なんでそう繋がるんだよ!」

朱金「どうせシンはいねぇんだしいいだろ別に」

悠「小鳥遊堂の経営はどうするんだよ」

朱金「心配すんな、潰れそうになったら金くらい出してやる。」

悠「勘弁してくれ。学園中を敵に回してしまう。」

朱金「なんだよウジウジしやがって!早くしねぇと真留が来るっつってんだろ!」

悠「なんでお前が怒ってるんだよ!」

結局一緒にサボる相手が欲しいだけかよ。そういうふうにしたしく思ってくれるのは、まぁ嬉しいけどな。





ｰ賭場ｰ

遊ぶぜ!と朱金がやってきたのは賭場だった。何度見てもこの雰囲気は慣れないな……。

朱金「おうイチ、景気はどうだ?」

はじめ「……いつもと変わらないよ」

ついさっきおんなじやり取りを聞いたぞ。

朱金「ふーん。ここんところ賭場も平和なもんだな。そろそろ何かあってもいいんじゃねぇか?」

はじめ「鬼平の旦那にもよくしてもらってるし、こんなものだよ」

朱金「鬼平?あいつまだ図々しく出入りしてやがンのか。マジウゼェ。まぁいいや、せっかく来たんだしあんなやつの事は忘れよう。しばらく厄介になるぜ」

はじめ「ごゆっくり……」

悠「……おれは見てるだけだからな」



～朱金賭場中～


朱金「うおおおお!きたぁぁぁぁぁぁっ!!」

男子生徒A「なんだよ!またかよ!」

男子生徒B「くぁー!もういい!今日は帰る!」

バシッと相手が札を投げ捨てる中、朱金はひとり高笑い。

朱金「またダブルアップだぜふへへへ笑いが止まんねぇ。ああ、イカサマなんてしてねぇからな。単なるツキだからな。そこんとこよろしく!」

悠「随分調子が良いんだな」

朱金「おうよ!まさにウヒョヒョ状態だぜ!」

開始直後こそ一進一退だったが、途中からとにかく当たり続けている。朱金の性格や喜びようからイカサマはないと思うけれど、何か申し訳なくすら思えてくる。

いやおれが気にするようなことじゃないんだけど。