ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
そしておれと文は、タイミングを見計らった後、しかるべき場所へと移動した。文が、失踪した兄を探すため、ひいてはその手掛かりになる謎の女性を見つけるため。
そのためにおれたちは、ここにきて。
そのためにおれは、こんな真似をしていた。
ー露天風呂ー
平和「ふおぉぉぉ……この熱さがたまらぬでござるなぁ!」
つばめ「身体の芯から温まりますねぇ。ところで、なぜ水位がどんどん上がっているんでしょブクブクブクブク」
信乃「気持ち良すぎて力が抜けてますよ。お風呂でおぼれるなんて、困った人ですね。大丈夫ですか……っと!」
つばめ「ぷはぁ!水位が下がった!不思議!」
こんな真似を……なんの因果で……くぅ……。
文「小鳥遊さん!誰か人は来ていませんか?」
悠「大丈夫だって!ちゃんと見てるから!」
文「小鳥遊さんは見なくていいんです!乙女の軟肌を覗き見るなんて、男の風上にも置けません!」
悠「そっちぢゃねーよ!ちゃんと見張ってるって意味だ!」
文「乙女の秘密を見張ってる!?それは聞き捨てなりません!!」
悠「誰もそんな事いってねぇ!!」
文「静かに!」
おれと文がいるのは、とある露天風呂のほとりだった。正確には、文は露天風呂脇に居て中を覗き、おれはそこから少し離れて周囲を見渡せる位置に居た。
なんでも例の女性に関して、胸が大きいことと腕が立つこと以外に、別の情報が手に入ったらしい。しかしその情報というやつが、実に曲者だった。
悠「でも本当なのか?探している例の女には、尻にあざがあるって……」
文「封書には間違いなく、そう書いてありました」
悠「その情報自体が何処まで正しいんだって話しだ」
文「手掛かりは、その人からもらう情報のみです。疑っても始まりません」
まあ……わざわざ文をこの島に入れてくれた人だ。ウソの情報なんて流しても得があるとは思えないしな。しかしよりによって、こんな情報じゃなくても……。
悠「そもそも、他に確認する方法はなかったのか?こんな、覗き見なんて真似じゃなくて」
文「うら若き乙女の臀部にあるアザを、他にどうやって調べろというんですか」
胸の大きさなら見ればわかるし、たち振る舞いで腕が立つかどうかも判別つく時がある。けど、尻のアザを調べる方法なんてロクにない。至難といってもいいだろう。風呂を覗き見るしかない……そんな結論に達するのも正直わかる。分かりはするんだが……。
悠「うむむ……」
文「愚痴はいいですから見張りをしっかりお願いします。アザを確認している間、私の背中は無防備ですから。」
見つかればちょっとした問題になるし、捕まるわけにもいかないし……出来れば「女湯を覗いた女」という汚名も負いたくない。そういうわけで、おれを見張り役としてスカウトしたというのが、今回の顛末であった。
確かにおれも、覗きとして捕まることは全力で避けたい。吉音たちになんて言われるか分かったもんじゃない。大体、覗いてもないのに覗きとして捕まるなんて、理不尽だ!……いや、覗けたら捕まってもいいとか、そういうことではないんだけど。
悠「こっちのことはいいから、アザの方はどうなんだ。確認できたか?」
文「……残念ながら、湯気でなかなか……角度もあまりよくありませんし……
あまり時間がかかると、リスクはそれだけ跳ねあがる。
悠「……ふむ」
幸い通行人の気配はないし、人影に注意をしておけば、誰かが来てもこっちが先に気づけそうだ。文のいる位置で確かめにくいなら、おれの方から確認するのもひとつの手かもしれない。万が一捕まってしまったら、おれはともかく文は、不法入島がバレてまずいことになる。
文「……」
重要なのでもう一回いっておくが、おれはともかく、だ。決して、捕まるなら見ておかないと損だとか、そんなことを思った訳じゃない。そもそも捕まりたくない。
なので、あくまでこれは使命なのだ。繰り返すほどいいわけっぽいが、とにかくそういうわけなのだ。今なら周りに誰も居ない。速やかなる確認を得るために、人影がないことをもういち度確認した後、そっと茂みをかき分けた。
悠「こ、これは……」
露天風呂に浸かっていたのは平和たちだった。そういえばこの温泉……じゃなかった銭湯は、彼女たちの一苦労で作られたんだっけ。この風呂で苦労した三人が、ここで疲れを癒すのは、なるほど道理なのかも知りない。……なんてことを考えてしまうのは、おれの中に蠢きまわりそうになるドス桃色い感情を抑えるためである。
そのためにおれたちは、ここにきて。
そのためにおれは、こんな真似をしていた。
ー露天風呂ー
平和「ふおぉぉぉ……この熱さがたまらぬでござるなぁ!」
つばめ「身体の芯から温まりますねぇ。ところで、なぜ水位がどんどん上がっているんでしょブクブクブクブク」
信乃「気持ち良すぎて力が抜けてますよ。お風呂でおぼれるなんて、困った人ですね。大丈夫ですか……っと!」
つばめ「ぷはぁ!水位が下がった!不思議!」
こんな真似を……なんの因果で……くぅ……。
文「小鳥遊さん!誰か人は来ていませんか?」
悠「大丈夫だって!ちゃんと見てるから!」
文「小鳥遊さんは見なくていいんです!乙女の軟肌を覗き見るなんて、男の風上にも置けません!」
悠「そっちぢゃねーよ!ちゃんと見張ってるって意味だ!」
文「乙女の秘密を見張ってる!?それは聞き捨てなりません!!」
悠「誰もそんな事いってねぇ!!」
文「静かに!」
おれと文がいるのは、とある露天風呂のほとりだった。正確には、文は露天風呂脇に居て中を覗き、おれはそこから少し離れて周囲を見渡せる位置に居た。
なんでも例の女性に関して、胸が大きいことと腕が立つこと以外に、別の情報が手に入ったらしい。しかしその情報というやつが、実に曲者だった。
悠「でも本当なのか?探している例の女には、尻にあざがあるって……」
文「封書には間違いなく、そう書いてありました」
悠「その情報自体が何処まで正しいんだって話しだ」
文「手掛かりは、その人からもらう情報のみです。疑っても始まりません」
まあ……わざわざ文をこの島に入れてくれた人だ。ウソの情報なんて流しても得があるとは思えないしな。しかしよりによって、こんな情報じゃなくても……。
悠「そもそも、他に確認する方法はなかったのか?こんな、覗き見なんて真似じゃなくて」
文「うら若き乙女の臀部にあるアザを、他にどうやって調べろというんですか」
胸の大きさなら見ればわかるし、たち振る舞いで腕が立つかどうかも判別つく時がある。けど、尻のアザを調べる方法なんてロクにない。至難といってもいいだろう。風呂を覗き見るしかない……そんな結論に達するのも正直わかる。分かりはするんだが……。
悠「うむむ……」
文「愚痴はいいですから見張りをしっかりお願いします。アザを確認している間、私の背中は無防備ですから。」
見つかればちょっとした問題になるし、捕まるわけにもいかないし……出来れば「女湯を覗いた女」という汚名も負いたくない。そういうわけで、おれを見張り役としてスカウトしたというのが、今回の顛末であった。
確かにおれも、覗きとして捕まることは全力で避けたい。吉音たちになんて言われるか分かったもんじゃない。大体、覗いてもないのに覗きとして捕まるなんて、理不尽だ!……いや、覗けたら捕まってもいいとか、そういうことではないんだけど。
悠「こっちのことはいいから、アザの方はどうなんだ。確認できたか?」
文「……残念ながら、湯気でなかなか……角度もあまりよくありませんし……
あまり時間がかかると、リスクはそれだけ跳ねあがる。
悠「……ふむ」
幸い通行人の気配はないし、人影に注意をしておけば、誰かが来てもこっちが先に気づけそうだ。文のいる位置で確かめにくいなら、おれの方から確認するのもひとつの手かもしれない。万が一捕まってしまったら、おれはともかく文は、不法入島がバレてまずいことになる。
文「……」
重要なのでもう一回いっておくが、おれはともかく、だ。決して、捕まるなら見ておかないと損だとか、そんなことを思った訳じゃない。そもそも捕まりたくない。
なので、あくまでこれは使命なのだ。繰り返すほどいいわけっぽいが、とにかくそういうわけなのだ。今なら周りに誰も居ない。速やかなる確認を得るために、人影がないことをもういち度確認した後、そっと茂みをかき分けた。
悠「こ、これは……」
露天風呂に浸かっていたのは平和たちだった。そういえばこの温泉……じゃなかった銭湯は、彼女たちの一苦労で作られたんだっけ。この風呂で苦労した三人が、ここで疲れを癒すのは、なるほど道理なのかも知りない。……なんてことを考えてしまうのは、おれの中に蠢きまわりそうになるドス桃色い感情を抑えるためである。