ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ーとある廃寺ー
悠「まぁでも、そういわれたことで逆に納得できた。確かにおれは、文みたいに強くないしな、仕返しされるのは嫌だから、騙したりしないようにしよう。うんうん」
もともと文には、助けてもらった借りがある。誰かに迷惑をかける訳じゃなかったら、手助けくらいお安い御用だ。
文「…………ただ、それだけが理由というわけでもないんですけどね。」
悠「あー?」
文「本当は、誰にも力を借りるつもりはなかったんです。でも私一人では、悔しいけれど限界がありました。」
悠「そんで、誰かの手を借りようってことか」
軽く肯定しながら、文は話を続けた。
文「そしてこちらは情けない話しなんですが……小鳥遊さん以外で頼れそうな相手なんて、私には誰も居なくて。だから、先程は偉そうなことをいいましたが、本当は貴方以外に選択の余地なんてなかっただけなんです」
悠「……文は、真面目なんだな」
文「そんなことは……」
おれはもう、協力するって約束してる。だから、わざわざ本当のことをいう必要なんてどこにもない。なのに、自分の事情や情けなさを、隠さずにちゃんと言える。しかもそれを口にした理由は、おれへの信頼などではなく。おそらく文は、力を借りる相手に、ウソや隠し事はしたくないんだろう。借りを作る以上、誠意を見せる。そんな、不器用で実直なところが、彼女の一面なのかもしれない。
悠「もともとやるつもりだったが、尚更やる気が出てきた。」
文「はぁ……」
おれのやる気の源が分からず、文は小首を傾けた。まあおれにだって、漠然としか分かってないから無理もない。
それでも、おかしなもので、妙に気分は良かった。
悠「ところで、もしかしてだけとさ……手を貸してほしいことって、人探しだったりしないか?」
文「……気付かれてましたか」
悠「そうかもな、くらいだけどな」
あくまで予測にしか過ぎなかったが、どうやら当たりだったようだ。
文「もう貴方に隠し事をしても仕方ありませんね。協力を仰ぐためにも、お話しします。といっても、大した話しでもなければ、面白い話しでもないですよ」
悠「手助けに、大したも面白いも関係ないさ」
文「実は……兄を探しているのです。実の兄を以前は、兄から定期的に手紙が届いていたのですが、ある時からそれが全く来なくなりました。こちらから手紙を出しても返事が無く、おかしいなと思い学園側に連絡をしてみたら……行方不明とのことでした」
悠「行方不明か、池袋なら蒸発なんてことは多々あるけどここでなら穏やかじゃないな」
それでも十万を超す人口がひしめく島だ。残念ながら、その手の事件も皆無じゃない。けれど、そういう事実があることと、見知った人間の家族が巻き込まれてるというのでは、話しの重みが違う。
文「……」
悠「何か手掛かりはあるのか?」
文「はい。実は、私は島の外に住んでいたんです。ですから行方不明の件も、情けない話しですが人づてに知りました。そのことを教えてくれた方が、島へ入るて引きから、兄に繋がりそうな情報まで、骨を折ってくださっています」
悠「ふーん……って、ちょっとまて、島に入るってことは、もしかして……?」
文「私は、この学園の生徒ではありません。もちろん関係者でもなく……ただの渡世人なんです」
悠「……ずいぶん、大胆なんだな」
文「肉親ですからね。無茶もしますよ」
悠「いやいや、お兄さんを思う気持ちの方じゃなくて……島に潜んではいったことを口にしたことさ。おれがお上に話せば、お縄は間違いないぞ」
文「いえ、かえって安心しました。それを実行する人は、何も言わずにやりますよね。小鳥遊さんはそれをしないと、今確信しました。私の人を見る目は間違っていませんでした。」
悠「ひゃひゃひゃ、そういわれると嬉しいな」
文「そんな面倒そうなこと、小鳥遊さんは絶対やらない、と」
悠「そういわれると、悲しいなぁ……」
文「私、絶対に信じていますから」
信じるという言葉が、こんなに切なく聞こえたのは初めてだ……やれやれだぜ。
悠「まぁでも、そういわれたことで逆に納得できた。確かにおれは、文みたいに強くないしな、仕返しされるのは嫌だから、騙したりしないようにしよう。うんうん」
もともと文には、助けてもらった借りがある。誰かに迷惑をかける訳じゃなかったら、手助けくらいお安い御用だ。
文「…………ただ、それだけが理由というわけでもないんですけどね。」
悠「あー?」
文「本当は、誰にも力を借りるつもりはなかったんです。でも私一人では、悔しいけれど限界がありました。」
悠「そんで、誰かの手を借りようってことか」
軽く肯定しながら、文は話を続けた。
文「そしてこちらは情けない話しなんですが……小鳥遊さん以外で頼れそうな相手なんて、私には誰も居なくて。だから、先程は偉そうなことをいいましたが、本当は貴方以外に選択の余地なんてなかっただけなんです」
悠「……文は、真面目なんだな」
文「そんなことは……」
おれはもう、協力するって約束してる。だから、わざわざ本当のことをいう必要なんてどこにもない。なのに、自分の事情や情けなさを、隠さずにちゃんと言える。しかもそれを口にした理由は、おれへの信頼などではなく。おそらく文は、力を借りる相手に、ウソや隠し事はしたくないんだろう。借りを作る以上、誠意を見せる。そんな、不器用で実直なところが、彼女の一面なのかもしれない。
悠「もともとやるつもりだったが、尚更やる気が出てきた。」
文「はぁ……」
おれのやる気の源が分からず、文は小首を傾けた。まあおれにだって、漠然としか分かってないから無理もない。
それでも、おかしなもので、妙に気分は良かった。
悠「ところで、もしかしてだけとさ……手を貸してほしいことって、人探しだったりしないか?」
文「……気付かれてましたか」
悠「そうかもな、くらいだけどな」
あくまで予測にしか過ぎなかったが、どうやら当たりだったようだ。
文「もう貴方に隠し事をしても仕方ありませんね。協力を仰ぐためにも、お話しします。といっても、大した話しでもなければ、面白い話しでもないですよ」
悠「手助けに、大したも面白いも関係ないさ」
文「実は……兄を探しているのです。実の兄を以前は、兄から定期的に手紙が届いていたのですが、ある時からそれが全く来なくなりました。こちらから手紙を出しても返事が無く、おかしいなと思い学園側に連絡をしてみたら……行方不明とのことでした」
悠「行方不明か、池袋なら蒸発なんてことは多々あるけどここでなら穏やかじゃないな」
それでも十万を超す人口がひしめく島だ。残念ながら、その手の事件も皆無じゃない。けれど、そういう事実があることと、見知った人間の家族が巻き込まれてるというのでは、話しの重みが違う。
文「……」
悠「何か手掛かりはあるのか?」
文「はい。実は、私は島の外に住んでいたんです。ですから行方不明の件も、情けない話しですが人づてに知りました。そのことを教えてくれた方が、島へ入るて引きから、兄に繋がりそうな情報まで、骨を折ってくださっています」
悠「ふーん……って、ちょっとまて、島に入るってことは、もしかして……?」
文「私は、この学園の生徒ではありません。もちろん関係者でもなく……ただの渡世人なんです」
悠「……ずいぶん、大胆なんだな」
文「肉親ですからね。無茶もしますよ」
悠「いやいや、お兄さんを思う気持ちの方じゃなくて……島に潜んではいったことを口にしたことさ。おれがお上に話せば、お縄は間違いないぞ」
文「いえ、かえって安心しました。それを実行する人は、何も言わずにやりますよね。小鳥遊さんはそれをしないと、今確信しました。私の人を見る目は間違っていませんでした。」
悠「ひゃひゃひゃ、そういわれると嬉しいな」
文「そんな面倒そうなこと、小鳥遊さんは絶対やらない、と」
悠「そういわれると、悲しいなぁ……」
文「私、絶対に信じていますから」
信じるという言葉が、こんなに切なく聞こえたのは初めてだ……やれやれだぜ。