ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「うん、ついに直ったぁ……。」
吉音「すぅ~っ、んん~っ、あ、あんこがっ!あんこが襲ってくるぅぅ~……こう……なったら、ぜんぶ……食べつくすしか……なぁい~っ、んふふ~~っ、んん……っ、ぐぅ~~っ」
悠「はぁ……羨ましいほどお気楽なやつだ」
幸せそうな寝息を立てる吉音に溜息をつくと、おれはがらんとした店内を見渡す。
今日も小鳥遊堂は絶賛閑古鳥中。戸口から吹き込んでくる空っ風が身にしみる。
由真「あ、ごめんね。今、カウンター席しか空いてないんだけどいいかな?ありがと、ゆっくれしていってね。三名様、ご案内ー」
……隣は相変わらずだなこのままじゃ、ねずみやに吸収されてしまうのも時間の問題かもしれない。
悠「やめやめ。気分が沈むだけだ」
どんよりとした気分を打ちきるように椅子から立ち上がると、おれはうろうろと店内を歩き回る。何かこう建設的なことを考えよう。
例えば、この店の売り上げがアップするような……。
吉音「おだんごのあめだぁ~……」
悠「おすすめメニューでも書いて壁に張るかぁ~」
殺風景な壁を眺め、そんなことを思いついたおれは、もの書き道具を取りに自室へ向かった。
持ってきた書道具をテーブルに置き、数枚の札を取りだす。親父の教育上、おれも昔は多少、書道の真似なんかはやっていた。でも、最近はてんでご無沙汰だし、腕も鈍ってるだろうなぁ。でもまぁ、とりあえず書いてみるかと気合を入れるため、おれは大きく制服の袖を捲り筆を執る。
吉音「ふわぁ~っ……そろそろおやつの時間だよね~?」
そんなところに、店の奥で横になっていた吉音が大あくびしながら起き上って来た。
悠「悪いが、店がこんな状態じゃおやつを出してやる余裕なんてねぇぞ」
吉音「えぇ~っ!?そんなぁ~~っ!」
悠「でも、仕事を手伝ってくれるっていうなら、考えてやらんこともない」
吉音「うんっ、わかった!……って、あれ?そういえばなにしてんの?悠」
悠「ああ。おすすめメニューでも壁に貼れば、少しは店の賑やかしになるかなって思ってさ」
きょとんと不思議そうに見つめてくる吉音に、ぴらぴらと札を振って説明してやる。
吉音「あ、いいねそれっ♪それじゃ、あたしがそれを書けばいーの?」
悠「お願いできるか?とりあえず、ここに置いてある5、6枚を書いて貰えればいいから」
吉音「おっけ~っ!ドーンとあたしにお任せっ♪」
ごきげんな笑顔で胸を叩いた吉音は、意気揚々とおれの渡した筆を握った。甘味処の例にもれず、ウチの店も女性客がメインの客そうだ。だから、お客さんへのアピールには可愛い感じのものが良いだろうと吉音に頼んだわけなのだが……
悠「……なんだこりゃ?」
蛇がのたくったような模様が並ぶ札を摘み、おれは顔をしかめる。
吉音「どう?なかなか可愛くできたでしょ?」
悠「念のために聞くが、これは文字……なのか?」
吉音「決まってるじゃん!書いてくれーってお願いしたの悠でしょ?」
悠「……悪い。読めない」
吉音「なにそれっ!?ひどいっ!」
そもそも、これを文字ということ自体、おれの頭が全力で拒否する。下手を通り越して解読不能レベルだ。
悠「うーん……」
想「どうしました?そんなに考え込んで」
吉音「あっ、想いちゃんっ!」
そこへふらりと姿を見せた逢岡さんに、吉音が嬉しそうに飛びついていった。
吉音「ねぇねぇ聞いてよ、悠ったらひどいんだよ・メニュー書いてって頼まれたから、頑張って書いたのに、文字が読めないとか馬鹿にすんのっ!」
悠「いや、馬鹿にはしてないだろ?」
途方に暮れたことは確かだけど。
悠「うん、ついに直ったぁ……。」
吉音「すぅ~っ、んん~っ、あ、あんこがっ!あんこが襲ってくるぅぅ~……こう……なったら、ぜんぶ……食べつくすしか……なぁい~っ、んふふ~~っ、んん……っ、ぐぅ~~っ」
悠「はぁ……羨ましいほどお気楽なやつだ」
幸せそうな寝息を立てる吉音に溜息をつくと、おれはがらんとした店内を見渡す。
今日も小鳥遊堂は絶賛閑古鳥中。戸口から吹き込んでくる空っ風が身にしみる。
由真「あ、ごめんね。今、カウンター席しか空いてないんだけどいいかな?ありがと、ゆっくれしていってね。三名様、ご案内ー」
……隣は相変わらずだなこのままじゃ、ねずみやに吸収されてしまうのも時間の問題かもしれない。
悠「やめやめ。気分が沈むだけだ」
どんよりとした気分を打ちきるように椅子から立ち上がると、おれはうろうろと店内を歩き回る。何かこう建設的なことを考えよう。
例えば、この店の売り上げがアップするような……。
吉音「おだんごのあめだぁ~……」
悠「おすすめメニューでも書いて壁に張るかぁ~」
殺風景な壁を眺め、そんなことを思いついたおれは、もの書き道具を取りに自室へ向かった。
持ってきた書道具をテーブルに置き、数枚の札を取りだす。親父の教育上、おれも昔は多少、書道の真似なんかはやっていた。でも、最近はてんでご無沙汰だし、腕も鈍ってるだろうなぁ。でもまぁ、とりあえず書いてみるかと気合を入れるため、おれは大きく制服の袖を捲り筆を執る。
吉音「ふわぁ~っ……そろそろおやつの時間だよね~?」
そんなところに、店の奥で横になっていた吉音が大あくびしながら起き上って来た。
悠「悪いが、店がこんな状態じゃおやつを出してやる余裕なんてねぇぞ」
吉音「えぇ~っ!?そんなぁ~~っ!」
悠「でも、仕事を手伝ってくれるっていうなら、考えてやらんこともない」
吉音「うんっ、わかった!……って、あれ?そういえばなにしてんの?悠」
悠「ああ。おすすめメニューでも壁に貼れば、少しは店の賑やかしになるかなって思ってさ」
きょとんと不思議そうに見つめてくる吉音に、ぴらぴらと札を振って説明してやる。
吉音「あ、いいねそれっ♪それじゃ、あたしがそれを書けばいーの?」
悠「お願いできるか?とりあえず、ここに置いてある5、6枚を書いて貰えればいいから」
吉音「おっけ~っ!ドーンとあたしにお任せっ♪」
ごきげんな笑顔で胸を叩いた吉音は、意気揚々とおれの渡した筆を握った。甘味処の例にもれず、ウチの店も女性客がメインの客そうだ。だから、お客さんへのアピールには可愛い感じのものが良いだろうと吉音に頼んだわけなのだが……
悠「……なんだこりゃ?」
蛇がのたくったような模様が並ぶ札を摘み、おれは顔をしかめる。
吉音「どう?なかなか可愛くできたでしょ?」
悠「念のために聞くが、これは文字……なのか?」
吉音「決まってるじゃん!書いてくれーってお願いしたの悠でしょ?」
悠「……悪い。読めない」
吉音「なにそれっ!?ひどいっ!」
そもそも、これを文字ということ自体、おれの頭が全力で拒否する。下手を通り越して解読不能レベルだ。
悠「うーん……」
想「どうしました?そんなに考え込んで」
吉音「あっ、想いちゃんっ!」
そこへふらりと姿を見せた逢岡さんに、吉音が嬉しそうに飛びついていった。
吉音「ねぇねぇ聞いてよ、悠ったらひどいんだよ・メニュー書いてって頼まれたから、頑張って書いたのに、文字が読めないとか馬鹿にすんのっ!」
悠「いや、馬鹿にはしてないだろ?」
途方に暮れたことは確かだけど。