ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ーかなうの養成所ー
おれはかなうさんの養成所にやってきていた。
~ほんの少し前~
朱金『悠、ちょっとこいつを先生のところに頼まれてくれねえか』
朱金はおれに向かっておおげさに手を合わせて見せた。
悠『先生ってかなうさんのところに?』
朱金『そうそう』
悠『嫌ってわけじゃないけど自分でいけばいいじゃないか』
朱金『いやぁこれで御用の筋もなかなか手が離せなくて……。それに先生のところはちょっと敷居が……』
悠『はいはい。で、なにを届ければいいんだ?』
朱金『これだ。こいつを頼む』
そういって渡されたのが今おれの手にある小さな包み。イカの塩辛だという。酒の肴ならわかるんだけどなあ…。
かなうさんがいつも大徳利から飲んでいるのは、イチゴミルクなのだ。パッと見なんと見えようと。
イチゴミルクの肴にイカの塩辛を……と想像したら気持ち悪くなってしまった。まあひとの趣味にとやかくはいうまい。とにかく届けよう。
悠「ちゃーす、かなうさん。いますかー?」
かなう「おう。悠か、あがれあがれ」
養成所にあがると、かなうさんは見知らぬ男子生徒と向かい合っていた。
悠「ういーっす、って……お客さんいるじゃないですか。なにか大事な話しだったら、おれすぐに帰りますけど」
もともと朱金からのおつかいものを頼まれただけだし。
かなう「ああいや、そうじゃないんだ……。ええと、いや、大事っていやあ大事な話しなんだが……」
悠「あー?」
かなうさんにしては妙に煮え切らない話し方だ。
男子生徒「…………」
かなうさんと差し向かいに座っていた男子生徒がおれの方を見た。なんだか人の良さそうな……、でも別に病人とかケガ人というふうには見えない。すぐに彼は視線をおれから外してしまう。
どうやら値踏みでもされたかな?
かなう「ううー」
唸りながらあごをかくかなうさん。珍しく困っているようだ。なにごとも一刀両断な彼女にしては珍しい。いったいなにを話していたんだろう。
悠「……」
かなう「おお、そうだ!悠、お前もいっしょに来てコイツの相談にのってやってくれ」
悠「はあ?」
男子生徒「…………」
ちらりとまた男子生徒がこちらをみる。
悠「っか、いいの?」
なんだか、肝心の彼の方はあまり歓迎してくれていないようにみえるんだけど……。
かなう「いいから来い。こういう話しは苦手なんだよ」
悠「はあ……っで、いったい何の相談何です?」
男子生徒の方も、とくになにかをいいだすということもなかったので、おれは仕方なくふたりの近くに座った。
男子生徒「…………あの……」
男子生徒がなかなか切り出さないのを見て、かなうさんが口を開いた。
かなう「ああ……ええとな。こいつは関口っていうんだが……最初は、病気の相談だっていうから、話しを聞いておろうってことにしたんだが……」
悠「病気の相談じゃあなかったと?」
おれは関口とかなうさんを見比べて聞いた。この男、いったいなんの相談に来たっていうんだろう。もしやかなうさんの腕っ節を見込んで、なにか荒事の相談にでもやってきたか。
だが、かなうさんの答えはちょっと意外なものだった。
おれはかなうさんの養成所にやってきていた。
~ほんの少し前~
朱金『悠、ちょっとこいつを先生のところに頼まれてくれねえか』
朱金はおれに向かっておおげさに手を合わせて見せた。
悠『先生ってかなうさんのところに?』
朱金『そうそう』
悠『嫌ってわけじゃないけど自分でいけばいいじゃないか』
朱金『いやぁこれで御用の筋もなかなか手が離せなくて……。それに先生のところはちょっと敷居が……』
悠『はいはい。で、なにを届ければいいんだ?』
朱金『これだ。こいつを頼む』
そういって渡されたのが今おれの手にある小さな包み。イカの塩辛だという。酒の肴ならわかるんだけどなあ…。
かなうさんがいつも大徳利から飲んでいるのは、イチゴミルクなのだ。パッと見なんと見えようと。
イチゴミルクの肴にイカの塩辛を……と想像したら気持ち悪くなってしまった。まあひとの趣味にとやかくはいうまい。とにかく届けよう。
悠「ちゃーす、かなうさん。いますかー?」
かなう「おう。悠か、あがれあがれ」
養成所にあがると、かなうさんは見知らぬ男子生徒と向かい合っていた。
悠「ういーっす、って……お客さんいるじゃないですか。なにか大事な話しだったら、おれすぐに帰りますけど」
もともと朱金からのおつかいものを頼まれただけだし。
かなう「ああいや、そうじゃないんだ……。ええと、いや、大事っていやあ大事な話しなんだが……」
悠「あー?」
かなうさんにしては妙に煮え切らない話し方だ。
男子生徒「…………」
かなうさんと差し向かいに座っていた男子生徒がおれの方を見た。なんだか人の良さそうな……、でも別に病人とかケガ人というふうには見えない。すぐに彼は視線をおれから外してしまう。
どうやら値踏みでもされたかな?
かなう「ううー」
唸りながらあごをかくかなうさん。珍しく困っているようだ。なにごとも一刀両断な彼女にしては珍しい。いったいなにを話していたんだろう。
悠「……」
かなう「おお、そうだ!悠、お前もいっしょに来てコイツの相談にのってやってくれ」
悠「はあ?」
男子生徒「…………」
ちらりとまた男子生徒がこちらをみる。
悠「っか、いいの?」
なんだか、肝心の彼の方はあまり歓迎してくれていないようにみえるんだけど……。
かなう「いいから来い。こういう話しは苦手なんだよ」
悠「はあ……っで、いったい何の相談何です?」
男子生徒の方も、とくになにかをいいだすということもなかったので、おれは仕方なくふたりの近くに座った。
男子生徒「…………あの……」
男子生徒がなかなか切り出さないのを見て、かなうさんが口を開いた。
かなう「ああ……ええとな。こいつは関口っていうんだが……最初は、病気の相談だっていうから、話しを聞いておろうってことにしたんだが……」
悠「病気の相談じゃあなかったと?」
おれは関口とかなうさんを見比べて聞いた。この男、いったいなんの相談に来たっていうんだろう。もしやかなうさんの腕っ節を見込んで、なにか荒事の相談にでもやってきたか。
だが、かなうさんの答えはちょっと意外なものだった。