ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー大通り:たい焼き屋台ー
平和「やっぱり商売は難しいでござる……」
つばめ「作るのは得意なんですが、売るのはまだまだ勉強不足でした」
信乃「……たい焼きを売るくらい簡単だって、思いあがってました」
三人ともも、すっかり悄気(しょげ)返っている。そんな姿を見せられると、慰めのひとつくらい言ってやりたくなる。
悠「あのな、三人とも……」
「おーっほほほほ!やはり、この程度やったな」
「「「越後屋さん!!」」」
悠「越後屋、どうしてここに……」
越後屋「そんなの決まってるやろ。敵中視察ってとこや。けど、この様子やと、もう勝負もあったも同然やな」
越後屋は売れ残りで埋まった屋台を一瞥して、ふっと皮肉めいた笑いを浮かべる。
平和「うっ……ま、まだ終わってないでござるっ」
信乃「そうですよ。約束の期限までにはもっと売りあげてみせます!」
越後屋「悪いけぇど、タイムアップや。ウチも商売やさかい、期待できへん者にこれ以上、店を貸してられんのや」
信乃「そんな……約束が違います!」
越後屋「証文なしの約束なんて、破られるためにあるもんや。そないやから、お嬢ちゃんなんて呼ばれるんや」
信乃「っ……卑怯です!」
越後屋「そういういっぱしの口は、まともに売り上げてからにすることや。でないと、遠吠えにしか聞こえへんで」
信乃「う、うぅ……っ」
言いたい放題な越後屋を、信乃はきっと睨んでいる。いや、それとも泣くのをこらえているのか。
つばめ「……悠さん」
つばめがおれの肘をこついてくる。助け船を出しなさい、ということだろう。まあ、さっき泣かせそうになってしまったお詫びだ。ここは一肌脱いでやるか。
悠「あー……越後屋。あんまりちっこいのを虐めるんじゃ……」
越後屋「ほな、勝負は終了やさかい、こいつを受け取りや」
言いかけたおれを無視して、越後屋は信乃に懐から取り出した封筒を手渡した。
信乃「え……これは……お金?」
受け取った信乃は、封筒の中を確認して驚きの声を漏らす。
越後屋「そう、あんたらの給金や。少しは売れたようやからな」
そういいながら、越後屋は平和とつばめにも同じ封筒を手渡す。
平和「もらっていいんですか……私たち、大して売ってないのに……」
つばめ「それに、これは勝負だったのでは……」
越後屋「ソレはソレ、これはこれや。屋台の売り上げはウチがいただくんやさかい、給金はしっかりもらっとき」
平和「越後屋さん……悪の首領じゃなくて、最後は味方になってくれる戦隊物のブラックだったんですねっ!」
つばめ「ありがとうございます、すごく嬉しいです」
信乃「でも、勝負には負けてしまったんですよね……」
目を輝かせて素直に喜んでいる二人と違って、信乃は微妙な顔つきだ。
越後屋「ああ、その話しならもうすんどるから、ええわ」
信乃「え……?」
越後屋「共同経営の話しな、まとまったんや。せやから、勝負もちゃらゃ」
信乃「ええぇ!?」
越後屋「そういうことやから、その給金も祝儀みたいなもんや。遠慮せんと受け取っておき」
信乃「は……はぁ……そういうことでしたら、その……あ、ありがとうございます」
平和・つばめ「「ありがとうございますっ」」
ぺこりと頭を下げた信乃に続いて、平和とつばめも深々とお辞儀した。
越後屋「まあ、あんたらも素人さんにしては、よう頑張ったわ。そのうち、また何か頼みごとするかもしれへんな」
越後屋が笑うと、三人は見事に声をハモらせた。
「「「お困りごとは、大江戸探偵団にお任せを!」」」
平和「やっぱり商売は難しいでござる……」
つばめ「作るのは得意なんですが、売るのはまだまだ勉強不足でした」
信乃「……たい焼きを売るくらい簡単だって、思いあがってました」
三人ともも、すっかり悄気(しょげ)返っている。そんな姿を見せられると、慰めのひとつくらい言ってやりたくなる。
悠「あのな、三人とも……」
「おーっほほほほ!やはり、この程度やったな」
「「「越後屋さん!!」」」
悠「越後屋、どうしてここに……」
越後屋「そんなの決まってるやろ。敵中視察ってとこや。けど、この様子やと、もう勝負もあったも同然やな」
越後屋は売れ残りで埋まった屋台を一瞥して、ふっと皮肉めいた笑いを浮かべる。
平和「うっ……ま、まだ終わってないでござるっ」
信乃「そうですよ。約束の期限までにはもっと売りあげてみせます!」
越後屋「悪いけぇど、タイムアップや。ウチも商売やさかい、期待できへん者にこれ以上、店を貸してられんのや」
信乃「そんな……約束が違います!」
越後屋「証文なしの約束なんて、破られるためにあるもんや。そないやから、お嬢ちゃんなんて呼ばれるんや」
信乃「っ……卑怯です!」
越後屋「そういういっぱしの口は、まともに売り上げてからにすることや。でないと、遠吠えにしか聞こえへんで」
信乃「う、うぅ……っ」
言いたい放題な越後屋を、信乃はきっと睨んでいる。いや、それとも泣くのをこらえているのか。
つばめ「……悠さん」
つばめがおれの肘をこついてくる。助け船を出しなさい、ということだろう。まあ、さっき泣かせそうになってしまったお詫びだ。ここは一肌脱いでやるか。
悠「あー……越後屋。あんまりちっこいのを虐めるんじゃ……」
越後屋「ほな、勝負は終了やさかい、こいつを受け取りや」
言いかけたおれを無視して、越後屋は信乃に懐から取り出した封筒を手渡した。
信乃「え……これは……お金?」
受け取った信乃は、封筒の中を確認して驚きの声を漏らす。
越後屋「そう、あんたらの給金や。少しは売れたようやからな」
そういいながら、越後屋は平和とつばめにも同じ封筒を手渡す。
平和「もらっていいんですか……私たち、大して売ってないのに……」
つばめ「それに、これは勝負だったのでは……」
越後屋「ソレはソレ、これはこれや。屋台の売り上げはウチがいただくんやさかい、給金はしっかりもらっとき」
平和「越後屋さん……悪の首領じゃなくて、最後は味方になってくれる戦隊物のブラックだったんですねっ!」
つばめ「ありがとうございます、すごく嬉しいです」
信乃「でも、勝負には負けてしまったんですよね……」
目を輝かせて素直に喜んでいる二人と違って、信乃は微妙な顔つきだ。
越後屋「ああ、その話しならもうすんどるから、ええわ」
信乃「え……?」
越後屋「共同経営の話しな、まとまったんや。せやから、勝負もちゃらゃ」
信乃「ええぇ!?」
越後屋「そういうことやから、その給金も祝儀みたいなもんや。遠慮せんと受け取っておき」
信乃「は……はぁ……そういうことでしたら、その……あ、ありがとうございます」
平和・つばめ「「ありがとうございますっ」」
ぺこりと頭を下げた信乃に続いて、平和とつばめも深々とお辞儀した。
越後屋「まあ、あんたらも素人さんにしては、よう頑張ったわ。そのうち、また何か頼みごとするかもしれへんな」
越後屋が笑うと、三人は見事に声をハモらせた。
「「「お困りごとは、大江戸探偵団にお任せを!」」」