ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー越後屋の屋敷ー
悠「……分かった、それでいい。ただし、後でまた訴えがあったら、そのときはまたくるかもしれないから」
越後屋「ま、いいでしょ」
越後屋はおれの答えにあっさり納得してくれた。どうやら、たい焼き屋を邪魔するより楽しいことに興味が移っているらしい。
吉音「ねえねえ、悠」
吉音がひそひそと耳打ちしてくる。
悠「あー?」
吉音「姫様ちゃんたち、連れてきてよかったね」
悠「……だといいんだがな」
少しいぶかしいおれの前で、三人は円陣を組んで意気を盛んにしているのだった。
平和「天国!つばめ!拙者たちの経営手腕を見せてやるでござるよ!」
信乃「おう!目にもの見せてやろうぜ!」
つばめ「頑張りましょう~」
「「「お~っ!!」」」
ー大通り:たい焼き屋台ー
平和「よってらっしゃい見てらっしゃい。美味しい美味しい、たい焼きの屋台でござるよ~」
信乃「お……美味しいから、いっぺん喰っていきやがれ……食べてっいってくださぁい」
平和「……うぅー、誰も立ち止まってくれないよぅ」
信乃「さっきまではそれなりに人が来てくれていたのに……もう飽きられちゃったんでしょうか……」
つばめ「作り置きのたい焼きが、もう冷めちゃってます……」
悠「よう、三人とも。調子はどうだ?」
「「「あっ、悠さん!」」」
~少女説明中~
悠「……なるほど、そういうことか」
口々に喋る三人から事情を聞き終えて、おれはなるほど、と唸った。
項垂れている三人の横にあるのは、越後屋から借りたたい焼き屋台だ。お手製なのだろう看板やら暖簾やらで飾り立てられているけれど、それがいっそう虚しさを強めている。要するに、売り上げは閑古鳥が鳴き過ぎて喉を嗄らすほどの散々たるもの、ということだった。
つばめ「開店してしばらくは、そこそこお客さんが来ていたのですけど、それが終わるとさっぱりで……」
悠「だから、すぐに値下げをしたわけか」
平和「そうなのでござる。そしたら、またお客さんが戻って来たんでござるよー」
悠「でも、儲けがさっぱり無くて、また値段を戻したら、また客足が遠のいた……と」
信乃「ええ……だから次は、屋台の飾り付けを頑張ったり、新メニューを開発してみたりしたんです。」
つばめ「他のお店を偵察して、ちゃんとリサーチいたしました」
悠「なるほど……それでこうなったわけか」
おれは改めて屋台を見やりながら、三人には聞こえないように溜息を吐いた。
屋台は、とても食品を扱っているとは思えないようなギンギラな派手派手しさで飾りたられている。派手な幟と一緒に張り出されているメニューの内容も、これまた壮絶だ。マシュマロ、お餅はまだ辛うじて分からなくもないが、ゼリー、かまぼこ、刺身、ワカメ、豆腐、塩ホルモン……。とても、たい焼きの具とは思えないラインナップだ。
つばめ「みんなで他のお店を食べ歩きして、研究したんですよ。」
平和「たい焼きって、あんことカスタードだけじゃないんでござるよ。知ってたでござる?」
悠「チョコやカレーや肉じゃががあるのはしってるけれど、刺身は無理だろ!ワカメってなんだよ、ホルモンは無いだろ!!」
信乃「うぅ、すいませんっ……」
つばめ「塩ホルモンは天国の考案でした~」
悠「あー……いや、別に、それだけを非難したわけじゃなくてだな……」
信乃「うっ……う、ぅ……っ……」
平和「あーっ!悠さんが泣かせたーっ!」
悠「ええっ、おれのせいか!?」
つばめ「では、わたくしたちのせいだとでも?」
悠「そういうわけじゃなく……そっそれよりも、肝心の売り上げはどうだったんだ?」
平和「うぐっ」
つばめ「悠さんは……わたくしたちも泣かせる気ですね……」
売り上げのことを持ち出したとたんに、にやにや笑っていた二人の顔が曇ってしまう。いまの話しと、その顔を見れば、わざわざ聞かなくとも底辺横ばいだったことは自明の理だった。
悠「……分かった、それでいい。ただし、後でまた訴えがあったら、そのときはまたくるかもしれないから」
越後屋「ま、いいでしょ」
越後屋はおれの答えにあっさり納得してくれた。どうやら、たい焼き屋を邪魔するより楽しいことに興味が移っているらしい。
吉音「ねえねえ、悠」
吉音がひそひそと耳打ちしてくる。
悠「あー?」
吉音「姫様ちゃんたち、連れてきてよかったね」
悠「……だといいんだがな」
少しいぶかしいおれの前で、三人は円陣を組んで意気を盛んにしているのだった。
平和「天国!つばめ!拙者たちの経営手腕を見せてやるでござるよ!」
信乃「おう!目にもの見せてやろうぜ!」
つばめ「頑張りましょう~」
「「「お~っ!!」」」
ー大通り:たい焼き屋台ー
平和「よってらっしゃい見てらっしゃい。美味しい美味しい、たい焼きの屋台でござるよ~」
信乃「お……美味しいから、いっぺん喰っていきやがれ……食べてっいってくださぁい」
平和「……うぅー、誰も立ち止まってくれないよぅ」
信乃「さっきまではそれなりに人が来てくれていたのに……もう飽きられちゃったんでしょうか……」
つばめ「作り置きのたい焼きが、もう冷めちゃってます……」
悠「よう、三人とも。調子はどうだ?」
「「「あっ、悠さん!」」」
~少女説明中~
悠「……なるほど、そういうことか」
口々に喋る三人から事情を聞き終えて、おれはなるほど、と唸った。
項垂れている三人の横にあるのは、越後屋から借りたたい焼き屋台だ。お手製なのだろう看板やら暖簾やらで飾り立てられているけれど、それがいっそう虚しさを強めている。要するに、売り上げは閑古鳥が鳴き過ぎて喉を嗄らすほどの散々たるもの、ということだった。
つばめ「開店してしばらくは、そこそこお客さんが来ていたのですけど、それが終わるとさっぱりで……」
悠「だから、すぐに値下げをしたわけか」
平和「そうなのでござる。そしたら、またお客さんが戻って来たんでござるよー」
悠「でも、儲けがさっぱり無くて、また値段を戻したら、また客足が遠のいた……と」
信乃「ええ……だから次は、屋台の飾り付けを頑張ったり、新メニューを開発してみたりしたんです。」
つばめ「他のお店を偵察して、ちゃんとリサーチいたしました」
悠「なるほど……それでこうなったわけか」
おれは改めて屋台を見やりながら、三人には聞こえないように溜息を吐いた。
屋台は、とても食品を扱っているとは思えないようなギンギラな派手派手しさで飾りたられている。派手な幟と一緒に張り出されているメニューの内容も、これまた壮絶だ。マシュマロ、お餅はまだ辛うじて分からなくもないが、ゼリー、かまぼこ、刺身、ワカメ、豆腐、塩ホルモン……。とても、たい焼きの具とは思えないラインナップだ。
つばめ「みんなで他のお店を食べ歩きして、研究したんですよ。」
平和「たい焼きって、あんことカスタードだけじゃないんでござるよ。知ってたでござる?」
悠「チョコやカレーや肉じゃががあるのはしってるけれど、刺身は無理だろ!ワカメってなんだよ、ホルモンは無いだろ!!」
信乃「うぅ、すいませんっ……」
つばめ「塩ホルモンは天国の考案でした~」
悠「あー……いや、別に、それだけを非難したわけじゃなくてだな……」
信乃「うっ……う、ぅ……っ……」
平和「あーっ!悠さんが泣かせたーっ!」
悠「ええっ、おれのせいか!?」
つばめ「では、わたくしたちのせいだとでも?」
悠「そういうわけじゃなく……そっそれよりも、肝心の売り上げはどうだったんだ?」
平和「うぐっ」
つばめ「悠さんは……わたくしたちも泣かせる気ですね……」
売り上げのことを持ち出したとたんに、にやにや笑っていた二人の顔が曇ってしまう。いまの話しと、その顔を見れば、わざわざ聞かなくとも底辺横ばいだったことは自明の理だった。