ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー大江戸橋:大通りー
おれたちはいま、とある商店の前まで来ている。おれ達というのは、おれと吉音。それに加えて、大江戸探偵団の三人組だ。
吉音「あれだよね、想ちゃんがいっていた越後屋の屋台って」
吉音の見ている先には、隊焼きの屋台が一軒、店を出している。その屋台の正面にある店舗もたい焼き屋で、逢岡さんに苦情を申し立てたのは、その店舗の主だった。
つばめ「くんくん……美味しそうな匂いですね~」
吉音「うんうん、だよね~。さっきからお腹ぐーぐーだよ」
悠「コラコラ、そこの二匹。そっちじゃなくて、こっちだろ」
屋台から漂ってくる甘く芳ばしい匂いに引きよせられそうな二人の首根っこを掴んで、方向転換させる。
吉音「あーぅー……」
悠「平和、信乃。つばめの面倒をちゃんと見て……って、おいおいおい……」
信乃「私、チョコレートがいいです……」
平和「私はやっぱり小倉あん……うへへー」
両手でつばめと吉音の襟首を引っ張っておきつつ横を見やると、平和と信乃も誘惑に負けかけていた。
悠「どいつもこいつも……そんなにたい焼きが食べたいんなら、あっちのお店で話しを聞いたあとに買えばいいだろ」
吉音「あっ、そか。あっちのお店も、たい焼き屋さんだったんだよね」
悠「あー……そうだよ。自分のたい焼き屋の前に同じたい焼き屋の屋台を出されて困ってる……って苦情だっただろ」
吉音「……うん、覚えてたよ」
悠「いや、忘れてただろ……まぁいいや。とにかくほら、さっさと行くぞ」
平和「屋台に寄ってからでは駄目でござるか?」
悠「……あー、好きにしていいぞ。平和たちを連れていく必要は別にないからな」
平和「あっ、それはないでござる!拙者たちもついてくでござるーっ!天国、つばめ!道草食ってないで、いくでござるよ!」
信乃「うわわっ」
つばめ「は~い、いきましょ~」
平和は両手で信乃とつばめの手を取って、屋台正面のたい焼き屋へと走っていく。野次馬根性は、甘味より優先されるようだった。
ーとあるたい焼き屋ー
商人A「あなたたちがお奉行様のつかいのかたで?また随分と大勢ですね」
悠「いや、半分以上はオマケなんですが……すいません」
商人A「あっ、そんなことより、なんとかしてくれましたか?」
悠「……はい?」
首を傾げたおれに、店主はぐっとにじり寄ってくる。
商人A「だから、うちの真ん前で営業妨害してる屋台ですよ。もう撤去してくれたんですよね?」
悠「いや……先にお話しをうかがってから……」
商人A「話しなら、もうしてますよ!!お奉行様から聞いてないんですか!?」
さらにぐぐっとにじり寄られた。
悠「いや、聞いてるけど……」
商人A「だったら、こんなところで油売ってないで、さっさと撤去しちゃってくださいよ!!」
さらにぐぐぐっと躙り寄られる。
悠「チッ……あのですね……そうする前に、もう少し詳しいお話しを聞かせていただこうと……」
商人A「詳しくもなにもないよ!あの屋台はね、越後屋がうちを潰そうとして送り込んできた手先なんだよ!!」
ぐぐぐぐっと躙り寄って来た店主の言葉に素早く反応したのは、平和だった。
平和「手先!?悪の手先でござるか!?」
商人A「そうだよ!うちの店の真ん前で、うちより安く売るもんだから、うちは商売あがったりだっ!」
平和「つまり、越後屋さんが悪の首領なんでござるねっ!」
商人A「その通り!あの屋台が邪魔するようになったのは、越後屋からの共同経営の打診を断ってすぐだ」
信乃「ソレは確かに、越後屋様が怪しいぜっ」
つばめ「そういうことでしたら、のんびりお話ししている場合じゃありませんね」
悠「おいおい、どうするつもりだよ?」
信乃「そんなの決まってるぜ!」
平和「悪の首領を倒すでござるよーっ!」
つばめ「お~っ」
悠「おい、勝手なことをする……おいっ?!」
三人は勝手に結論を出すと、おれに止める暇を与えてもくれずに店を飛び出していった。
吉音「悠、追いかけた方が良くない?」
悠「おれも今そう思ってたとこころだよ」
越後屋絡みとなるとただでさえ面倒そうなのに、あの三人にひっかきまわされたら、さらに悪化しそうだ。そうなる前に、今度こそしっかりと首根っこを押さえてやらないと!
商人A「なんでもいいから、さっさと表の屋台を立ち退かせてくれよ」
悠「ああもう、わかったよ!また後で来るからアンタも勝手な真似すんなよ!!」
商人A「や、屋台に殴りこみなんかしないよ。そんなことしたら、越後屋の思うつぼだからな」
悠「そうしてくれ」
吉音「悠、早く早くっ」
悠「ああ、じゃあ、失礼します」
商人A「ええ、なるったけ速く頼みますよ」
また敬語に戻った店主に会釈すると、おれは焦った顔の吉音に引っ張られる形で、越後屋へと急いだ。
おれたちはいま、とある商店の前まで来ている。おれ達というのは、おれと吉音。それに加えて、大江戸探偵団の三人組だ。
吉音「あれだよね、想ちゃんがいっていた越後屋の屋台って」
吉音の見ている先には、隊焼きの屋台が一軒、店を出している。その屋台の正面にある店舗もたい焼き屋で、逢岡さんに苦情を申し立てたのは、その店舗の主だった。
つばめ「くんくん……美味しそうな匂いですね~」
吉音「うんうん、だよね~。さっきからお腹ぐーぐーだよ」
悠「コラコラ、そこの二匹。そっちじゃなくて、こっちだろ」
屋台から漂ってくる甘く芳ばしい匂いに引きよせられそうな二人の首根っこを掴んで、方向転換させる。
吉音「あーぅー……」
悠「平和、信乃。つばめの面倒をちゃんと見て……って、おいおいおい……」
信乃「私、チョコレートがいいです……」
平和「私はやっぱり小倉あん……うへへー」
両手でつばめと吉音の襟首を引っ張っておきつつ横を見やると、平和と信乃も誘惑に負けかけていた。
悠「どいつもこいつも……そんなにたい焼きが食べたいんなら、あっちのお店で話しを聞いたあとに買えばいいだろ」
吉音「あっ、そか。あっちのお店も、たい焼き屋さんだったんだよね」
悠「あー……そうだよ。自分のたい焼き屋の前に同じたい焼き屋の屋台を出されて困ってる……って苦情だっただろ」
吉音「……うん、覚えてたよ」
悠「いや、忘れてただろ……まぁいいや。とにかくほら、さっさと行くぞ」
平和「屋台に寄ってからでは駄目でござるか?」
悠「……あー、好きにしていいぞ。平和たちを連れていく必要は別にないからな」
平和「あっ、それはないでござる!拙者たちもついてくでござるーっ!天国、つばめ!道草食ってないで、いくでござるよ!」
信乃「うわわっ」
つばめ「は~い、いきましょ~」
平和は両手で信乃とつばめの手を取って、屋台正面のたい焼き屋へと走っていく。野次馬根性は、甘味より優先されるようだった。
ーとあるたい焼き屋ー
商人A「あなたたちがお奉行様のつかいのかたで?また随分と大勢ですね」
悠「いや、半分以上はオマケなんですが……すいません」
商人A「あっ、そんなことより、なんとかしてくれましたか?」
悠「……はい?」
首を傾げたおれに、店主はぐっとにじり寄ってくる。
商人A「だから、うちの真ん前で営業妨害してる屋台ですよ。もう撤去してくれたんですよね?」
悠「いや……先にお話しをうかがってから……」
商人A「話しなら、もうしてますよ!!お奉行様から聞いてないんですか!?」
さらにぐぐっとにじり寄られた。
悠「いや、聞いてるけど……」
商人A「だったら、こんなところで油売ってないで、さっさと撤去しちゃってくださいよ!!」
さらにぐぐぐっと躙り寄られる。
悠「チッ……あのですね……そうする前に、もう少し詳しいお話しを聞かせていただこうと……」
商人A「詳しくもなにもないよ!あの屋台はね、越後屋がうちを潰そうとして送り込んできた手先なんだよ!!」
ぐぐぐぐっと躙り寄って来た店主の言葉に素早く反応したのは、平和だった。
平和「手先!?悪の手先でござるか!?」
商人A「そうだよ!うちの店の真ん前で、うちより安く売るもんだから、うちは商売あがったりだっ!」
平和「つまり、越後屋さんが悪の首領なんでござるねっ!」
商人A「その通り!あの屋台が邪魔するようになったのは、越後屋からの共同経営の打診を断ってすぐだ」
信乃「ソレは確かに、越後屋様が怪しいぜっ」
つばめ「そういうことでしたら、のんびりお話ししている場合じゃありませんね」
悠「おいおい、どうするつもりだよ?」
信乃「そんなの決まってるぜ!」
平和「悪の首領を倒すでござるよーっ!」
つばめ「お~っ」
悠「おい、勝手なことをする……おいっ?!」
三人は勝手に結論を出すと、おれに止める暇を与えてもくれずに店を飛び出していった。
吉音「悠、追いかけた方が良くない?」
悠「おれも今そう思ってたとこころだよ」
越後屋絡みとなるとただでさえ面倒そうなのに、あの三人にひっかきまわされたら、さらに悪化しそうだ。そうなる前に、今度こそしっかりと首根っこを押さえてやらないと!
商人A「なんでもいいから、さっさと表の屋台を立ち退かせてくれよ」
悠「ああもう、わかったよ!また後で来るからアンタも勝手な真似すんなよ!!」
商人A「や、屋台に殴りこみなんかしないよ。そんなことしたら、越後屋の思うつぼだからな」
悠「そうしてくれ」
吉音「悠、早く早くっ」
悠「ああ、じゃあ、失礼します」
商人A「ええ、なるったけ速く頼みますよ」
また敬語に戻った店主に会釈すると、おれは焦った顔の吉音に引っ張られる形で、越後屋へと急いだ。