ｰ新宿:小鳥遊堂(ほぼ修理)ｰ

朱金｢なんだそんな話をしてたやつがいるのか……チッ、大っぴらにすんなっていってんのによ｣

悠「で、アンタはなんで当たり前のようにここで茶を飲んでるんだ。」

朱金「出典許可申請……承認、シュッテンキョカシンセイ……ショウニン。あんなクソつまらねぇしごとなんてやってられっかってんだチクショーメ!」

悠「チクショーメて……」

小鳥遊堂をあけるなりやってきた朱金は、いつもよりさらに荒ぶっていらっしゃった。ちなみに吉音は、例の御前試合の件で打ち合わせがあるとかで、途中で別れてきている。今日はおれひとりだ。

朱金「オレはハンコつきマシンじゃねーぞ。どいつもこいつもおんなじような申請ばっかり出しやがって。」

悠「それだけ盛り上がってるってことだろ。別にいいじゃないか。それより警備の方が大変なんじゃないか?大勢で刀を振りまわすイベントなんて管理するのは難しいだろ」

朱金「そっちの方はなんとでもにるさ。バクチだって勝手にやってりゃいいんだよ。ただ面倒なのが八百長だ」

悠「八百長……確かに賭博には絡んできそうなネタだけど」

朱金「御前試合は真剣勝負なんだよ。そこにつまんねぇこと持ち込んでくんなよな」

悠「でも輝はなんでもアリだっていってたぞ」

朱金「自分が勝つための不意打ちやらなんやらはいくらでもやりゃいいさ。だが八百長の目的は大概金稼ぎだし、儲かるのは見てるだけの連中だからな……つってもまぁ、そんな外野に振り回されてるようじゃ、優勝なんてメはこれっぽっちもねぇんだが」

悠「真の強さはいかなる時にも揺らぐものではない……か」

朱金「あんまりいいたかねぇが、外からやってくるお偉方の目もあるしな。それなりに仕事はしなきゃなんねぇ」

悠「……じゃあなんでここで油売ってんだよ」

朱金「気晴らしにきたに決まってんだろ?店主が客にガタガタいうなよ」

悠「へいへい……」

さて、そろそろ来るころかな。

真留「やっぱりここにいましたね、遠山様っ!」

朱金「おう。お迎えご苦労さん。」

小さな身体をめいっぱい大きく見せて、のっしのっしと真留がやってきた。対する朱金はいつものとおり、泰然自若としたものである…。

真留「まーなんて言い草ですかっ!この忙しい時期に!小鳥遊さんも、遠山様がサボりに来たら、遠慮なく通報していただいても結構なんですからね。」

悠「ははは、真留はいつも仕事熱心だな。考えておくよ」

真留「もう。小鳥遊さんも甘いんですから……」

朱金「オレが無理やり押しかけたんだよ、そのくらいにしてやれよ。んじゃ仕事に戻るとすっか。また来るぜ」

悠「出来れば仕事が終わってからゆっくりとね」

朱金「ああー……んー……あはははは」

そんな曖昧に濁した返事を置いて、朱金は真留に引っ張られて奉行所の方へと歩いていった。

悠「やれやれ……おっ?」

寅「よう。」

悠「よう、お前って御前試合出るのか?」

寅「こっちが聞こうとした質問すんな」

悠「おれは出ないよ。稼ぎ時らしいし、店を頑張るよ」

寅「……そうか、俺は出るぜ。真っ先にお前を狙うから覚悟しとけ」

悠「出ないってんだろ」

寅「ふん、お前絶対に出るはめになる。そういう定めなんだよ」

悠「妙な事をいうな。」

寅「いいや、賭けてもいいお前は絶対に出る羽目になるとな。じゃあな」

悠「って、それをいいに来ただけかよ……」

それにしてもこの学園、ひっきりなしにいろいろと問題が起こるものだ。

こういう荒波が生徒を鍛え、どんな状況にも対応できるエリートを生み出していくくんだろうなぁ……。