ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー大江戸学園:教室ー
悠「で、その乱取りってのは何人くらいが参加するんだ?まさか十万人全員ってわけじゃないだろうし」
由真「だから私は参加するつもりはないって言ったでしょ。精々数百人ってところよ」
悠「数百人……」
学園の規模からすれば少なく感じる数字だが、それだけ全員が一斉に戦うとなれば相当なものだ。言ってしまえば戦争規模……。
輝「おいらも参加しないよ」
悠「まぁ輝は……腕自慢ってタイプでもないしな」
輝「チッチッチ。そういうわけじゃないんだよ、これがなんと!輝さんは、御前試合の実況アナウンサーに選抜されてしまったのですよ!」
悠「なんだって……!いったい誰だそんな暴挙に出たヤツは!」
輝「ちょっ、それどういう意味さ!」
由真「言葉通りの意味に決まってんでしょ。仮に盛り上がったとしても、収集つかなくなっても知らないんだから」
輝「正式に執行部から要請があったんだからね。なんと言われたって引き下がらないからね!」
由真「はいはい。精々退学処分とかにならないようにしなさいよ」
輝「逆に天下の瓦版屋、比良賀輝ここにありと知らしめてくれようぞ!あっはっはっはぁ!」
あれこれ小言を口にはしているけど、由真もそれなりには高揚しているらしい。熱気に当てられてきたのかな、なんとなくおれまで胸騒ぎがしてきたじゃないか。
ー日本橋:大通りー
輝や由真たちと別れ、校舎の外に出た。するとそこは今朝までの静けさがウソのように、なにやら道の両脇で場所取り合戦が始まっていた。
あれが由真のいっていた屋台の設置予定地なんだろう。
悠「ほんとににぎわってるんだな。ここの生徒たちのたくましさには頭が下がるよ」
吉音「んー、そうだね」
悠「しかし数百人での問答無用バトルなんて、TV番組でもやらないんじゃないか?」
吉音「すごいよねぇ」
悠「……なんだよ、元気ないなぁ。普段の吉音ならもっとはしゃいぎ回ってるんじゃないのか?」
吉音「うーん……。」
思えば教室で雑談しているときから、吉音はどこかふさぎがちだった。それってやっぱり、一騎打ちの方の御前試合のことなんだろうか。
悠「徳河さん……詠美さんはまず間違いなく出るんだろうけど……やっぱり相手は、吉音になるのか?」
吉音「うん。もうそういう風にいわれたよ。叔父さん達はあたしのこと、当然知ってるからね。この島から逃げるわけにもいかないし。あたしは詠美ちゃんに将軍になってほしいんだけどなぁ……」
なるほど、否応なしに徳河との繋がりを思い出さられるから、いつものように乗り切れないのか。それについてはおが口を出せるようなことでもないからな、なんとも……。
悠「……」
吉音「あっ、でもでもね、そういうのとは関係なくて、今年の空気はちょっと違った感じがするよ」
悠「空気?どう違うんだ?」
おれは今回が初めてだし、比べようがない。
吉音「なんかね、いつもはわー!って感じなんだけど、今年はうおー!って感じなの。」
悠「なるほどな。よく分からん」
吉音「う~ん、あたしにもよくわからない。でも今まで晴れてたのが曇ってるような気がするの」
悠「空気が曇っている、か……」
こういう吉音の野性的な部分は、これでなかなかに信用できる。とりあえず、おれも周囲の喧騒へと耳を傾けてみよう。
チンピラC「よう、お前今年は誰に賭けるよ」
チンピラD「おいおい大通りで声がでけぇぞ。どこを八丁堀がウロついてるかわかりゃしねぇのに」
チンピラC「だぁいじょうぶだって。将軍様は行方不明だし、天狗党とかいうヤツらが暴れまわっていたし。今の幕府や町方にゃ、こんなところまで取り締まってる余裕なんざねぇよ」
チンピラD「それもそうか。第一喋るだけならしょっ引かれたりするこたねーだろうしな」
む……堂々往来で賭けの話しか。彼らの会話内容から、将軍様……吉彦さんがいた頃には、もっと厳しい取り締まりがあったんだろう。確かに天狗党の事件からこちら、あまり治安が良くなっている印象が無い。目安箱にも、些細なものが多いとはいえキリなく投書が来てるし。吉彦さんの失踪がここまで影を落としているのか。
その件についても未解決のままだし、いろんな事情が絡んで来てるなぁ……。
吉音「そんなことに関係なく、出る人には思いっきり頑張ってほしいよね!」
吉音の言葉に、大いに同意するのだった。
悠「で、その乱取りってのは何人くらいが参加するんだ?まさか十万人全員ってわけじゃないだろうし」
由真「だから私は参加するつもりはないって言ったでしょ。精々数百人ってところよ」
悠「数百人……」
学園の規模からすれば少なく感じる数字だが、それだけ全員が一斉に戦うとなれば相当なものだ。言ってしまえば戦争規模……。
輝「おいらも参加しないよ」
悠「まぁ輝は……腕自慢ってタイプでもないしな」
輝「チッチッチ。そういうわけじゃないんだよ、これがなんと!輝さんは、御前試合の実況アナウンサーに選抜されてしまったのですよ!」
悠「なんだって……!いったい誰だそんな暴挙に出たヤツは!」
輝「ちょっ、それどういう意味さ!」
由真「言葉通りの意味に決まってんでしょ。仮に盛り上がったとしても、収集つかなくなっても知らないんだから」
輝「正式に執行部から要請があったんだからね。なんと言われたって引き下がらないからね!」
由真「はいはい。精々退学処分とかにならないようにしなさいよ」
輝「逆に天下の瓦版屋、比良賀輝ここにありと知らしめてくれようぞ!あっはっはっはぁ!」
あれこれ小言を口にはしているけど、由真もそれなりには高揚しているらしい。熱気に当てられてきたのかな、なんとなくおれまで胸騒ぎがしてきたじゃないか。
ー日本橋:大通りー
輝や由真たちと別れ、校舎の外に出た。するとそこは今朝までの静けさがウソのように、なにやら道の両脇で場所取り合戦が始まっていた。
あれが由真のいっていた屋台の設置予定地なんだろう。
悠「ほんとににぎわってるんだな。ここの生徒たちのたくましさには頭が下がるよ」
吉音「んー、そうだね」
悠「しかし数百人での問答無用バトルなんて、TV番組でもやらないんじゃないか?」
吉音「すごいよねぇ」
悠「……なんだよ、元気ないなぁ。普段の吉音ならもっとはしゃいぎ回ってるんじゃないのか?」
吉音「うーん……。」
思えば教室で雑談しているときから、吉音はどこかふさぎがちだった。それってやっぱり、一騎打ちの方の御前試合のことなんだろうか。
悠「徳河さん……詠美さんはまず間違いなく出るんだろうけど……やっぱり相手は、吉音になるのか?」
吉音「うん。もうそういう風にいわれたよ。叔父さん達はあたしのこと、当然知ってるからね。この島から逃げるわけにもいかないし。あたしは詠美ちゃんに将軍になってほしいんだけどなぁ……」
なるほど、否応なしに徳河との繋がりを思い出さられるから、いつものように乗り切れないのか。それについてはおが口を出せるようなことでもないからな、なんとも……。
悠「……」
吉音「あっ、でもでもね、そういうのとは関係なくて、今年の空気はちょっと違った感じがするよ」
悠「空気?どう違うんだ?」
おれは今回が初めてだし、比べようがない。
吉音「なんかね、いつもはわー!って感じなんだけど、今年はうおー!って感じなの。」
悠「なるほどな。よく分からん」
吉音「う~ん、あたしにもよくわからない。でも今まで晴れてたのが曇ってるような気がするの」
悠「空気が曇っている、か……」
こういう吉音の野性的な部分は、これでなかなかに信用できる。とりあえず、おれも周囲の喧騒へと耳を傾けてみよう。
チンピラC「よう、お前今年は誰に賭けるよ」
チンピラD「おいおい大通りで声がでけぇぞ。どこを八丁堀がウロついてるかわかりゃしねぇのに」
チンピラC「だぁいじょうぶだって。将軍様は行方不明だし、天狗党とかいうヤツらが暴れまわっていたし。今の幕府や町方にゃ、こんなところまで取り締まってる余裕なんざねぇよ」
チンピラD「それもそうか。第一喋るだけならしょっ引かれたりするこたねーだろうしな」
む……堂々往来で賭けの話しか。彼らの会話内容から、将軍様……吉彦さんがいた頃には、もっと厳しい取り締まりがあったんだろう。確かに天狗党の事件からこちら、あまり治安が良くなっている印象が無い。目安箱にも、些細なものが多いとはいえキリなく投書が来てるし。吉彦さんの失踪がここまで影を落としているのか。
その件についても未解決のままだし、いろんな事情が絡んで来てるなぁ……。
吉音「そんなことに関係なく、出る人には思いっきり頑張ってほしいよね!」
吉音の言葉に、大いに同意するのだった。