ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー長屋通りー

悠「……そうか、うんまあ、怪我しない程度に頑張れよ。応援してるぞ」

平和「むむっ!そうやって油断させておいて、自分たちで先に掘り当てちゃうつもりでござるね!」

悠「どうしてそうなるんだよ……って聞いてない?」

平和「天国、つばめ!こうしてはいられないでござる!いますぐ穴掘り開始でござる~っ!」

信乃「えっ、でも……まだ水脈の位置が……」

つばめ「天国、大丈夫ですよ。ニホンは火山大国だから、どこを掘っても、そのうちお湯が出てきます」

信乃「あっ、それもそうですね」

つばめ「というわけで~、さあナイゼン。掘削開始ですよ~」

ナイゼン『カメ~』

信乃「……よおっし、私も。キラ、やるぜ!」

キラ『チチーッ』

何をどう納得したらそうなるのかわからないけど、三人は早速その場で穴を掘り始めている。

ナイゼンが大きな前足をシャベルに、旋風をまとったキラがドリルになって奮闘中だ。

平和「ふれっふれ~、がんばれがんばれ~っ」

マミヤ『ミッ、ミッ、フミ~~』

さして、平和とマミヤは絶賛応援中だ。

悠「ねえ、悠」

情熱に燃えている三人を眺めていると、吉音に横から袖を引かれた。

悠「なんだ?」

吉音「温泉、本当に出てくるのかな?」

悠「出てきたら、泥も疲れも落とせて最高だろうな」

吉音「うん。温泉が出たら、一緒に入ろうねっ」

悠「……温泉、本当に出るといいな」

出ないと思うけど。





ー新宿:小鳥遊堂(半修理)ー

はな「ありがとうございましたです」

悠「ありがとうございます」

珍しくやって来た一見の客を見送り、ひと息吐いてから片づけを始める。

吉音「あのお客さん、また来てくれるかな?」

悠「さて、どうだろうな」

来てくれるに越したことはないが、そこら辺は神のみぞ知るというか。まあ、来てくれたらいいな、くらいに割りきっておくべきだろう。そんなことを考えながら片づけを終えると、吉音が畳みの上に、ぐて~っと横たわった。

吉音「ねえ悠、なんか食べていい?」

悠「いいわけあるか」

吉音「えぇ~、ケチ~。今日はお客さんが来たんだからいいじゃん」

悠「客が来るたびにお前になんか食わせてたら、儲けが出ないどころか赤字になるだろうが」

吉音「そこをなんとか」

悠「駄目だっていったら駄目だ」

唯「あはっ♪じゃぁボクがお団子をおごっちゃおうかな」

悠「……唯ちゃん?」

声のした方に目をやると、にこにこ笑って店の中を覗き込んでいる唯ちゃんの姿があった。

吉音「おごってくれるって、ホントに!?」

唯「うん。ひとりでお茶するのもさびしいしね。」

悠「ちょっと待ってくれ。そんなふうに新を甘やかすのはよくない」

吉音「悠は黙ってて!」

悠「あー?」

吉音「あのねゆいにゃん、あたし、みたらしと磯部と餡子とゴマと――」

唯「えっと……できれば三本くらいまでにしてもらえると助かるんだけど」

吉音の勢いに驚いたのか、唯ちゃんが笑顔をひきつらせて注文を止めにかかった。
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