ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー吉音の部屋ー
吉音「う……っ、うう……痛たたた……」
悠「大丈夫か、吉音」
吉音「うう……お腹が痛いよう……」
悠「鬼の霍乱(かくらん)ってのはあるもんだな」
蚊のように細い声で呼び出されたから、何事かと思ってきてみれば……吉音が青い顔でぐったりと横たわっていた。
吉音「悠ぅ……」
悠「ああ、すまん。でも、お前が腹をこわすなんてめずらしいじゃないか。食あたりかな、それともなにか悪い病気かな。まさか小鳥遊堂のものが原因じゃないだろうけど……」
吉音「びょ、病気?あたし死んじゃうのっ?」
悠「一足飛びにそこまでいくなっ。あんまりひどいようならかなうさんにでも見てもらおう」
吉音「う……うん。悠……あたし死んじゃったら……」
悠「演技でもないこといって目を潤ますなっ。食あたりかもしれないじゃないか。ちなみに昨日なに食べた?」
吉音「昨日……?」
悠「ああ、できるだけ細かく」
吉音「ええとね。煮込みうどんとひやしたぬき……のそばとうどんとデザートの大福と小倉サンドとそれから……」
悠「あー?」
吉音「おいなりさんとたらことおかかとしゃけおにぎりと……クリームあんみつとあべかわもちと三色団子……きつねうどんとやきうどん、ハムサンドとカレーピラフと抹茶パフェと特大焼きプリン。だったかなぁ」
悠「それだけ食えば腹も痛くなるわっ!いったいいつの間にそんな食ったんだ。……おいちょっと待て。今朝の朝食は焼き鮭と納豆だったっていってたよな。それに昨日の夕食は炊き込みご飯に天ぷらだったはずだ。おれと一緒に食べた」
吉音「あ、それは悠知ってるからいいかなって。いまのはほかで食べた分」
悠「…………」
おれは答える気力もなくその場につっぷした。
吉音「悠?」
悠「かなうさんのところいってくる」
吉音「え、えっ。やっぱりあたし、悪い病気なのっ?」
悠「んなわけあるかっ!食いすぎだ、食いすぎっ!かなうさんによく効く胃薬か、でなきゃ下剤をもらってきてやる。それとも浣腸でもするか?」
吉音「ひいいいっ。それだけはぁっ、悠のヘンタイ!!」
悠「じゃかましいわっ!そんな減らず口たたけるうちはまだまだ十分元気なんだよっ!!あー、めんどくせぇし心配して損した。大人しく寝てろ!」
おれは吉音を布団へ押し戻して部屋から出ようとした。
吉音「ゆ、悠……」
悠「あー?」
吉音「はやく、帰ってきてね」
悠「…………急にしおらしい声出すな、バカ。すぐ帰るから大人しくしてろ」
おれはかなうさんの養成所への道を急いだ。放っておいても死にそうにはないが、まあ可哀想ではあるからな。
ーかなう養成所ー
おれがかなうさんの養成所の入り口にたどり着いたところで、中から談笑する声が聞こえてきた。
「はっはっは、まあそういうわけです。ぜひご同道願えれば……」
あれ、誰か来ているのかな。
かなう「私をダシに使おうなんざ、ふたつ名が泣くんじゃないのか?」
相手をしているのはかなうさんの声だ。もうひとりは……誰だろう?
「問題はそのふたつ名ですよ。ご用の向きには役にも立ちますが、普段はかえって不便なことも多い」
かなう「そりゃそうだろう。悪党ならずともお前さんの名前を聞いたら小便をちびるってものだ」
「そんなわけで。どうかひとつよろしくおねがいします。」
かなうさんにずいぶんずけずけ言われてるのに、腰の低い人だな。おれはこのままあがりこんだものか迷って、戸口でふたりの会話を立ち聞きする格好になってしまった。
吉音「う……っ、うう……痛たたた……」
悠「大丈夫か、吉音」
吉音「うう……お腹が痛いよう……」
悠「鬼の霍乱(かくらん)ってのはあるもんだな」
蚊のように細い声で呼び出されたから、何事かと思ってきてみれば……吉音が青い顔でぐったりと横たわっていた。
吉音「悠ぅ……」
悠「ああ、すまん。でも、お前が腹をこわすなんてめずらしいじゃないか。食あたりかな、それともなにか悪い病気かな。まさか小鳥遊堂のものが原因じゃないだろうけど……」
吉音「びょ、病気?あたし死んじゃうのっ?」
悠「一足飛びにそこまでいくなっ。あんまりひどいようならかなうさんにでも見てもらおう」
吉音「う……うん。悠……あたし死んじゃったら……」
悠「演技でもないこといって目を潤ますなっ。食あたりかもしれないじゃないか。ちなみに昨日なに食べた?」
吉音「昨日……?」
悠「ああ、できるだけ細かく」
吉音「ええとね。煮込みうどんとひやしたぬき……のそばとうどんとデザートの大福と小倉サンドとそれから……」
悠「あー?」
吉音「おいなりさんとたらことおかかとしゃけおにぎりと……クリームあんみつとあべかわもちと三色団子……きつねうどんとやきうどん、ハムサンドとカレーピラフと抹茶パフェと特大焼きプリン。だったかなぁ」
悠「それだけ食えば腹も痛くなるわっ!いったいいつの間にそんな食ったんだ。……おいちょっと待て。今朝の朝食は焼き鮭と納豆だったっていってたよな。それに昨日の夕食は炊き込みご飯に天ぷらだったはずだ。おれと一緒に食べた」
吉音「あ、それは悠知ってるからいいかなって。いまのはほかで食べた分」
悠「…………」
おれは答える気力もなくその場につっぷした。
吉音「悠?」
悠「かなうさんのところいってくる」
吉音「え、えっ。やっぱりあたし、悪い病気なのっ?」
悠「んなわけあるかっ!食いすぎだ、食いすぎっ!かなうさんによく効く胃薬か、でなきゃ下剤をもらってきてやる。それとも浣腸でもするか?」
吉音「ひいいいっ。それだけはぁっ、悠のヘンタイ!!」
悠「じゃかましいわっ!そんな減らず口たたけるうちはまだまだ十分元気なんだよっ!!あー、めんどくせぇし心配して損した。大人しく寝てろ!」
おれは吉音を布団へ押し戻して部屋から出ようとした。
吉音「ゆ、悠……」
悠「あー?」
吉音「はやく、帰ってきてね」
悠「…………急にしおらしい声出すな、バカ。すぐ帰るから大人しくしてろ」
おれはかなうさんの養成所への道を急いだ。放っておいても死にそうにはないが、まあ可哀想ではあるからな。
ーかなう養成所ー
おれがかなうさんの養成所の入り口にたどり着いたところで、中から談笑する声が聞こえてきた。
「はっはっは、まあそういうわけです。ぜひご同道願えれば……」
あれ、誰か来ているのかな。
かなう「私をダシに使おうなんざ、ふたつ名が泣くんじゃないのか?」
相手をしているのはかなうさんの声だ。もうひとりは……誰だろう?
「問題はそのふたつ名ですよ。ご用の向きには役にも立ちますが、普段はかえって不便なことも多い」
かなう「そりゃそうだろう。悪党ならずともお前さんの名前を聞いたら小便をちびるってものだ」
「そんなわけで。どうかひとつよろしくおねがいします。」
かなうさんにずいぶんずけずけ言われてるのに、腰の低い人だな。おれはこのままあがりこんだものか迷って、戸口でふたりの会話を立ち聞きする格好になってしまった。