ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー詠美の屋敷ー
悠「ん……これは?」
足元になにかある。拾って手に取って見ると、レースのついた薄いクリーム色のショーツ。派手でなく、されど地味でもなく実に可愛らしい下着ではないか、いやー、下着を拾ってしまうなんて……これは非常にまずいんじゃないでしょうか。
詠美「だっ、駄目ぇぇっ!」
悠「わっと……!」
詠美「はぁっ、はぁっ、はぁっ……み、見たわね」
悠「……み、見てますん」
詠美「どっちよ!」
悠「見ました」
詠美「あぁもう……もうっ!どうしてこんな……もぉっ!!」
悠「すいません!なんかもう本当に、すみません!」
詠美「だから別に、あなたが悪いわけでは……ううぅぅ……はぁ。もういいわ」
これまで全力で取り乱していた徳河さんが、がっくりと脱力してしまった……。
悠「あの……」
詠美「そうよ。私は目が悪くて、普段はコンタクトレンズを入れているの。自室の中では洋服にも着替えるわ。下着だって洋物よ。ごめんなさい」
悠「いや……別に気にしないというかその……なんで、そんなことを謝ってるんです?」
詠美「幻滅したでしょう?」
悠「よく意味が分からないんだけど……幻滅はしてないですよ。逆に安心したなんていったら失礼かもしれませんが」
詠美「安心?どうして?」
悠「徳河詠美さんって天才肌で、あんまり他人を寄せ付けない感じの人かと思ってました。でも本当は、普通におれたちと同じ生徒だったわけですから」
それでもカリスマ性は揺るがないけれど。
詠美「……その紙袋の中身は見た?」
悠「いえ……長谷河さんからも見るなら許可を取ってからにしろと。っか、さすがに他人の物を勝手に開けたりはしませんよ。」
人にもよるけど。
詠美「ひらいて見ても、いいわよ」
悠「それじゃあ、遠慮うなく」
徳河さんの方から切り出してくれるとは。手に持ったままだった包みを開いてみる。中から出てきたのは音楽ディスクらしい薄い箱型のケース。レーベルを見てみると……ああ、有名なメタルアーティストだな。
詠美「クラシックでなくてごめんなさい。雅楽でなくてごめんなさい。本当の私は皆の手本になんて到底なれない、俗物なのよ。」
こ、これは困った。どうやら徳河さん、一度落ち込むと立ち直りに時間がかかるタイプらしい。見た目からものすごいき真面目そうだもんな……。
悠「確かに、もしかすると徳河さんを信奉というか、幻想を持ってる人はいるかもしれません。でも逆に、親しみやすいところを知ってより好感度をあげる人もいますよ」
詠美「お世辞はいいわ。あなたの見たのが本当の私なのよ」
悠「お世辞じゃないですって。少なくともおれはそうですから」
詠美「…………本当?」
悠「もちろんです。」
容易には信用できないのか、徳河さんは触れれば切れそうな視線でじっと見つめてくる。針のむしろとはこのことか。っかよく考えるとおれは女の子の部屋に(徳河さんだって女の子だ!)ふたりきりなわけで。可能ならもっと別な感じでドキドキしたかったんだけど……。
詠美「いいわ。わかった。あなたの言葉を信じることにする。でも今日ここで見たことは一切他言無用よ。いいわね。」
悠「それは、はい。もともと言いふらすような事でもないですし」
ひと言でも口にしたら、おれの命まで危なくなりそうだもんな。あらゆる方面から。
詠美「……」
悠「それじゃ、その要件も果たしたので失礼させていただこうかと……」
詠美「ええ、そうね。長いさせてしまうとまたつまらない詮索を受けそうだし。ありがとう。取り乱したりしてごめんなさい」
悠「いやいや……気にしてませんから。ホント」
こういうとアレだけど、秘密を握っているというのは恐ろしい反面、嬉しくもあるし。親しみを感じるってところも、断じて嘘じゃないしな。それを知らないふりしなきゃならないのは、少しだけ残念だ。
悠「ん……これは?」
足元になにかある。拾って手に取って見ると、レースのついた薄いクリーム色のショーツ。派手でなく、されど地味でもなく実に可愛らしい下着ではないか、いやー、下着を拾ってしまうなんて……これは非常にまずいんじゃないでしょうか。
詠美「だっ、駄目ぇぇっ!」
悠「わっと……!」
詠美「はぁっ、はぁっ、はぁっ……み、見たわね」
悠「……み、見てますん」
詠美「どっちよ!」
悠「見ました」
詠美「あぁもう……もうっ!どうしてこんな……もぉっ!!」
悠「すいません!なんかもう本当に、すみません!」
詠美「だから別に、あなたが悪いわけでは……ううぅぅ……はぁ。もういいわ」
これまで全力で取り乱していた徳河さんが、がっくりと脱力してしまった……。
悠「あの……」
詠美「そうよ。私は目が悪くて、普段はコンタクトレンズを入れているの。自室の中では洋服にも着替えるわ。下着だって洋物よ。ごめんなさい」
悠「いや……別に気にしないというかその……なんで、そんなことを謝ってるんです?」
詠美「幻滅したでしょう?」
悠「よく意味が分からないんだけど……幻滅はしてないですよ。逆に安心したなんていったら失礼かもしれませんが」
詠美「安心?どうして?」
悠「徳河詠美さんって天才肌で、あんまり他人を寄せ付けない感じの人かと思ってました。でも本当は、普通におれたちと同じ生徒だったわけですから」
それでもカリスマ性は揺るがないけれど。
詠美「……その紙袋の中身は見た?」
悠「いえ……長谷河さんからも見るなら許可を取ってからにしろと。っか、さすがに他人の物を勝手に開けたりはしませんよ。」
人にもよるけど。
詠美「ひらいて見ても、いいわよ」
悠「それじゃあ、遠慮うなく」
徳河さんの方から切り出してくれるとは。手に持ったままだった包みを開いてみる。中から出てきたのは音楽ディスクらしい薄い箱型のケース。レーベルを見てみると……ああ、有名なメタルアーティストだな。
詠美「クラシックでなくてごめんなさい。雅楽でなくてごめんなさい。本当の私は皆の手本になんて到底なれない、俗物なのよ。」
こ、これは困った。どうやら徳河さん、一度落ち込むと立ち直りに時間がかかるタイプらしい。見た目からものすごいき真面目そうだもんな……。
悠「確かに、もしかすると徳河さんを信奉というか、幻想を持ってる人はいるかもしれません。でも逆に、親しみやすいところを知ってより好感度をあげる人もいますよ」
詠美「お世辞はいいわ。あなたの見たのが本当の私なのよ」
悠「お世辞じゃないですって。少なくともおれはそうですから」
詠美「…………本当?」
悠「もちろんです。」
容易には信用できないのか、徳河さんは触れれば切れそうな視線でじっと見つめてくる。針のむしろとはこのことか。っかよく考えるとおれは女の子の部屋に(徳河さんだって女の子だ!)ふたりきりなわけで。可能ならもっと別な感じでドキドキしたかったんだけど……。
詠美「いいわ。わかった。あなたの言葉を信じることにする。でも今日ここで見たことは一切他言無用よ。いいわね。」
悠「それは、はい。もともと言いふらすような事でもないですし」
ひと言でも口にしたら、おれの命まで危なくなりそうだもんな。あらゆる方面から。
詠美「……」
悠「それじゃ、その要件も果たしたので失礼させていただこうかと……」
詠美「ええ、そうね。長いさせてしまうとまたつまらない詮索を受けそうだし。ありがとう。取り乱したりしてごめんなさい」
悠「いやいや……気にしてませんから。ホント」
こういうとアレだけど、秘密を握っているというのは恐ろしい反面、嬉しくもあるし。親しみを感じるってところも、断じて嘘じゃないしな。それを知らないふりしなきゃならないのは、少しだけ残念だ。