ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:小鳥遊堂(応急処置)ー
鷹屋「とりあえずはこれでちゃんと店を開けますよ」
悠「すいません、急ピッチに直してもらって」
鷹屋「いいですよ。小鳥遊さんだってお店のしごとあるでしょうし。」
悠「助かります。料金は左近からいくらでもぶんどってくれていいんで」
左近「酷いなぁ」
想「そのくらいは当然でしょう」
左近「こいつはぁまいったなぁ」
鷹屋「ははっ、そんじゃ失礼します」
悠「お疲れ様です」
想「それでは私たちも失礼します。なにかあればすぐに連絡をください」
左近「私もそうですが、小鳥遊さんも夜道には気をつけてくださいよ」
悠「妙なフラグ残して去ってくな!ったく……」
往水「おっ、今日はちゃんと営業中ですね」
吉音「いくみん、いらっしゃ~い」
往水「最近、臨時休業ばっかりで困ってたんですよ。昨晩なんか屋根が崩れてたし」
悠「アンタ……知ってて無視してたのか?普通どっかに連絡入れるとかしないか?」
往水「……」
悠「……」
往水「もっとしっかり仕事してもらいませんと」
悠「このアマ……。っか、困ってるのはうせ、他所の店じゃツケが効かないからだろ」
往水「分かってるんなら、お店開けててくださいよ。立ち寄る場所が無くて困る」
悠「困るのは中村さんだろ。立ちより場所にするなら隣のねずみやの方がいいんじゃないですか?」
往水「あっちのお嬢さん方がアタシの言うことを聞いてくれるんならとっくにそうしてますよ」
悠「また臆面もなく……」
吉音「はい、お待たせしました。お茶とお菓子ですよ~」
往水「あ、こりゃどうも……ははあ、新さんが適当に淹れたお茶に、一番安い干菓子がひとつですか」
悠「ツケを溜めてる人専用のメニューデス」
往水「茶屋ってのも阿漕な商売ですね。客によって出すもの変えるなんて」
なんて文句をいいながらも、中村さんはお茶とお菓子に手を伸ばそうとする。そのとき、吉音がふいに声をあげた。
吉音「あっ、いくみん。マフラーがほつれてるよ!」
往水「え……ありゃ、本当だ」
悠「……」
中村さんは吉音の指摘に、首に巻いている(暑いのに)マフラーの端っこを、ちょいとつまみあげる。そこには、小さなひっかき傷が走っていた。
往水「いま教えてもらうまで気がつきませんでしたよ。いったいどこで引っかけたのやら……」
悠「直しましょうか?」
中村さんはぼやきながらマフラーを外すと、どてらの内側から編み棒を取り出した。
往水「いえいえ、このくらいなら……センリツ。手伝ってくださいよ」
セン『ピョピョーッ』
リツ『ピッピーッ』
意外にも、中村さんは編み物をやりはじめた。
往水「ふふ~ん♪」
鼻歌なんて口ずさみながら、慣れた手つきで編み棒を動かしている。
セン『ピョッ、ピョッ』
リツ『ピッ、ピッ』
中村さんが編み棒を動かすことだけ専念できるよう手伝っているセンとリツの動きも、とても自然だ。
吉音「いくみん、すご~い!編み物ができるんだっ!」
往水「そんな大したものじゃないんですよ。繕いものくらいできないと、節約生活は出来ませんからね」
吉音の賞賛に答えているあいだも、両手は一定のリズムで繊細に動いている。相当手慣れていることが見て取れた。
悠「いやでも、本当にすごいですよ。正直、意外でした」
往水「それは心外ですね。このマフラー、そもそもアタシの手縫いなんですよ」
悠「えっ……そうだったんだ。普通に既製品化かとおもってた」
往水「そこまで褒めるのは、かえって嫌味ってもんですよ」
編み棒のリズムが微妙に鈍ったのは、照れたからだと思う。
鷹屋「とりあえずはこれでちゃんと店を開けますよ」
悠「すいません、急ピッチに直してもらって」
鷹屋「いいですよ。小鳥遊さんだってお店のしごとあるでしょうし。」
悠「助かります。料金は左近からいくらでもぶんどってくれていいんで」
左近「酷いなぁ」
想「そのくらいは当然でしょう」
左近「こいつはぁまいったなぁ」
鷹屋「ははっ、そんじゃ失礼します」
悠「お疲れ様です」
想「それでは私たちも失礼します。なにかあればすぐに連絡をください」
左近「私もそうですが、小鳥遊さんも夜道には気をつけてくださいよ」
悠「妙なフラグ残して去ってくな!ったく……」
往水「おっ、今日はちゃんと営業中ですね」
吉音「いくみん、いらっしゃ~い」
往水「最近、臨時休業ばっかりで困ってたんですよ。昨晩なんか屋根が崩れてたし」
悠「アンタ……知ってて無視してたのか?普通どっかに連絡入れるとかしないか?」
往水「……」
悠「……」
往水「もっとしっかり仕事してもらいませんと」
悠「このアマ……。っか、困ってるのはうせ、他所の店じゃツケが効かないからだろ」
往水「分かってるんなら、お店開けててくださいよ。立ち寄る場所が無くて困る」
悠「困るのは中村さんだろ。立ちより場所にするなら隣のねずみやの方がいいんじゃないですか?」
往水「あっちのお嬢さん方がアタシの言うことを聞いてくれるんならとっくにそうしてますよ」
悠「また臆面もなく……」
吉音「はい、お待たせしました。お茶とお菓子ですよ~」
往水「あ、こりゃどうも……ははあ、新さんが適当に淹れたお茶に、一番安い干菓子がひとつですか」
悠「ツケを溜めてる人専用のメニューデス」
往水「茶屋ってのも阿漕な商売ですね。客によって出すもの変えるなんて」
なんて文句をいいながらも、中村さんはお茶とお菓子に手を伸ばそうとする。そのとき、吉音がふいに声をあげた。
吉音「あっ、いくみん。マフラーがほつれてるよ!」
往水「え……ありゃ、本当だ」
悠「……」
中村さんは吉音の指摘に、首に巻いている(暑いのに)マフラーの端っこを、ちょいとつまみあげる。そこには、小さなひっかき傷が走っていた。
往水「いま教えてもらうまで気がつきませんでしたよ。いったいどこで引っかけたのやら……」
悠「直しましょうか?」
中村さんはぼやきながらマフラーを外すと、どてらの内側から編み棒を取り出した。
往水「いえいえ、このくらいなら……センリツ。手伝ってくださいよ」
セン『ピョピョーッ』
リツ『ピッピーッ』
意外にも、中村さんは編み物をやりはじめた。
往水「ふふ~ん♪」
鼻歌なんて口ずさみながら、慣れた手つきで編み棒を動かしている。
セン『ピョッ、ピョッ』
リツ『ピッ、ピッ』
中村さんが編み棒を動かすことだけ専念できるよう手伝っているセンとリツの動きも、とても自然だ。
吉音「いくみん、すご~い!編み物ができるんだっ!」
往水「そんな大したものじゃないんですよ。繕いものくらいできないと、節約生活は出来ませんからね」
吉音の賞賛に答えているあいだも、両手は一定のリズムで繊細に動いている。相当手慣れていることが見て取れた。
悠「いやでも、本当にすごいですよ。正直、意外でした」
往水「それは心外ですね。このマフラー、そもそもアタシの手縫いなんですよ」
悠「えっ……そうだったんだ。普通に既製品化かとおもってた」
往水「そこまで褒めるのは、かえって嫌味ってもんですよ」
編み棒のリズムが微妙に鈍ったのは、照れたからだと思う。