ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー松永の屋敷ー

鷹丸「どうぞ、こちらへお掛けください。まもなく、松永お嬢様がお見えになります」

悠「和室にデカイテーブルにアンティークチェア……不似合いだな」

左近「普通に聞こえますよ」

女中A「どうぞ、お茶です」

女中B「お茶菓子です」

悠「あ、どうも」

左近「いやぁ、どうもどうも」

悠「相当の金持ちらしいな、お手伝いさんの生徒なんて詠美さんとこ以外で初めて見た」

左近「おやおや、徳河の御嬢さんのご自宅まで足を運ぶほどの仲でしたか。」

悠「ただの荷物運びにいっただけだよ」

左近「ふふっ。」

悠「……ズズっ。」

久秀「お茶の味はいかがかしら?」

悠「っ……」

不意に声をかけられて振り向くと幼い容姿ながら人目を惹き付ける美貌をもったツインテールの女生徒がいた。

久秀「驚かしてしまいましたか?お初にお目にかかりますわね。松永久秀(まつながひさひで)と申しますわ。小鳥遊悠さま、ふふっ。」

悠「え、あ……タカナシユウです」

久秀「はい、存じておりますわ。ふふっ、左近殿、ご苦労様でしたね」

左近「ははは……はぁー。」

久秀「どうですか、お茶菓子はお口にあいまして?」

悠「あー、まぁ……」

久秀「まだ、食べていらっしゃらないようですけど?」

悠「あ、いただきます(あれ、これ……)」

左近「いい味の芋羊羹ですねぇ。」

久秀「でしょう。秀久も色々なお店の物を取り寄せているけど、そのお菓子が一番美味しかったのよ……小鳥遊堂のお菓子。ふふっ」

悠「(やっぱり)それは御贔屓にしていただけて光栄だが……」

久秀「だけど?」

悠「なんでその菓子を売ってるおれが襲われなきゃいけないか説明してもらおうか」

左近「単刀直入ですねぇ」

悠「黒装束程度ならともかく、この馬鹿男には叩き斬られかけたんだからな」

左近「馬鹿男って……」

久秀「ごめんなさい」

悠「あー?」

久秀「乱暴な手段をとったのは謝りますわ。でも、アナタならこうして久秀の試練を越えて来ると思っていたのですよ」

悠「わからないんだけど……」

久秀「アナタの事を気にいった……と言えば分かりやすいかしら。色んな方面から調べて心技体の実力も確認できた……鷹丸から報告を受けたわ。素手で剣魂保持者を倒すなんて素晴らしいわ。」

左近「……ジロ」

鷹丸「……」

久秀「更に付け加えるなら合格ということね」

悠「合格?」

久秀「えぇ、久秀の物になりなさい」

悠「……」

左近「……」

久秀「ふふっ」

悠「は?どういう意味だよ」

久秀「そのままの意味よ。久秀の物になるの。そうすれば、あんな店で居る必要もない。必要な投資は久秀がしてあげるわ」

悠「……つまり引き抜きか?」

久秀「ふふっ、引き抜き……まぁ、とりあえずはそれでいいわね。引き抜きで……。」

悠「ズズッ……こういう理由って知ってたのか左近は?」

左近「まっさかぁ……言ったでしょう私だって何も知らないって」

悠「……」

久秀「断る理由もないでしょう。店は大きくなる、悠の腕は正当な評価をうける、久秀の物になれる」

悠「ズズッ……ふー、話になんないな。」
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