ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:小鳥遊堂ー
おれは立ちあがって、左で腰の刀の柄を逆手に握った。右手は拳を作る。
「左手痛めてたんでは?」
「あぁ、でも、振るうのは無理でも手は動く」
自分でも分かるくらいおかしな構えで前に出た。左近は両手を大きく開いて内側に振るう。夜を切るその手の片方は見えない刃を仕込んでいる。見えず音もしない狂気の刃。見えず聞こえずのステルスに分かってることは二つ。その一、奴は片手でも斬馬刀を振るえる。そしてその二、片手なら直撃をくらっても骨は砕けない(めちゃくちゃ痛くはあるが)。ならば恐れることはないおれは奴のキルゾーンに自ら突入した。そして刀を僅かに抜いた。
「もらったっ……あっ?!」
斜め後ろを蹴って左へと回りこんで奴の一刀を避ける。やつと側面とおれの身体が重なったと同時に肘を横腹に叩きこんだ。肉じゃなく硬いものに当たる感触。シキサイに阻まれたらしいおれは即距離をあける。左近は打たれた衝撃に足が浮いてよたついたがすぐに身を立て直して、おれの正面に向き直った。
「運よく避けたのは流石です。っが……効きませんよ?打撃。」
「へっ……運よくに、効いてないか。本当にそう思うなら、そう思っとくといい。もうすぐ決着はつく」
「へぇー……それは楽しみですねぇ!」
奴はまた大きく両手を開いた。おれもまた同じように左手で刀を抜いてキルゾーンに飛び込んだ。力強く振って見えぬ刃が迫る中、今度は右方に飛んだ。刃があったならおれの胴体に当たっているがかすり傷一つ負わずにキルゾーンから抜けて、奴の胴体に同じように肘をぶち込んだ。やはり肉は捉えられない。硬いものに阻まれたが今度の一撃に左近は倒れた。
「なっ?!」
尻もちをついた拍子に斬馬刀を離したのか地面に落ちてその無骨な姿が現れる。やつは驚いた顔でおれを見上げていった。
「なんで……。ダメージはないのに……それにどうして避けられるんですかい?」
「見えてるんだよ。どっちに持ってるかがな。」
「嘘ですよね?」
ダメージがないのは事実だろう奴はすぐに刀を拾って立ちあがった。
「さぁ、どうかな。っか、次で終わらせるからな。」
さすがに警戒した様子で奴もより慎重に刀を持つ手を選んでいる。だが意味はないおれは見えているんだからな。やつがどっちに刀を仕込んでいるのかがな……。おれは刀を抜いて動かない。待つ、今度は向こうから攻撃させる。その意図に……奴は乗らなかった。
「悪いですけど……私からは出しませんよ。見えてるっていうのなら小鳥遊さんから攻めて来られれるでしょう。」
「怖いのか?」
「えぇ、怖いですよ。そんな弱いものに攻めさせるなんて真似させませんよねぇ?」
「……なら、いい。もう終わらせてやる。」
刀から手を離して前に出た。瞬間、奴は両手を頂点で合わせて縦に刃を振り下ろす。当然見えはしないがスピード、威力とも片手の時より格段に上がっているが関係ない。おれは腰を振った。ただのミドルキック。単純に斬撃が落ちてくるよりも早く奴を横薙ぎに蹴り飛ばしてやった。左近の顔がゆがみながら視界から消えていき、ウチの店の柱にぶつかった。
それで止まらずにおれは更に追い打ちをかける。驚いた顔の左近のまず手を蹴って斬馬刀を弾き飛ばした。腹を蹴りつけた。鳩尾の辺りを狙ったが当然シキサイが居て阻まれる。それでもお構いなしに蹴った。いや、踏みつけたといった方が良い。奴が起き上ろうとしてもそれを無理矢理停止させ踏み続ける。ゴッゴッという音のなかにいつしか何かが軋む音が混じりだす。当然だいくら鎧をつけていても衝撃は通る。何十、何百も同じ場所を蹴りつづけたなら蹴りが通らなくてもシキサイが左近の身体にめり込みだしたのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラっ!!」
「ぐっ……あぁ!ぐぁっ?!」
生身ならぐちゃぐちゃになっていてもおかしくないほど踏みつけの連打を浴びてついに左近は悲鳴をあげる。更に踏み潰しの速度をあげようとしたその時、左近は両手を挙げて叫んだ。シキサイもステルスを解いて姿を現す。
「待った!!参った!参りましたよ!」
「ふぅふぅ……。」
「勘弁してください。私では勝てません。これ以上されたら本当に死んでしまいます。」
「……本当だな。」
「えぇ、本当です。ほら、もうシキサイも外しましたから勘弁してください。」
左近は手をあげたまま立ちあがると、するするとシキサイ離れ降りて地面に着地する。
「……なら、さっさと黒装束どもを帰らせろ。お前には色々と聞きたいことがあるんだからな」
おれは左近を背にして囲んでいる黒装束たちを睨んだ。その隙を見逃さないのが左近、シキサイを軽く蹴ると長い尻尾で斬馬刀を絡め取り引き抜いた。
「言い忘れたが……動くなよ崩れるぞそこ」
「は?」
左近が背にしていた柱がメキメキと音を立てて折れる。その結果。支えを失った前屋根が崩れて下に居た者たち押しつぶした。砂埃を払っておれはいう。
「あーあ、だから動くなっていったのによ」
おれは立ちあがって、左で腰の刀の柄を逆手に握った。右手は拳を作る。
「左手痛めてたんでは?」
「あぁ、でも、振るうのは無理でも手は動く」
自分でも分かるくらいおかしな構えで前に出た。左近は両手を大きく開いて内側に振るう。夜を切るその手の片方は見えない刃を仕込んでいる。見えず音もしない狂気の刃。見えず聞こえずのステルスに分かってることは二つ。その一、奴は片手でも斬馬刀を振るえる。そしてその二、片手なら直撃をくらっても骨は砕けない(めちゃくちゃ痛くはあるが)。ならば恐れることはないおれは奴のキルゾーンに自ら突入した。そして刀を僅かに抜いた。
「もらったっ……あっ?!」
斜め後ろを蹴って左へと回りこんで奴の一刀を避ける。やつと側面とおれの身体が重なったと同時に肘を横腹に叩きこんだ。肉じゃなく硬いものに当たる感触。シキサイに阻まれたらしいおれは即距離をあける。左近は打たれた衝撃に足が浮いてよたついたがすぐに身を立て直して、おれの正面に向き直った。
「運よく避けたのは流石です。っが……効きませんよ?打撃。」
「へっ……運よくに、効いてないか。本当にそう思うなら、そう思っとくといい。もうすぐ決着はつく」
「へぇー……それは楽しみですねぇ!」
奴はまた大きく両手を開いた。おれもまた同じように左手で刀を抜いてキルゾーンに飛び込んだ。力強く振って見えぬ刃が迫る中、今度は右方に飛んだ。刃があったならおれの胴体に当たっているがかすり傷一つ負わずにキルゾーンから抜けて、奴の胴体に同じように肘をぶち込んだ。やはり肉は捉えられない。硬いものに阻まれたが今度の一撃に左近は倒れた。
「なっ?!」
尻もちをついた拍子に斬馬刀を離したのか地面に落ちてその無骨な姿が現れる。やつは驚いた顔でおれを見上げていった。
「なんで……。ダメージはないのに……それにどうして避けられるんですかい?」
「見えてるんだよ。どっちに持ってるかがな。」
「嘘ですよね?」
ダメージがないのは事実だろう奴はすぐに刀を拾って立ちあがった。
「さぁ、どうかな。っか、次で終わらせるからな。」
さすがに警戒した様子で奴もより慎重に刀を持つ手を選んでいる。だが意味はないおれは見えているんだからな。やつがどっちに刀を仕込んでいるのかがな……。おれは刀を抜いて動かない。待つ、今度は向こうから攻撃させる。その意図に……奴は乗らなかった。
「悪いですけど……私からは出しませんよ。見えてるっていうのなら小鳥遊さんから攻めて来られれるでしょう。」
「怖いのか?」
「えぇ、怖いですよ。そんな弱いものに攻めさせるなんて真似させませんよねぇ?」
「……なら、いい。もう終わらせてやる。」
刀から手を離して前に出た。瞬間、奴は両手を頂点で合わせて縦に刃を振り下ろす。当然見えはしないがスピード、威力とも片手の時より格段に上がっているが関係ない。おれは腰を振った。ただのミドルキック。単純に斬撃が落ちてくるよりも早く奴を横薙ぎに蹴り飛ばしてやった。左近の顔がゆがみながら視界から消えていき、ウチの店の柱にぶつかった。
それで止まらずにおれは更に追い打ちをかける。驚いた顔の左近のまず手を蹴って斬馬刀を弾き飛ばした。腹を蹴りつけた。鳩尾の辺りを狙ったが当然シキサイが居て阻まれる。それでもお構いなしに蹴った。いや、踏みつけたといった方が良い。奴が起き上ろうとしてもそれを無理矢理停止させ踏み続ける。ゴッゴッという音のなかにいつしか何かが軋む音が混じりだす。当然だいくら鎧をつけていても衝撃は通る。何十、何百も同じ場所を蹴りつづけたなら蹴りが通らなくてもシキサイが左近の身体にめり込みだしたのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラっ!!」
「ぐっ……あぁ!ぐぁっ?!」
生身ならぐちゃぐちゃになっていてもおかしくないほど踏みつけの連打を浴びてついに左近は悲鳴をあげる。更に踏み潰しの速度をあげようとしたその時、左近は両手を挙げて叫んだ。シキサイもステルスを解いて姿を現す。
「待った!!参った!参りましたよ!」
「ふぅふぅ……。」
「勘弁してください。私では勝てません。これ以上されたら本当に死んでしまいます。」
「……本当だな。」
「えぇ、本当です。ほら、もうシキサイも外しましたから勘弁してください。」
左近は手をあげたまま立ちあがると、するするとシキサイ離れ降りて地面に着地する。
「……なら、さっさと黒装束どもを帰らせろ。お前には色々と聞きたいことがあるんだからな」
おれは左近を背にして囲んでいる黒装束たちを睨んだ。その隙を見逃さないのが左近、シキサイを軽く蹴ると長い尻尾で斬馬刀を絡め取り引き抜いた。
「言い忘れたが……動くなよ崩れるぞそこ」
「は?」
左近が背にしていた柱がメキメキと音を立てて折れる。その結果。支えを失った前屋根が崩れて下に居た者たち押しつぶした。砂埃を払っておれはいう。
「あーあ、だから動くなっていったのによ」