ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

悠「はぁ……いい夜だな。暖かいのに涼しい風があって月も出てる……。こんな夜は女の肌に抱かれて眠りたい……とか思わないか?なぁ、お前ら?」

両手で黒装束の男たちの頭を掴んでいる五本の指に力を込める。

黒装束A「ぐぁぁぁっ!」

黒装束B「ぎゃぁぁっ!」

悠「しばらく出て来なかったと思ったらこれだからな……しかも新が帰ってから狙ってきやがって、無事で帰れると思うな……よっ!」

右手と左手を合わせた。当然黒装束は頭を掴まれたままなのでクラッカーボールのようにぶつかってゴンッと鈍い音を立てて二人は動かなくなる。

黒装束C「……」

黒装束D「……」

黒装束E「……」

黒装束F「……」

黒装束G「……」

悠「って……おいおい、今日はなんか多くないかコレ?」

黒装束の不気味なのはなにも話さず無言に襲いかかってくるところだ。刃引きされてるとはいえ鉄の塊りで殴られるのはもの凄く痛い。そんなことはお構いなしに奴らは飛びかかってきた。しかも夜なので黒装束は目立ちにくい。

黒装束C「!!」

黒装束D「!!」

黒装束E「!!」

悠「ふっ!!」

おれは短く息を吐く。奴らの振るった刃はおれに届く数センチ手前で空気の壁に阻まれて届かない。無空空間で何かに弾かれる。それはつまり剣魂を使用したのだと思ったらしく黒装束の団体は軽やかに後退した。判断能力は高く、素早い動きまるでニンジャだった。

黒装束C「……?」

黒装束はあたりを注意深く窺うも周りにはおれしかいない。当然だった、こっちは新みたいに剣魂は所持していない。さっきのだって空気の壁で防いだのだからな。それでも十分効果があったらしく二の手を振るうのを躊躇している。

悠「こないなら……帰ってくれないかな」

黒装束C「……」

おれの友好的かつ平和的な申し出はなぜかいつも受け入れてもらえない。黒装束のひとりが斬りかかってきた。

悠「ちっ!」

一歩踏み込んで半身を振って敵の一刀を紙一重で避けた。重心を右肩に移動して相手の軽く触れた瞬間に肩とひじに力を込めて振り上げた。胸と鳩尾に強撃を受け悲鳴をあげる間もなく黒装束は地に伏せた。

黒装束D「……!」

悠「来るんなら相手にはなってやるが……何人いようとお前らじゃ結果は変わらないぞ」

黒装束D「……」

悠「あーもー動くなっ!」

またひとり動こうとしたので、おれは倒れた黒装束から刀を奪って投げた。

黒装束D「ぐふっ?!」

アンダーショットで飛ばした刃だが上手い具合に奴の足に当たって盛大にずっこけた。刃先は尖っているのでザックリと突き刺さっている。本当に手荒いことをする気はなくともこのくらいして脅さないと引かないのだコイツらは……。

悠「次はもっと上の方を狙うぜ?」

更にもう一本ほど刀を奪って荒々しく振った。

黒装束D「ぐぅぅっ…!」

黒装束E「……」

黒装束F「……」

黒装束G「……」

さすがに目のまえで血を流す人間見て動きが鈍った。もうひと押しで引くだろうと思ったその時……。

左近「ありゃありゃ……酷いことしますねぇ。」

悠「左近……。」

左近「はいはい、逃げちゃダメですよ。ケガ人を下がらして隊列組み直す。」

悠「今日はお前付きかよ」

左近「こっちにも事情があるんですよねぇ……すいませんけど、今夜は真面目にひと働きしますよっと」

斬馬刀を抜いて構える左近……。今夜は安眠できそうになくなった。
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