ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました
ー田ノ上の屋敷ー
新に叫んでから約二分。
おれはもといた部屋か壁を突き抜けた先の奥部屋の壁で踞っていた。
ザッザッと畳を踏みしめながら王が近づいてくる。
「なんで、悠たんと闘ってるんだろねん。俺。」
「ほん…とになっ…」
口が上手く開けない。
ほんの二分前の事をを振り返る。両手のガードを解かずに全力で守りの体勢だったにも関わらず、二発目の王の拳はおれのガードを貫いて顔面に突き刺さった。
そればかりか、威力は衰えないまま衝撃はおれの身体は壁を突き抜けて隣の部屋までぶっ飛び、また壁に突き当たり今に至る。
王はガードの上からでも顔面、しかも人中を正確に狙っていたらしく。
鼻の下と上唇の中がジンジンと痺れて尋常じゃないくらい痛い。
「悠たんって……思ってたよりおもしろくないね。つまんないわん。崇くんには悪いけどぉ………………壊しちゃおっか♪」
おれは、このとき初めてこの王(おとこ)につきまとう不気味な空気の正体を理解した。
今までの闘った奴らとは全く違う…「守らぬ者」「与えぬ者」ただ、ただ、ひたすらに「遊戯者(コワスモノ)」。
壊れた無邪気さに万象一切をぶち壊す者。
この男に対峙する者は哀れな玩具のように弄ばれて壊されることだろう。
だが、おれは何度もいうが素直な性格だ。
玩具のようになるのはごめんだし……死ぬほど辛いって認めたらそこが自分の限界になる。
おれは立ち上がり、力を抜いた。
全身の緊張の糸をたゆませるようにリラックスする。まばたきも呼吸もすべての行動を放棄する。
そして、心臓の脈動だけに集中させる。ミッション車のように段々と加速をあげていく…。
鬼状態(オニモード)
「命を捨てる…。」
「にゃにかいったかな?」
ほぼ同時だった。肉を叩くあの音が鳴ったのは…。
王の鳩尾に突き刺さるおれの拳と、おれの顔面(人中)には届かず、左手に阻まれた王の拳。
防いだにも関わらず拳速の衝撃風におれの前髪は後ろに靡いていた。
「あ…れ?ガードしてる?」
「ぐっ…アンタの手法は散々見たからな。必ず顔面を狙ってくると思ったよ。左手は逝ったけど、王狐文にぶち込めるなら。安すぎる代金だ。」
王の左拳とおれの右拳が交差した瞬間おれは前のめりに踏み込みながら、左腕を顔に添えるように構えた。案の定、ヤツはおれの顔を潰しにかかった、左手が180度曲がり手の甲が手首にぴったりと張り付くほど折れていく。
ミヂミヂと筋肉の繊維が千切れていく音が脳みそに突き刺さりながら、おれの右拳はがら空きの王の腹をとらえて打ち抜いた。
…だが、先に膝を着いたのはおれの方だった。
全身がオーバーヒートしそうな中で百目鬼雲水の言っていた事を思い出した。
『命の操り方を指南する。文字通り心臓の鼓動をコントロールする。発動の念持(キーワード)は「命を捨てる」。体を動かさず運動せず止まったまま鼓動を一気に極限まで高める。内に内に自分自身を内側に圧縮する。鼓動の回数が全力疾走を遥かに超えた先、ある領域に入る。死んだ友人に会えるかも知れない場所だ。事故の瞬間や死ぬ間際の走馬灯のような状態を自らつくりだす。人間からの変化だ。その時、これが鬼状態(オニモード)だ。ただ、鬼状態を会得できたとして、例えば小動物は人間の数倍の速さで鼓動を打つ。だから寿命が短い。鬼状態を連騰すると…早死にする。』
新に叫んでから約二分。
おれはもといた部屋か壁を突き抜けた先の奥部屋の壁で踞っていた。
ザッザッと畳を踏みしめながら王が近づいてくる。
「なんで、悠たんと闘ってるんだろねん。俺。」
「ほん…とになっ…」
口が上手く開けない。
ほんの二分前の事をを振り返る。両手のガードを解かずに全力で守りの体勢だったにも関わらず、二発目の王の拳はおれのガードを貫いて顔面に突き刺さった。
そればかりか、威力は衰えないまま衝撃はおれの身体は壁を突き抜けて隣の部屋までぶっ飛び、また壁に突き当たり今に至る。
王はガードの上からでも顔面、しかも人中を正確に狙っていたらしく。
鼻の下と上唇の中がジンジンと痺れて尋常じゃないくらい痛い。
「悠たんって……思ってたよりおもしろくないね。つまんないわん。崇くんには悪いけどぉ………………壊しちゃおっか♪」
おれは、このとき初めてこの王(おとこ)につきまとう不気味な空気の正体を理解した。
今までの闘った奴らとは全く違う…「守らぬ者」「与えぬ者」ただ、ただ、ひたすらに「遊戯者(コワスモノ)」。
壊れた無邪気さに万象一切をぶち壊す者。
この男に対峙する者は哀れな玩具のように弄ばれて壊されることだろう。
だが、おれは何度もいうが素直な性格だ。
玩具のようになるのはごめんだし……死ぬほど辛いって認めたらそこが自分の限界になる。
おれは立ち上がり、力を抜いた。
全身の緊張の糸をたゆませるようにリラックスする。まばたきも呼吸もすべての行動を放棄する。
そして、心臓の脈動だけに集中させる。ミッション車のように段々と加速をあげていく…。
鬼状態(オニモード)
「命を捨てる…。」
「にゃにかいったかな?」
ほぼ同時だった。肉を叩くあの音が鳴ったのは…。
王の鳩尾に突き刺さるおれの拳と、おれの顔面(人中)には届かず、左手に阻まれた王の拳。
防いだにも関わらず拳速の衝撃風におれの前髪は後ろに靡いていた。
「あ…れ?ガードしてる?」
「ぐっ…アンタの手法は散々見たからな。必ず顔面を狙ってくると思ったよ。左手は逝ったけど、王狐文にぶち込めるなら。安すぎる代金だ。」
王の左拳とおれの右拳が交差した瞬間おれは前のめりに踏み込みながら、左腕を顔に添えるように構えた。案の定、ヤツはおれの顔を潰しにかかった、左手が180度曲がり手の甲が手首にぴったりと張り付くほど折れていく。
ミヂミヂと筋肉の繊維が千切れていく音が脳みそに突き刺さりながら、おれの右拳はがら空きの王の腹をとらえて打ち抜いた。
…だが、先に膝を着いたのはおれの方だった。
全身がオーバーヒートしそうな中で百目鬼雲水の言っていた事を思い出した。
『命の操り方を指南する。文字通り心臓の鼓動をコントロールする。発動の念持(キーワード)は「命を捨てる」。体を動かさず運動せず止まったまま鼓動を一気に極限まで高める。内に内に自分自身を内側に圧縮する。鼓動の回数が全力疾走を遥かに超えた先、ある領域に入る。死んだ友人に会えるかも知れない場所だ。事故の瞬間や死ぬ間際の走馬灯のような状態を自らつくりだす。人間からの変化だ。その時、これが鬼状態(オニモード)だ。ただ、鬼状態を会得できたとして、例えば小動物は人間の数倍の速さで鼓動を打つ。だから寿命が短い。鬼状態を連騰すると…早死にする。』