ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー住宅与力の屋敷ー

越後屋「本日は、あなた様にお伝えしたいことがありまして、お邪魔させていただきました」

住宅与力「またか……今度は何事だ」

越後屋「いえ、この度は私ごとではなく……よからぬ噂を耳にしまして」

住宅与力「噂?どのようなものだ。申してみよ」

越後屋「なんでもこのところ、職人たちを嗅ぎまわっている輩が居るとか……」

住宅与力「なんだそれは、同業者か?それとも、不良共か?」

越後屋「いえそれが困ったことに、町方なんです」

住宅与力「……なんだと?」

越後屋「このところの建築事情に関して、強い関心を持っているようで……なにかを掴んでいるかも知れまへんなぁ」

住宅与力「うーむ……だとしたら、少々不味いことになるな……下手に腹など探られたらかなわん。」

悠「……」

痛くない腹、とまではさすがにいえないらしいな。……つと、いかんいかん。変な素振りを見せないように、平常心でいないとな……。

住宅与力「越後屋、いかようにすればよいと思う?」

越後屋「状況は、ウチとあなた様にとって、あまりよろしくない風向きですが、一つよい情報もございます」

住宅与力「みもつたいぶるでない。はよう話せ」

越後屋「その、嗅ぎまわっているという同心は……あの、中村往水なんです」

住宅与力「中村というと、あの不良同心か?」

越後屋「はい。金を積めばなんでも見逃すという、しょーもないお役人様ですわ。おそらくこの件を調べているのも、職務に励んでいるのではなく……」

住宅与力「……小悪党が金の臭いを嗅ぎつけた、というわけか」

越後屋「さようかと」

住宅与力「ならば金さえちらつかせれば、なんとでも……ふっふっふっ。よし、早急に中村と会う手はずを整えるのだ!」

越後屋「分かりました。……これ、こちらへ」

悠「はっ」。

段取り通り越後屋に声をかけられたので、使用人然とした面持ちでおれは近づいた。

越後屋「この時間なら、番所にいることが多いはず。もしいらしたら、お話しがあるという手待っていてもらいなさい。そしてすぐ、ウチらのところへ知らせに戻ること。よろしな?」

悠「御意、かしこまりました」

恭しく頭を垂れると、おれは急ぎ屋敷をあとにした。計画通りに話が進んでいることを、報告しに行かなければならないからだ。さあ、いよいよ幕開けだ……!



~キングクリムゾン!もとい移動中~



ー番所ー

悠「中村さん、居ますか?」

おれは番所の戸を開けて声をかけた。

往水「くぅ……くぅ……」

返事の代わりに寝息が聞こえた。

悠「なんだ、寝てるのか……って、おい!」

起こそうと寝息のする方に近寄ってみて驚く。なんてだらしない寝相だ。ジャージがめくれてパンツが見えてるじゃないか。普段から身なりに注意を払わない中村さんらしく、下着も実用本位で色気のないものだ。

往水「くぅ……くぅ……」

悠「うーむ……ドキドキはしないけどこういうパンツのがそそられるもどかしさがあるのは何故だろうか……パンツ道は奥が深いなぁ」

往水「んあ……パンツ……?」

悠「うわぁ!?」

往水「くぁ……ふぅあ」

悠「なんだ……寝言か。驚かしてくれるだわさ」

とりあえず起きてもらわないと。おれは一応手を合わせ一礼してから声をかけることにする。
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