ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー武家屋敷:室内ー

輝「はれれ?お、おお!すげえや!」

吉音「ふう」

悠「ディ・モールトベネ(非常に良しッ!!)」

その様子を見て、ふっと笑みを浮かべる逢岡さん。

親分「ひ、ひいいっ!」

手下をやられ、逃げようとする悪党。

輝「ちょおいと、待ちなあっ!」

悠「あ?」

マゴベエの急降下の衝撃で落ちてきた刀から、剣魂を呼び出している輝。

輝「これでも……くらいな!」

親分「ヒイイイ!!」

ほとばしる電撃、そしてダウン。

悠「結構、凶悪なんだな……それ。」

足下に黒こげで倒れ伏す悪党。この電圧の高さはおれも耐えられない威力だ。

想「少々やりすぎだが……まぁ大目に見て不問としましょうか。他の方もお願いします」

南町与力「了解いたしました!」

逢岡さんの指示で、気を失ったまま引っ張られていく悪党一味。

悠「新!輝!」

吉音「あはは、遅くなってごめんね」

悠「いいよ。そんなことより、怪我はないか?」

吉音「大丈夫大丈夫!ちょーっと天井裏がほこりっぽかったくらいで」

輝は先ほどからうつむいて、何も言わない。やっぱり怖かったのだろう。

悠「なあ、輝。コレで少しは懲りて……ん?」

輝「ここをこうして……っと。うん、よしよし」

近づいてみると、なにやらごそごそととりだしていじっている。

吉音「なにやってるの?」

輝「お、おおお!よっし!ちゃんと撮れてらぁ!」

輝は手元にもったデバイスに何かを映し出している。

悠「もしかして、それって……」

輝「実録!人質は見た!悪徳詐欺集団への正義の裁き!なんてね!」

悠「か、隠し撮りしてたのか!?」

輝「いやあ、いいアングルになかなかならなかったから無理して身体をねじってた甲斐があったもんさ!」

吉音「もしかして……」

輝「いっやあ!にしても見事な剣さばき!ほれぼれしちゃったねえ」

輝は上機嫌で映像を確認している。

悠「お前……マジか……」

輝「それにしても人質の気分も分かったしで、いい記事になりそうだよ。ありがとね!」

悠「ぜんっぜん懲りてないな……」

輝「どうだい新ちゃん、今度この輝さんの取材の用心棒やらないかい?手間賃ははずむよ?」

吉音「いや、もうむり……」

輝「あはは、なーんだい。じゃ、これから記事書かなきゃいけないんで!またね!!」

そのまま元気に駆け去っていく。

吉音「なんか……すごく疲れちゃった」

悠「おれもだ……」

輝「あははは!いやあ、今日の取材もいい事ずくめだったねえ。あははは!」

悠「いったい、どうすりゃいいんだ、この無神経は……」

吉音「悠がいうなら……本当にね」

悠「うぉい」




後日。悪人を成敗する吉音の勇姿(超ローアングル)の載ったエレキ新聞は今まで以上の売り上げ。それに応じて目安箱の依頼も増えたけれども……それと同じくらい、エレキ新聞への苦情も増えたのだった。

徒労だ……。

また、この騒動からエレキ新聞の編集方針がちょっとだけ変わることになるのだが……それはまた、別のお話し。
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