ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー瓦版所:輝の屋敷ー

悠「おーい、輝ー?いるかー?」

吉音「お土産持ってきたよー?てーるーちゃーん!」

作戦の第一段階。おれと吉音の二人で輝を現場に行かせない。ここで終わるなら、それだけで終わるだけだ。捕り物開始まであと少し。その少しの時間稼ぎでいいんだ。

輝「あれ、お二人さんいらっしゃい。こないだの記事見てくれた?」

悠「ああ、見た見た。それでな、ちょっと話しがあるんだけど」

吉音「ほーら、お土産のういろうだよ。一緒に食べない?」

輝「お気持ちは嬉しいんだけど、これから仕事なんでね」

やっぱり、という表情で顔を見合わせるおれと吉音。

悠「なんの取材だ?」

輝「えへへ、こないだみたいな、武家屋敷での大捕物でさあ」

悠「……」

やっぱり、情報はバレていた。

輝「しかも結構な情報秘匿っぷりから相手はもしかしたら大物かもしれないね!腕が鳴るなあ!」

第二作戦、逢岡さんの情報統制も見破られてるって事か。

吉音「それなんだけど、てる。今回は見送ってくれないかな?」

輝「あれ、もしかして新ちゃんと関係ある相手なの?だったら後でお話し聞かせてよ」

悠「今回だけじゃない。これからもずっとだ」

輝「もしかして、こないだの説教の続きかい?悠ちゃんってば、そんな野暮な真似はよしてよ」

吉音「もう、危ないんだから、取材は後からだってできるでしょ?」

悠「町廻り同心や奉行所に正式に取材申し込めばいいだけだろ?」

輝「そんなのは死んだ情報さ。事件は現場で起こってるんでぃ」

悠「その事件現場は奉行所の仕事場であってお前の仕事場じゃない。っーわけで行かせないからな!新!」

吉音「ここは通さないんだからねー!」

両手をわきわきとさせて、ブロックしようとする吉音。

輝「だーかーらー!そんな時間はないってぇの!」

けれど、輝はくるりときびすを返して、裏の窓から飛び出した。

吉音「待てえ!逃がさないんだから!」

悠「あ、おぃっ!」

慌てて追いかける吉音。だが……

吉音「ぐふっ!?ひ、ひつかかったあ!」

小柄な輝は通り抜けられた窓に引っかかってしまう。

悠「なにやってんだよ……って、うおおっ!?」

足下がぐにゅん、となっておれもすっ転んでしまう。

キガイ『……』

悠「っ……やろう。輝の剣魂、ウナギのキガイか。」

輝「へへーん、それじゃおさらば!」

悠「て、輝!お前マジで泣かすぞ!くそ、いくぞ、しっかりしろ新!」

新「ッ……抜けた!」




ー大通りー

悠「コラ、待てや!!」

輝「待てといわれて待つ奴ぁマヌケさ!」

吉音「こらー!てーるー!」

すばしっこく、道から道へと走り抜けていく輝。

悠「はぁ……はぁ……くそ、ちょこまかちょこまかと……マジでムカつく……」

運動神経ではこちらが勝ってると思うのだが、いかんせん土地勘が違いすぎる。
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