ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

悠「あちゃー……またかあ」

ともき(女)「なに、どうかしたの?」

個人的なことが書かれることが多い目安箱のなかにも、内容が被っているものがいくつかある。

悠「ちょっとな……」

吉音「どれどれ、見せて見せて。瓦版への苦情……ってこれもしかしてさ」

悠「最近多いんだけどな。まぁ、十中八九輝野ことだと思うんだけど」

はな「99%そうですね」

吉音「ちょ、ちょっと待とうよ!そうやって友達を怪しむのは……」

悠「だってさ、ここに書いてあるだろ?エレキ新聞のちっさい眼鏡って」

吉音「た、確かに……でもさあ、全部が全部ってわけでもないんじゃない?」

悠「……これによると、無許可の上に取材が強引」

吉音「ま、まあ否定は出来ないけど……」

はな「こっちは不幸のどん底で落ち込んでたのにしつこい取材。しかも空気読まない」

吉音「そういうところも、ないわけじゃないかも……」

ともき(女)「困ってるのに助けるわけでもなくシャッターを切ってる。あげく笑ってる」

吉音「あり得るかどうかといわれれば、あると言わざるを得ない様な……」

悠「っか、どーー考えても輝のことだろ、これは」

吉音「うん、そうだね。てるだね……」

はな「他には、内容が過激すぎる。書かれた方の身にもなって欲しい」

確かに、エレキ新聞は情報も速いし、おもしろい事はおもしろいんだけど、そういう面もなきにしもあらず。内容のほとんどがゴシップなのも輝の趣味なんだろう。

吉音「もしかして……そこに置いてある分、全部が?」

悠「うん。全部、輝への苦情」

積み重なった苦情の量は、10や20では済まない量になっている。

吉音「で、みんな何とかして欲しいってこと、だよね?」

悠「まあ、面と向かって文句いってもその事を瓦版に書かれるだけだろうしな」

悪意があるかないかは別にして、おもしろいかそうでないかでしか考えてないっぽいからな。

吉音「はあ……あんまりこういう事はしたくないんだけど、ちょっと注意しにいこうか?」

悠「そうだなあ。なにか大きなことになる前に注意だけはしとかないとな」

はな「いってらっしゃいです」

ともき(女)「あんまり大事にしないようにね」

正直乗りきもしないまま、おれ達は輝のところへ向かうことにした。






ー瓦版所:輝の屋敷ー

悠「いつ来ても妖しいなここは……」

吉音「お~い、てる~?いる~?」

輝「おっとぉ、なーんだ。悠ちゃんたちかい」

悠「なんだってなんだよ。ちょっと話があるんだけどさ」

輝「こう見えても輝さんは忙しくってね。タレコミだったら後で聞くからさ!」

吉音「どこか出かけるところだった?」

輝「へへっ!ちょっと北町奉行所が捕り物やってるっていうんでね!」

吉音「……って、さっそく?」

思わず顔を見合わすおれ達。

悠「なあ、輝。悪いことはいわないから今回はやめとけ。あのな、お前に対する苦情が」

輝「おっとぉ!愛の告白ならまた今度ね!輝さんはいそがしいのさ!それじゃ!」

おれの忠告も聞かずに駆けだしていく輝。

吉音「あ、ちょっと!おっかけよう!」

悠「あー……だりぃ。けど、とんでもないことしでかさないか監視しないな。」

吉音「それともう一つ!」

悠「あー?」

吉音「告白するのっ?」
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