ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー武家屋敷寮ー
菜直「忍……アンタ、まさか……」
忍「ちっ、違うわ!私、そんなことしてない……そっ、そうよ!私がそんなことするわけ、ないじゃない!だいたい、今の話しが本当だったとしても、誰にだってできるイタズラだったってだけじゃない!私がやったみたいに決めつけないでください!」
平和「むぅ、たしかに……」
信乃「そういわれると、犯人だって言い切れないかも……」
つばめ「菜直さんでにければ、消去法で忍さんしかいない……というだけですものねぇ」
確かにそうだ。この化け猫騒ぎがイタズラだったとしても、それが忍さんによるものだったと言える決定的な証拠はない。だけど、あの話しがそういうことなのだとしたら、犯行の動機と機会は、忍さんにこそ、あったことになる。
悠「おれたち、ここに来る前にこんな噂を聞いたんです」
忍「ですから、化け猫の噂は私のせいじゃ――」
悠「いや、その噂ではないんです。この屋敷での暮らしについてです」
忍「え……?」
悠「化け猫騒ぎが起きる前まで、ここでもっと大勢の人が共同生活していたんですよね?」
おれは、忍さんから菜直さんへと視線をずらす。
菜直「え、はい……そうです」
悠「でも、おれの聞いた話だと、大勢で暮らしているのに、家事をするのはたったひとりだけだったそうですね」
菜直「それは嘘!私たちも、たまには手伝っていました!!」
悠「では、そのたのまのとき以外は、一人の子に任せ切っていたんですね」
菜直「うっ……それは、だって……家事が好きだって言っていたから、じゃあ任せてもいいかなって……」
しどろもどろに言い訳する菜直さんの目は、忍さんのことを、ちらちらと伺っている。その様子からして、おれの推測は間違っていないらしい。
悠「つまり、食事も掃除もほとんど毎日、忍さんがひとりでやっていたんですね。
菜直「……」
忍「……」
菜直さんも忍さんも答えなかったけれど、沈黙は肯定だ。
悠「猫の仕業に見せかけて食事をダメにすることが出来るのは、いつもたったひとりで食事を用意していた人だけ。玄関の掃除をしている時なら、他人の靴を手にしているところを見せられても楽に誤魔化せる。そして、同機はもちろん……」
忍「う、うわあぁ!!全部全部あんたのせいだ!!」
「「「あっ!?」」」
一瞬のことだった。おれの言葉から逃げるように突然立ち上がった忍さんが、菜直さんに殴りかかったのだ。だけど……。
吉音「ダメだよ、それは」
菜直さんに向かって振り下ろされるはずだった拳は、吉音の手で静かに受け止められていた。
忍「あ……う、ぅ……」
もうそれ以上は暴れる様子もなく、忍さんはがくりと膝を折る。
菜直「忍……どうして、こんなことを……私たち、あんたが家事が好きだから任せてくれっていったから……」
忍「……そんなの、初めての共同生活で緊張していた友達をリラックスさせたかっただけよ。それに、かりに好きだったとしても、何人分もの家事を毎日毎日毎日やってたら大嫌いになるわよ……!あなたには分かる?私がどんな気持ちで、毎日あなたたちの食事を作っていたか……分からないでしょうね。トイレの詰まりを直したことも無いような、あなたたちには」
菜直「忍……ごめん……なさい……」
忍「今さら謝るくらいなら、あなたもさっさと出て行ってくれれば良かったのに……それを強情張ってさ」
菜直「……そんなの、できるわけないじゃない」
忍「どうしてよ」
菜直「だって、あんたは元の長屋を引き払ってて、他に行く当て、ないじゃない。お化けが出るような家に、友達をひとりで残していけるわけ……ないじゃない……」
忍「……!」
菜直「忍……アンタ、まさか……」
忍「ちっ、違うわ!私、そんなことしてない……そっ、そうよ!私がそんなことするわけ、ないじゃない!だいたい、今の話しが本当だったとしても、誰にだってできるイタズラだったってだけじゃない!私がやったみたいに決めつけないでください!」
平和「むぅ、たしかに……」
信乃「そういわれると、犯人だって言い切れないかも……」
つばめ「菜直さんでにければ、消去法で忍さんしかいない……というだけですものねぇ」
確かにそうだ。この化け猫騒ぎがイタズラだったとしても、それが忍さんによるものだったと言える決定的な証拠はない。だけど、あの話しがそういうことなのだとしたら、犯行の動機と機会は、忍さんにこそ、あったことになる。
悠「おれたち、ここに来る前にこんな噂を聞いたんです」
忍「ですから、化け猫の噂は私のせいじゃ――」
悠「いや、その噂ではないんです。この屋敷での暮らしについてです」
忍「え……?」
悠「化け猫騒ぎが起きる前まで、ここでもっと大勢の人が共同生活していたんですよね?」
おれは、忍さんから菜直さんへと視線をずらす。
菜直「え、はい……そうです」
悠「でも、おれの聞いた話だと、大勢で暮らしているのに、家事をするのはたったひとりだけだったそうですね」
菜直「それは嘘!私たちも、たまには手伝っていました!!」
悠「では、そのたのまのとき以外は、一人の子に任せ切っていたんですね」
菜直「うっ……それは、だって……家事が好きだって言っていたから、じゃあ任せてもいいかなって……」
しどろもどろに言い訳する菜直さんの目は、忍さんのことを、ちらちらと伺っている。その様子からして、おれの推測は間違っていないらしい。
悠「つまり、食事も掃除もほとんど毎日、忍さんがひとりでやっていたんですね。
菜直「……」
忍「……」
菜直さんも忍さんも答えなかったけれど、沈黙は肯定だ。
悠「猫の仕業に見せかけて食事をダメにすることが出来るのは、いつもたったひとりで食事を用意していた人だけ。玄関の掃除をしている時なら、他人の靴を手にしているところを見せられても楽に誤魔化せる。そして、同機はもちろん……」
忍「う、うわあぁ!!全部全部あんたのせいだ!!」
「「「あっ!?」」」
一瞬のことだった。おれの言葉から逃げるように突然立ち上がった忍さんが、菜直さんに殴りかかったのだ。だけど……。
吉音「ダメだよ、それは」
菜直さんに向かって振り下ろされるはずだった拳は、吉音の手で静かに受け止められていた。
忍「あ……う、ぅ……」
もうそれ以上は暴れる様子もなく、忍さんはがくりと膝を折る。
菜直「忍……どうして、こんなことを……私たち、あんたが家事が好きだから任せてくれっていったから……」
忍「……そんなの、初めての共同生活で緊張していた友達をリラックスさせたかっただけよ。それに、かりに好きだったとしても、何人分もの家事を毎日毎日毎日やってたら大嫌いになるわよ……!あなたには分かる?私がどんな気持ちで、毎日あなたたちの食事を作っていたか……分からないでしょうね。トイレの詰まりを直したことも無いような、あなたたちには」
菜直「忍……ごめん……なさい……」
忍「今さら謝るくらいなら、あなたもさっさと出て行ってくれれば良かったのに……それを強情張ってさ」
菜直「……そんなの、できるわけないじゃない」
忍「どうしてよ」
菜直「だって、あんたは元の長屋を引き払ってて、他に行く当て、ないじゃない。お化けが出るような家に、友達をひとりで残していけるわけ……ないじゃない……」
忍「……!」