ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー武家屋敷寮ー

忍「え、えっ……?」

平和「ペットが厳重に管理されてい猫の学園島に、野良猫がいるとは考えられないのが、まずひとつ。化け猫が実在するというのは、探偵的に却下でござる。化け猫でも野良ネコでもないとすれば、買い猫と考えるのが論理的というやつでござるよ」

平和はひと息に言い切って、えっへんと胸を張る。たしかに、平和にしては的を得た推理だ。
おれの推理とは微妙に違うが様子を見ることにした。平和の長広舌はまだまだつづく。

悠「……」

平和「そして、噂の発端となったこの屋敷に今現在、住んでいるのは菜直さんと忍さんの二人のみ。わざわざ目安箱に投書してきた菜直さんを除外すれば、飼い主候補は忍さん、あなたしかいないでござるよ!!」

最後まで言い切った平和の顔は、さあ反論してみろ、と言わんばかりの自信満々な笑顔だ。そんな顔で指差されて、きょとんとしていた忍さんの表情は見る見るうちに険しくなっていく。

忍「わっ……私、猫なんて飼ってません……っ」

平和「ふっふっふっ、そんな言い訳は――」

菜直「でも……忍が猫を飼っていたのなら、私が気づかないはずないと思うんですけど……」

平和「そ、それはほら、菜直さんの目を盗んでこっそりと」

菜直「それに、化け猫の噂が立ったのは、まだ同居人が大勢いた頃ですよ。私ひとりの目なら誤魔化せても、全員にばれないようにこっそり猫を飼うなんて不可能じゃないですか?」

平和「そ、それは、ほらぁ……と、とにかく!屋敷の敷地をくまなく探せば、猫が見つかるはずです!」

信乃「それなら、私がもう探しました」

平和「えっ、本当!じゃあ、猫、いたでしょ!?」

平和は勢い込んで聞き返したけれど、信乃はゆるりと首を横に振る。

信乃「猫の姿はおろか、猫が住み着いているという痕跡さえ、まったく見つかりませんでした」

平和「ええぇ~っ!?でっ、でもそれは、天国がうっかり見逃しただけじゃないのぉ!?」

信乃「それはないと思います」

駄々っ子のような平和に、信乃はきっぱりと答える。

つばめ「何か、そういい切れる根拠でも?」

信乃「うん。抜け毛や足跡なんかならともかく、用を足した跡も、どこにも見つからなかったんです」

つばめ「あぁ、なるほど~。それはたしかに、うっかり見逃すのは難しいかもですねぇ~」

平和「う、うぅーっ……あれ、待ってよ。じゃあ、飼い猫も野良猫もいないってこと?」

つばめ「それはつまり……やはり化け猫の仕業、ということになるのかしら~?」

平和「えええぇ~っ!?」

涙目になっている平和を他所に、信乃は考え込むような顔をする。

信乃「……そうじゃないと思います。猫が居た形跡はないのに、毎晩のように猫の鳴き声がしている……まるで、誰かが録音した猫の鳴き声を再生させているみたいだと思いませんか?忍さん」

忍「……っ!?」

信乃の言葉に、忍さんの顔色がはっきりと変わった。

つばめ「あぁ、なるほど……たしかにそれでしたら、猫が存在していなくても当然ですね……」

忍「そっ、そんなの言いがかりです!それに……鳴き声以外の被害にも遭ってるんですよっ!?」

平和「そんなの、猫じゃなくて人間にも出来るでござるよ」

忍「あぅっ」

菜直「忍……あんた、まさか……」
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