ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー武家屋敷寮:庭ー

信乃「う~ん……ない、ない……何もないです…キラ、そっちはどうでした?」

キラ『ちっ、ちー……』

信乃「そう、収穫なしですか……ふぅ……どういうことなんでしょう……?」

キラ『ちー』

信乃「これだけ探しても見つけられないどころか、足跡一つ、毛の一本さえ見つからないなんて……はあぁ……あれだけ大口を叩いておいて、なにも見つけられませんでした、なんて言えませんし……」

キラ『ちぃー……』

信乃「ですが、猫が住み着いているのでしたら、もっと痕跡があってもいいはずですのに……あら、お客様かしら?」

キラ「ちっちっちー」

信乃「……そうですね。調査の経過報告もしないとですし、行ってみますか」

キラ『ちーっ』



ー武家屋敷寮ー

菜直「……じゃあ、悠さんが逢岡さまの遣いの方だったんですね」

通された客間ではおれが自己紹介すると、投書の投函主である鍋島菜直さかは、なぜか微苦笑しながらうなずいた。

悠「遣いというか……まあ、そんな感じです」

吉音「あたしは用心棒です」

平和「拙者たちは探偵でござるよ」

つばめ「はい、探偵です」

菜直「は、はぁ……あら?探偵さんといえば、さっきの子もそういっていたような……」

菜直さんが不思議そうな顔をしたとき、部屋の戸が、外からガラリと開けられた。

信乃「あれっ、姫様……それに、つばめも!」

平和「天国!」
つばめ「天国!」

部屋の戸口に立っていたのは、三人組の最後のひとり、信乃だった。……なんとなく、いるんじゃないかって気がしていたから、驚いてなんかやらないけど。

菜直「ああ、やっぱり知り合いでしたか」

平和「はい!拙者たち、三人揃って大江戸学園探偵団でござるよっ!」

つばめ「三人バラバラで事件探しをしていましたのに、全員集合してしまいましたね~」

信乃「まったく、驚きだぜ」

三人は互いの顔を見つめ合ってから、誰からともなくくすくすと笑いだす。本当、中の良い奴らだ。

悠「それはそうと……菜直さん。」

菜直「はい?」

悠「今、この屋敷で暮らしているのは、菜直さん一人だけですか?」

菜直「いえ。もうひとり、流造寺忍という子が居ますけど。」

悠「なるほど……では、その忍さんという方を呼んできてもらえますか?」

菜直「はい、分かりました」




忍「……お待たせしました、流造寺忍です」

菜直さんに連れて来られて客間に出て来た忍さんは、線の細い印象の女の子だった。物怖じしない印象の菜直さんとは随分、対照的だ。

悠「ええと……忍さん、単刀直入にお聞きします」

忍「は、はい……」

悠「忍さん。あなた、実むぐっ!!」

平和「隠れて、こっそり猫を飼っているでござるね!」

言いかけていたおれを思いきり押し退けて、ズイッと前に出てきた平和が、忍さんにびしりと指を突き付けた。
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