ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:小鳥遊堂ー
不良生徒A「そんな訳のわからないヤツはほっとけ!」
得体の知れない彼女を相手にするのは得策ではないと判断したんだろう。男たちは文を避けるようにして、改めて由真の周りを取り囲んだ。
文「それじゃ……」
唯「待って!お願いだから助けてよっ!お礼だったらするからっ!」
由真「唯っ。関係ない人を巻き込むんじゃないのっ」
唯「でも、このままじゃ由真姉が……」
文「…………」
悠「?」
立ち去ろうとしていた彼女が、なぜかこちらを振り返り、唯ちゃんを見つめる。
文「そういえば、三姉妹という話しでしたね……情は捨てたつもりだったんですが……」
文は小声で何かを呟いていた。だが、男たちは完全に彼女を無視していたし、本当に小さな声だったから、注目していたのはおれだけだった。そのおれの目のまえで、彼女の姿がかき消える。
不良生徒D「うぎゃっ!?」
唯「えっ?」
突然、唯ちゃんを羽交い絞めにしていた男が悲鳴をあげて地面に倒れた。解放されて、キョトンと立ちつくす唯ちゃんの隣に、笠をかぶった文の姿がある。どうやら、男を倒したのは彼女らしい。
文「助太刀します」
唯「ぁ……うんっ。ありがとっ!」
瞬時に状況を理解して、唯ちゃんが満面の笑みを文に向けた。だが彼女は唯ちゃんに目を向けることねなく、すぐさまつぎの行動に移る。
不良生徒E「ごふっ!?」
不良生徒A「なんなんだ、てめぇは。くそっ」
目のまえで打ち倒された仲間を見て、首謀者の男が怯む。その様子を見て、由真も我に帰ったらしい。
由真「はああああっ!」
不良生徒F「どあっ!?」
見えたっ!ピンクのショーツ……ではなくて、由真は軽やかな身のこなしで、怯む男たちを次々に蹴り飛ばしていく。
唯「てりゃぁぁ~~っ!!!」
おれを押さえつけていた男を、唯ちゃんが勢いをつけた体当たりで吹き飛ばしてくれた。
唯「悠さんっ、大丈夫っ?」
悠「ああ、助かったよ。」
ねじり上げられていた腕をさすりながらたちあがる。自由になったらこっちのもんだ。おれは両手の指をパキパキ鳴らして、由真の後ろから飛びかかろうとしている男たちの肩を掴んで関節にに指をねじ込んだ。パチンっと硬いスイッチが動くような音がして骨がはずれる。
不良生徒G「ぎゃあああっ!!?」
不良生徒A「くそっ。覚えてやがれ!」
ボロボロになった身体を引きずるようにして、男たちが逃げ去っていく。
唯「うっわ~。あんな使い古された捨て台詞、ホントにいう人居るんだ」
男たちの背中を見送りながら、唯ちゃんがそんな風に苦笑していた。その隣では、由真が膝に手をついて乱れた呼吸を整えている。
文「捕まえ無くていいんですか?」
文は、息を見出した様子もなく、男たちの消えていった方向をジッと見つめていた。由真も彼女と同じように、その方向をしばらく見つめたあと、仕方なさそうに首を横に振る。
由真「あんなんでも、一応ウチの客だったわけだし……あんま大事にしたくないっていうか……それより、ありがとう、助けてくれて」
文「……いえ」
文は言葉少なに答え、顔を隠すように笠を眼深にかぶり直した。そして、男たちが逃げていったのとは違う方向に歩きだそうとする。
唯「ちょっと待って。なにかお礼させてよ」
文「……結構です」
唯「でも……」
文「そういうつもりで助太刀した訳じゃないので」
唯「……」
悠「……」
彼女の頑なな態度に、唯ちゃんが困惑した顔をおれに向けて来た。だが俺にもどうしようもないので、肩をすくめるしかない。
唯「じゃあ、名前を聞いてもいい?」
文「……どうしてです?」
唯「えっと……知りたいからじゃ、ダメ?」
文「……名乗るほどのものじゃありませんから」
彼女は冷たく言い捨てると、それ以上の会話を拒むように歩きだした。唯ちゃんが何度か呼び方ものの歩みは止まらず、その姿は夜の闇に消えていく。おれは名前を知っているけど……ここは黙っておいた方が良さそうだな。
由真「助けてもらっといていうことじゃないとは思うけど、なんなのあの子?」
悠「さあな。おれが聞きたいくらいだよ。」
おれ達はそんな風に言い合いながら、彼女が消えていった方向をしばらく眺めつづけるのだった。
不良生徒A「そんな訳のわからないヤツはほっとけ!」
得体の知れない彼女を相手にするのは得策ではないと判断したんだろう。男たちは文を避けるようにして、改めて由真の周りを取り囲んだ。
文「それじゃ……」
唯「待って!お願いだから助けてよっ!お礼だったらするからっ!」
由真「唯っ。関係ない人を巻き込むんじゃないのっ」
唯「でも、このままじゃ由真姉が……」
文「…………」
悠「?」
立ち去ろうとしていた彼女が、なぜかこちらを振り返り、唯ちゃんを見つめる。
文「そういえば、三姉妹という話しでしたね……情は捨てたつもりだったんですが……」
文は小声で何かを呟いていた。だが、男たちは完全に彼女を無視していたし、本当に小さな声だったから、注目していたのはおれだけだった。そのおれの目のまえで、彼女の姿がかき消える。
不良生徒D「うぎゃっ!?」
唯「えっ?」
突然、唯ちゃんを羽交い絞めにしていた男が悲鳴をあげて地面に倒れた。解放されて、キョトンと立ちつくす唯ちゃんの隣に、笠をかぶった文の姿がある。どうやら、男を倒したのは彼女らしい。
文「助太刀します」
唯「ぁ……うんっ。ありがとっ!」
瞬時に状況を理解して、唯ちゃんが満面の笑みを文に向けた。だが彼女は唯ちゃんに目を向けることねなく、すぐさまつぎの行動に移る。
不良生徒E「ごふっ!?」
不良生徒A「なんなんだ、てめぇは。くそっ」
目のまえで打ち倒された仲間を見て、首謀者の男が怯む。その様子を見て、由真も我に帰ったらしい。
由真「はああああっ!」
不良生徒F「どあっ!?」
見えたっ!ピンクのショーツ……ではなくて、由真は軽やかな身のこなしで、怯む男たちを次々に蹴り飛ばしていく。
唯「てりゃぁぁ~~っ!!!」
おれを押さえつけていた男を、唯ちゃんが勢いをつけた体当たりで吹き飛ばしてくれた。
唯「悠さんっ、大丈夫っ?」
悠「ああ、助かったよ。」
ねじり上げられていた腕をさすりながらたちあがる。自由になったらこっちのもんだ。おれは両手の指をパキパキ鳴らして、由真の後ろから飛びかかろうとしている男たちの肩を掴んで関節にに指をねじ込んだ。パチンっと硬いスイッチが動くような音がして骨がはずれる。
不良生徒G「ぎゃあああっ!!?」
不良生徒A「くそっ。覚えてやがれ!」
ボロボロになった身体を引きずるようにして、男たちが逃げ去っていく。
唯「うっわ~。あんな使い古された捨て台詞、ホントにいう人居るんだ」
男たちの背中を見送りながら、唯ちゃんがそんな風に苦笑していた。その隣では、由真が膝に手をついて乱れた呼吸を整えている。
文「捕まえ無くていいんですか?」
文は、息を見出した様子もなく、男たちの消えていった方向をジッと見つめていた。由真も彼女と同じように、その方向をしばらく見つめたあと、仕方なさそうに首を横に振る。
由真「あんなんでも、一応ウチの客だったわけだし……あんま大事にしたくないっていうか……それより、ありがとう、助けてくれて」
文「……いえ」
文は言葉少なに答え、顔を隠すように笠を眼深にかぶり直した。そして、男たちが逃げていったのとは違う方向に歩きだそうとする。
唯「ちょっと待って。なにかお礼させてよ」
文「……結構です」
唯「でも……」
文「そういうつもりで助太刀した訳じゃないので」
唯「……」
悠「……」
彼女の頑なな態度に、唯ちゃんが困惑した顔をおれに向けて来た。だが俺にもどうしようもないので、肩をすくめるしかない。
唯「じゃあ、名前を聞いてもいい?」
文「……どうしてです?」
唯「えっと……知りたいからじゃ、ダメ?」
文「……名乗るほどのものじゃありませんから」
彼女は冷たく言い捨てると、それ以上の会話を拒むように歩きだした。唯ちゃんが何度か呼び方ものの歩みは止まらず、その姿は夜の闇に消えていく。おれは名前を知っているけど……ここは黙っておいた方が良さそうだな。
由真「助けてもらっといていうことじゃないとは思うけど、なんなのあの子?」
悠「さあな。おれが聞きたいくらいだよ。」
おれ達はそんな風に言い合いながら、彼女が消えていった方向をしばらく眺めつづけるのだった。