ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー平屋付近ー

文は……っと、いたいた、もうあんなところまで。

由佳里「あの、すみません、ちょっといいですか?」

文「……私?」

由佳里「はい。あの……えっと、こんにちは」

文「……」

由佳里「えっとえっと、とっ、突然失礼なんですけど、あのちょっとお話しさせていただけませんか?」

文「話?」

文の視線が、訝しげに由佳里のまえで上下する。あからさまに不審に思われている様子だ。以前にも同じことがあったな。あの時は吉音がいたけれど……

由佳里「その、わたしは八辺由佳里っていいます。乙級の二年で……」

文「隙だらけですね」

由佳里「……は、はい?隙って……」

文「弱い女(ひと)には興味がないので。……それじゃ」

由佳里「あの……え?そんな……悠さん、どういうことなんでしょう?わたし、確かに弱いですけど……」

由佳里が首を傾げてこちらを見上げてくる。もちろんおれにも彼女の真意は分からないが、さすがにあのいい方はないんじゃないだろうか。

悠「ちょっと文、待ってくれ」

由佳里「えっ、あや?」

文「…………」

悠「恩人にこういう言い方はしたくないんだけど……そっちには何か事情があるにしても、断るにももう少しいい方があるんじゃないか?」

文「…………」

悠「黙ってないで、なんとかいったらどうなんだ?」

文「今は男の人には用がないので」

悠「……あー?」

文「それじゃ、御免なさい」

悠「……おい?待てよ。ちょっと待てって!おーい!」





ー新宿:小鳥遊堂ー

光姫「ふむ……そうか、わからなかったか」

由佳里「すみません。お役に立てませんでしたぁ」

光姫「まぁよいよい。顔はしっかりと覚えたのじゃろ?それにそうまでして素性を隠したがっている、と分かっただけでも収穫じゃ。無用な騒動を起こさんでくれれば良いのじゃがのぅ」

彼女には既に、突然決闘を挑んできたという前科がある。聞いた話してしかないけど。光姫さんならずとも気になるところだ。しかし目下のところの問題は……。

吉音「ふんだ。そんな悠なんて、あたしも知らないもんっ」

いかにして、ヘソを曲げてしまった吉音のご機嫌取りをするかだな。

悠「……団子五皿」

吉音「プイッ」

悠「倍の十皿」

吉音「じゅるり……お、お団子なんかでのせられないもんっ」

悠「更に倍プッシュの二十皿と本気で淹れるお茶。」

吉音「うん、いいよっ!早くね」

悠「おれが言うのもなんだが……単純だな。お前は……。色々助かるわ」

なでなで
吉音「えへへ、そーかな。もっと撫でてもいいんだよ~♪」
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