ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

悠「まぁ、学生の時分からこんな荒波にもまれていれば、打たれづよくもなるってもんだよな」

光姫「ほっほっ。規模や危機感は違えど、学園は外の世界と同じ構造をしておるからの。先の詠美など、卒業後は政治家としての成功が確約されておるようなものじゃ」

吉音「えへへへ、そうだといいね~」

由佳里「わたしも、誰かのお役に立つことができるでしょうか」

光姫「ハチの場合は逆に、悪党の餌食にならんよう留意せねばならん。そろそろ自覚をもつべきだと思うが……まあ、心配は無用じゃ。そなたのことはわしが面倒を見てやるからの」

由佳里「あぅぅ、光姫さまぁ」

光姫「ほっほっ。誰にも渡したりはせん。安心しておれ」

身長は由佳里のほうが遥かに大きいのに、まるで母と子のようだ。やや年齢差があるのも、事実ではあるのだが。

吉音「じ~……」

悠「……なんだ、その目は?」

吉音「あたししは?」

悠「一応聞くが、何のことかな?」

吉音「ほら。誰にも渡さんとか、面倒見てやるとか」

悠「……残念ながら、おれはなんの約束も出来んぞ」

精々が一食の奢りってことだ。

吉音「むぅっ。詠美ちゃんやゆかりんはいいなぁ~っ。いいなぁ~っ」

光姫「ほほ。詠美が聞いたら腹を立てそうなセリフじゃな。……っと、これは失言じゃったか」

うん?どういうことだろう。徳河さんにも何かあるんだろうか?

由佳里「……あれ?あのひと……」

光姫「どした、ハチ?」

由佳里「あそこを歩いてる人、この前の知らない人です」

由佳里の指さす方向を見ると、なるほど見知った人影があった。以前おれに写真を見せてきたり、吉音に決闘を挑んできた笠の女子だ。名前は……そうそうあやっていってたっけ。あのあと光姫さんが調べた全生徒データーベースのなかにも、顔が見つからなかったらしい。現代はいくらでも顔を買える手段があるとはいえ、謎であることには違いない。

悠「……」

由佳里「光姫様、ちょっといってきていいですか?」

光姫「うむ。ハチに見覚えがないというのは、わしも気になるしの。悠も一緒にいってやってくれ。由佳里ひとりでは不安じゃろうし」

悠「わかりました」

吉音「それじゃあたしも行く~」

光姫「ダメじゃ。おぬしはわしと店番じゃ」

吉音「え~、なんで~?」

光姫「ゾロゾロいっても警戒されるじゃろうし、またケンカになるやもしれんからの」

吉音「むむむぅ~っ。なんだか今日はみんな冷たい~っ」
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