ｰ新宿:小鳥遊堂ｰ

悠「ってなことがあってさ」

吉音「ずるい悠だけ!あたしも詠美ちゃんとおしゃべりしたいにの!」

ずるいっていわれてもどうしろと……?

悠「けど徳河さん、最後に徳田さんによろしくっていってたぞ」

吉音「うーん……」

すこし困ったように首を傾ける吉音。いつもはっきりした物言いをする吉音らしくない態度だな。

悠「なんだ?」

吉音「違うと思うな。それきっと、悠に向かっていったんじゃないかな。」

悠「そんなことないだろ。新の知り合いだし新の話もしてたし、お前相手にいったんじゃないのか?」

吉音「……だったらいいなぁ」

どこか寂しさを含んだ吉音の声。いつも明るい分その落差に驚きを隠せない。

悠「なぁ新」

吉音「んー、なーに?」

悠「いや、新と徳河さんって、どういう知り合いなのかなって」

吉音「……いろいろあるんだよ、いろいろ」

悠「なんだそりゃ」

珍しく吉音が話をはぐらかす。

吉音「だからいろいろだってば。ふぅ、ねぇ悠、あたしお腹へっちゃった!おやつちょーだい!」

それからはいつも通りのおれたちだった。

悠「おやつって、さっき食ったばっかりだろ。もうないよ」

吉音「ぶーぶー!悠のケチーー!」

悠「ケチって……あのなぁ」

笑顔に戻った吉音だけど、おれの目にはやっぱりどこか寂しそうに写っていた。

吉音「ぶーぶー!」

悠「吉音」

吉音「は、はいっ?!」

悠「おれは他人の色々に首をつっこむ趣味はないが、なんでか巻き込まれる体質だ。だから、遠慮はするなよ。お前に遠慮なんか似合わないんだから。笑顔が原動力ってたんだからちゃーんと笑えっ。」

ぐにーーっ!
吉音「いひゃい、いひゃいよ、ほっへひっふぁらないで」

悠「うはー……やっわらかいな。」

ぐにー!うにょーん!

寅「……何してんだお前ら」

悠「うぉ……黙って見てんなよはずかちぃだろ｣

寅「キモい、ウザい、死ね」

悠「なんだその頭悪い女子高生が連呼しそうな単語の連なりわ」

寅「何でもいいが……店先でいちゃついてんなよ」

悠「そんなんじゃねーよ。っか、なに客か?」

寅「そうだよ……。お前、そんなんだから店に閑古鳥が鳴くんだよ」

悠「相手によってちゃんと接客してるっーの」

寅「それが間違ってるっていうんだよ!」

悠「大丈夫、お前らタイプの奴らはこーゆー対応、それ以外はすべてちゃんとした対応だ」

寅「よーし、分かった。構えろ……その顔面破壊してやる。」

悠「嫌だよっ!!どこの死神十三番だっ!」

寅「しらねぇ。今日は絶対にぶん殴る」

悠「だが断るっ!!」