ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー???ー

目を開けるとそこは見知らぬ屋敷の一室だった。
ここはどこだろうか……たしか、中村さんがやってきて……そうだ、チンピラに…

「っ…」

頭が痛い。薬の類いには耐性があるはずなのに…。
それより無臭で嗅いだだけで眠るなんていったいどんな薬を使われたんだ。

身体を起こそうとしたところで手足が縛られてるのに気がついた。

「へっへっへ、起きたかい?」

「あー?」

声に顔を向けると、寝起きには気分の悪い男の面がこっちを覗き込んでいた。
さっきのチンピラ、それに首をひねって周りを見回すと悪そうなのが何人もたむろしていた。

絶望感でもう一度気を失いたくなる。

「だんな、目を覚ましましたぜ」

「やぁ、小鳥遊さん。夜分におよびだてして申し訳ありませんね」

見知らぬ顔だった。

「誰だ?」

「あなたのおかげでとても迷惑している者ですよ」

「悪いな。迷惑の心当たりがないんだけど?」

「そちらに心当たりがなくってもこっちには大有りでしてね。なにも言わずにこいつにサインしてくれませんか?そうしたら無事におかえしします。」

男はそういっておれの鼻先に一枚の紙を突きつけた。

「サインって一体なんの?」

「もちろん店の権利を私に譲るという証文ですよ」

「あー?」

「こっちもこんな手荒なまねはしたくなかったんですよ、あなたがとっとと店を出ていってくれれば」

おれだって好きで店を開いているわけではないが、素直な性格をしているのでいった。

「あんたが、営業妨害の黒幕か」

「あの土地は私が先に目をつけていたんですよ。それん横からかっさらわれちゃあねぇ」

「っか、おれがあそこを選んだ訳じゃないんだが…。」

チンピラがおれの背中を踏みつけながら叫んだ。
ムカつくし痛い。

「つべこべ言わずにサインすりゃあいいんだよ。」

「手縛られてどーやってサインするんだよ。」

「ああ、署名なんかはこっちでしといてあげますよ。拇印さえいただければいいんです」

俺はたんたんと喋ってる黒幕にいった。

「文章偽造じゃないか。アンタら大江戸学園の生徒だろ。役人に訴えたらすぐにバレるぞ」

にやりと笑って奴が視線を向けた先では、目付きの悪い男が刀を床につき、あぐらをかいて座っていた。

「くくく、但馬屋。役人に訴えるそうだぞ?お前を引っ捕らえるか」

「ふふふ、ご冗談を。田ノ上様」

おれは首を無理矢理あげていった。

「今度は誰だ?」

「勘の悪い人ですねぇ。このお屋敷の主でもある田ノ上様はこの辺りの住民台帳を管理されているお役人様」

「ふふ、つまり俺が受理すれば、れっきとした公文書ってことだ」

なるほど、卑怯で酷いがやり口は上手いもんだった。どうやら、田ノ上とかいうのはチンピラよりは頭が回るらしい。
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