ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:小鳥遊堂ー
悠「これは……」
目安箱の中身を確認していると、一枚気になる投書を見つけた。
吉音「なになに悠、なにか事件?事件だよね!」
悠「いや、そうじゃないけど……っか、新、なんでそんな嬉しそうなのさ?」
吉音「だってヒマなんだもん。だから、ちょーっと大事件でも起こってくれないかぁ~って」
悠「ちょっと大事件って……物騒なやつだなぁ……」
確かにヒマなことは否定できない。今日も今日とて我が小鳥遊堂は閑古鳥が鳴いている。お客もいない店内を見渡せば、ため息が出てくるのは止められない。でも、まぁ平和が一番。穏やかな日常だと思えば、これはこれであり、のはず…………ほんとに大丈夫かな、うちの店。
吉音「で、どこで事件が起きたの?」
悠「だから違うって。投書の中にちょっと気になる名前があったからさ。ほらコレ」
見えやすいように手紙を吉音に向けてやる。
『突然将軍が姿を消してから、酉居さんや徳河詠美さんはとてもよく頑張っていらっしゃると思います。心付けでも届けたいのですが、そういう訳にもいかないですし、何か良い方法はないでしょうか』
悠「徳河さんてやっぱり人気者なんだなって思って」
自分では思いつかないけれど、どうにかして徳河さんたち執行部に感謝の気持ちを伝えたい。わざわざこうして目安箱に投書までしているのだ。投書した生徒の気持ちの強さと、徳河さんがいかに慕われているかが伺える。
吉音「なんてったって詠美ちゃんだからね!」
悠「なんじゃそりゃ」
まるで自分が褒められたかのように、吉音が顔を輝かせた。いつものことだけど、徳河さんの話しをするときの吉音は、本当にいい笑顔をしている。
吉音「で、悠?心付けってなに?」
悠「知らずにあんなに得意げだったのかよ!」
吉音「いいじゃん!きっといいことに決まってるって!」
悠「まぁー……間違っちゃあいないけどな……。心付けっていうのは、感謝の気持ちを形にすることだよ」
吉音「感謝の気持ち」
確かに、これは難しい問題だ。相手がただの生徒なら何の問題もない。面と向かって直接「ありがとう」と伝えたらそれで事足りるだろうし。それが恥ずかしいならば手紙やメールを送るという手段だってある。だけど、相手はあの徳河さん。今回の悩み事は簡単にいきそうにもないなぁ。
悠「さて、どうしたもんか」
吉音「?なにが?」
悠「何がって……」
吉音「だって、この手紙をくれた人は詠美ちゃんにお礼が言いたいんでしょ?感謝ならフツーにありがとうって言えば良いんじゃないの?」
吉音のあっけらかんとした物言いに苦笑いがもれる。徳河さんは立場上いろいろと忙しいんだけど……吉音ならそのへん気にしないんだろうな……。
ー大江戸学園内:武道場ー
悠「せいっ!やっ!はぁっ!!……ふぅ」
いく度目かの素振りを終えた後、構えを解いて深く息を吐く。
詠美「失礼します」
悠「あー?」
と、同時に武道場の扉が開き、一人の生徒が室内に入ってきた。徳河さんだ。徳河さんは一礼をすると、素早く道場の中へと足を進めた。そのまま止まることなく、流れるような動作で構えをとる。綺麗だ。頭に浮かぶのはそんな率直な言葉だけ。ただ構えただけ。それだけの動作に、おれの心は引き込まれ、どうしても視線を外すことが出来ない。
詠美「ふっ」
徳河さんが剣を振るうと、宙に幾重もの光が走った。徳河さんの剣は毎のようで、相手を斬るというよりむしろ魅惑してしまいそうな、そんな美しさがあった。
悠「……」
息を呑む。言葉の出し方を忘れたかのように、ただただその光景に魅了される。
悠「これは……」
目安箱の中身を確認していると、一枚気になる投書を見つけた。
吉音「なになに悠、なにか事件?事件だよね!」
悠「いや、そうじゃないけど……っか、新、なんでそんな嬉しそうなのさ?」
吉音「だってヒマなんだもん。だから、ちょーっと大事件でも起こってくれないかぁ~って」
悠「ちょっと大事件って……物騒なやつだなぁ……」
確かにヒマなことは否定できない。今日も今日とて我が小鳥遊堂は閑古鳥が鳴いている。お客もいない店内を見渡せば、ため息が出てくるのは止められない。でも、まぁ平和が一番。穏やかな日常だと思えば、これはこれであり、のはず…………ほんとに大丈夫かな、うちの店。
吉音「で、どこで事件が起きたの?」
悠「だから違うって。投書の中にちょっと気になる名前があったからさ。ほらコレ」
見えやすいように手紙を吉音に向けてやる。
『突然将軍が姿を消してから、酉居さんや徳河詠美さんはとてもよく頑張っていらっしゃると思います。心付けでも届けたいのですが、そういう訳にもいかないですし、何か良い方法はないでしょうか』
悠「徳河さんてやっぱり人気者なんだなって思って」
自分では思いつかないけれど、どうにかして徳河さんたち執行部に感謝の気持ちを伝えたい。わざわざこうして目安箱に投書までしているのだ。投書した生徒の気持ちの強さと、徳河さんがいかに慕われているかが伺える。
吉音「なんてったって詠美ちゃんだからね!」
悠「なんじゃそりゃ」
まるで自分が褒められたかのように、吉音が顔を輝かせた。いつものことだけど、徳河さんの話しをするときの吉音は、本当にいい笑顔をしている。
吉音「で、悠?心付けってなに?」
悠「知らずにあんなに得意げだったのかよ!」
吉音「いいじゃん!きっといいことに決まってるって!」
悠「まぁー……間違っちゃあいないけどな……。心付けっていうのは、感謝の気持ちを形にすることだよ」
吉音「感謝の気持ち」
確かに、これは難しい問題だ。相手がただの生徒なら何の問題もない。面と向かって直接「ありがとう」と伝えたらそれで事足りるだろうし。それが恥ずかしいならば手紙やメールを送るという手段だってある。だけど、相手はあの徳河さん。今回の悩み事は簡単にいきそうにもないなぁ。
悠「さて、どうしたもんか」
吉音「?なにが?」
悠「何がって……」
吉音「だって、この手紙をくれた人は詠美ちゃんにお礼が言いたいんでしょ?感謝ならフツーにありがとうって言えば良いんじゃないの?」
吉音のあっけらかんとした物言いに苦笑いがもれる。徳河さんは立場上いろいろと忙しいんだけど……吉音ならそのへん気にしないんだろうな……。
ー大江戸学園内:武道場ー
悠「せいっ!やっ!はぁっ!!……ふぅ」
いく度目かの素振りを終えた後、構えを解いて深く息を吐く。
詠美「失礼します」
悠「あー?」
と、同時に武道場の扉が開き、一人の生徒が室内に入ってきた。徳河さんだ。徳河さんは一礼をすると、素早く道場の中へと足を進めた。そのまま止まることなく、流れるような動作で構えをとる。綺麗だ。頭に浮かぶのはそんな率直な言葉だけ。ただ構えただけ。それだけの動作に、おれの心は引き込まれ、どうしても視線を外すことが出来ない。
詠美「ふっ」
徳河さんが剣を振るうと、宙に幾重もの光が走った。徳河さんの剣は毎のようで、相手を斬るというよりむしろ魅惑してしまいそうな、そんな美しさがあった。
悠「……」
息を呑む。言葉の出し方を忘れたかのように、ただただその光景に魅了される。