ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

悠「お待たせしました。」

伊都「まぁ……早かったのね」

悠「そりゃあね、お客さんを待たせちゃいけないってのが、小鳥遊堂のポリシーですので、それじゃあ、ごゆっくり……」

適当なことを言いながら、おれはお茶とぜんざいを大神さんの前に並べた。

伊都「あら、どこへいくの?悠……」

悠「へ?いやあの、ご注文の品を届けたので、下がろうかと……」

伊都「いやぁね、下がってどうするの?」

悠「ど、どうするったって……」

伊都「いいから、ここに座りなさい。」

そういって彼女は、自分の隣の席を、ぽんぽんと手のひらで叩いた。

悠「は、はぁ……」

釈然としないまま、いわれるままに腰を降ろすおれ。大神さんは満足そうにうなずくと、団子のひとつをスプーンですくって……

伊都「はい、あ~~ん♪」

悠「へ、へっ?」

いきなりそれを口の前に差し出されて、おれは固まってしまった。

伊都「あ~~ん……」

悠「いや、あ~~んといわれても……」

そんなおれを見て、大神さんはぷんぷんと怒り始める。

伊都「ちょっと、あ~~んといったら、素直にお口をあけなさいよ」

悠「い、いや、だって……」

伊都「さっきお礼をくれるといったでしょう?それとも、あれはウソだったのかしら?」

悠「えっと、あのぉ……一応聞くけど、おれに食べさせてくれるのが、お礼になるんですか?」

伊都「当たり前でしょう?何をいってるのかしら、この人は……」

悠「えぇ……」

そ、そうなんだろうか?おれが知らないだけで、この界隈ではソレがお礼になるのか?そう思って吉音の方を見やると、ぷるぷると首を振っている。……よかった、やっぱり非常識なのは、大神さんの方みたいだ。

伊都「はい、それじゃあ気を取り直して……あ~~ん♪」

悠「あ、あ~~ん……」

いわれるままに口を開くと、まるっとした白玉団子が飛び込んできた。

伊都「うふふふっ、おいしい?」

悠「はぁ……まぁ、なんともうしましょうか……」

伊都「もう、何ですの?その煮え切らないお返事は……」

悠「いや、それはだって、自分で作ったもんだし……」

伊都「ダイちゃん、解体……」

悠「あっ、あぁ!!おいしい!おいしいですっ!!」

伊都「うふふふっ、よかった……それじゃあもう一個、あ~~ん♪」

悠「あ、あ~~~ん……」

ううっ、通りすがりの人たちが、みんなこっちを見ている……。は、恥ずかしい……恥ずかしいぞぉ……!!

伊都「恥ずかしい……とか、思ってない?もしかして……」

悠「い、いえ、決してそのようなことはっ……!!」

伊都「ですわよねぇ、はい、あ~~ん」

悠「あ、あ~~ん!!」

ええい、もうこうなりゃどうにでもなれだ!!しかしやっぱり、この大神伊都の趣味ってのは、よくわからないなぁ……。
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