ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

悠「ええと、大神さん……」

伊都「……」

大神さんはあいかわらず仏頂面のままだ。やっぱり機嫌が悪いのかな……。

悠「今日はありがとうございます。本当に助かったよ。」

そういった、頭を下げる。それでも彼女は、やっぱり無言で……。

伊都「……本当に?」

悠「へ?」

気がつくと、大神さんは満面の笑みを浮かべてこちらを見ていた。

伊都「本当に、この私に感謝していますの?」

悠「あ……あぁ、だって、ガラの悪い連中を、追い払ってくれたからさ……」

伊都「まあ、じゃあやっぱりあれは、新しいアルバイトじゃなかったんですのね」

悠「本気でそう思ってるとしたら、かなり認識能力に問題があると思いますよ」

伊都「あらぁ、そんなにほめてくれなくてもぉ……」

悠「ほめてねーよ!」

伊都「まぁとにかく、悠が私に感謝していると、それはわかりました」

悠「あぁ、それは何より」

伊都「でもひとつ間違っていますわ。私の名前は、拝神夜(おがみないと)」

悠「いっ?」

伊都「感謝の言葉を述べるのに、相手の名前を間違うのは、失礼ですわね。言い直してくれる?」

悠「ええ~~……?」

伊都「ねぇダイちゃん、このボロ店、解体するのに、どれくらいかかるかしら……?」

ダイゴロー『チャン!』

悠「喜んで、いわせていただきます」

くっ……これじゃあさっきのチンピラどもと、やってることは変わらんじゃないか……。

伊都「はい、さんはいっ」

悠「え、え~~……拝神夜様、アナタのおかげで、助かりました。どうも、ありがとうございます!」

伊都「おーーっほっほっほ……!」

悠「(た、耐えろおれ……。ここで店を潰されちゃ、何にもならないぞ!)」

伊都「まぁ、いったい何が助かったのか、今ひとつわかりませんけど……そういうことなら、何かお礼をいただかなければ、なりませんわねぇ、ふっふっふ……」

悠「お、お礼……?」

伊都「?何を身構えているの?」

悠「いや……その……」

どんな法外な物を吹っかけられると思って……などとは、口が裂けても言えない。

伊都「そうね……お茶とお菓子をいただけるかしら?」

悠「え?」

伊都「だって、もともとここは、お茶を飲みに来たんですもの。うるさいのもいなくなったし、お茶とお菓子をくださいな。悠のおごりで」

悠「あ、あぁ、お安いご用です。えーと……白玉ぜんざい辺りで良いですか?」

伊都「えぇ、早くしてね♪」

悠「はいよ、お茶と、白玉ぜんざい一丁!」

やれやれ、また身体で……とかいわれたら、どうしようかと思った。おれは胸をなでおろしながら、店の奥へ向かった。
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