ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】

ー新宿:小鳥遊堂ー

男子生徒A「ひ、怯むなてめぇら。これだけの人数差で、しかも相手は女だぞ!!」

男子生徒D「き……きええぇぇーーー…っ!!」

チンピラのなかで一番下っ端とみられる男が、大神さんに向かっていく。

伊都「よっ、と」

大神さんはその斬撃を紙一重で避けると、続く二人目の胴をなぎ払った。

男子生徒D「……あいってぇ!!」

伊都「ハッ、ヤァッ!」

男子生徒E「うわっ……とっ!あぶねぇ!!」

刀をまるでバトンのようにくるくる回したのかと思うと、突然縦横に斬りつける。構え方からなにから、でたらめのめちゃくちゃだ。しかし、強い……!!

伊都「こんなものなの?眠くなりますわ……」

男子生徒E「ええい、ちっくしょう!!」

自棄になったのか、三下の男がめくらめっぽう刀を振り回し始めた。

伊都「あはははっ!その必死な顔、何かかわいい♪」

けらけせと笑いながら、そのすべてを紙一重で避ける大神さん。恐るべき動体視力だ。しかしその陰に隠れて、数人の男たちが近づいてくるのが見えた。

悠「大神、危ない!!」

男子生徒D「……もらった!」

まったくの死角から繰り出される複数の斬撃。さすがの大神さんも、万事休すか!?

伊都「ダイちゃん、よろしく♪」

ダイゴロー『チャン!!』

ドゴッ!!
男子生徒D「ぐわあああぁあ~~!!!」

しかし周到に潜ませておいた剣魂が、チンピラどもを吹っ飛ばした。見た目は間抜けなモグラみたいだけど、あの剣魂もかなり強い!

男子生徒E「ひっ、ひいぃ…!」

これはかなわないと見たのか、残ったチンピラが逃げに入ろうとする。しかし……。

吉音「おっと……ここから先は、通さないよ?」

信乃「人質にしてくれたお礼は、たっぷりとさせていただき……もらうぜっ!」

男子生徒C「ひょえええ~~っ!!」

そうして待ち構えていた吉音と探偵団の面々に、ボコボコにされていくのであった……。ちなみにおれはもう傍観側に徹している。

男子生徒B「こ、こりゃダメだ……逃げましょう、兄貴」

男子生徒A「ち、ちくしょう、覚えてろよっ!」

悠「あっはっは。そう何度も覚えてられないって!」

と、ほうほうのていで逃げていくチンピラ達の前に、二つの影が立ちはだかっていた。

十兵衛「こらお前たち、どこへいくつもりだ?」

男子生徒C「ゲエェーーーッ、お、お前たちは……!?」

平良「巷を騒がせた罪は重いぞ、大人しくお縄につくがいい!」

剣術指南役の柳宮十兵衛と、火盗改の長谷河平良……終わったな、あいつら。そして平良の号令一過、チンピラたちは次々に公安に捕えられていく。

悠「やれやれだぜ。とりあえずこれでひと安心、かな?」

吉音「わかんないよ?謹慎がとけたら、また出てくるかも……」

不安げに表情を曇らせる吉音に、長谷河さんが軽く頭を下げる。

平良「迷惑をかけたな。今後はこんなことがないよう、きつく戒めておく。」

悠「頼みますよ、長谷河さん」

そして師匠は、大神さんの方に歩み寄っていく。

十兵衛「大神伊都……」

伊都「…………」

しかし大神さんのほうは、そんな師匠を完全にシカトしている。

十兵衛「暴漢逮捕に協力してくれたこと、感謝する。面倒を掛けたな」

伊都「…………」

聞こえてないわけじゃない。どうも意図的に無視してるみたいだ。なんだろう……十兵衛さんのことが嫌いなのか?

平良「十兵衛さん、行きましょう」

十兵衛「あぁ。ではな、小鳥遊……」

悠「あ、はい、どうも……」

やれやれ、と肩をすくめるようにして、十兵衛さんは戻っていく。ま、とりあえずおれもお礼をいっておくべきかな、ここは……。
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