ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
吉音「悠、なんだったの?」
悠「よー分からん。けど、このバス、しばらくは動きそうにないって」
吉音「えーっ!それって困るよーっ!」
悠「困ってるのは、おれも含めて、ここで立ち往生している連中みんなもだよ。だけど、しょうがないじゃないか。ここで喚いたって、どうなるものでもないんだし」
吉音「じゃあ、どうするのさーっ」
悠「どうするって……急がば回れ。遠回りしてかえるしかないだろ」
実際、ずっと立ち往生しているところで始まらないし、店も開けられない。……まあ、一番にぎわう大通りが塞がれているとなると、今日の客足はあがったりになりそうだけど。
吉音「むうぅー、早く撤去しちゃえばいいのに!」
悠「まったくだわさ」
想「申し訳ありません」
悠「うわっ?!」
吉音「あー、想ちゃんだ。想ちゃんもここで立ち往生?」
想「いえ。私はここで問題が起きているとの報告を受けましたので、その確認と対処に」
悠「あー、ってこたぁ……もうすぐ撤去されるんすか?」
想「いえ……それが、すぐにとは……」
悠「あー…?」
歯切れの悪い逢岡さんの言葉に、おれは首をかしげる。それに気付いたのか、逢岡さんは騒ぎの元凶になっているバスを見やって口を開いた。
想「このバスは廃車予定で、ちょうど執行部の方で輸送しているところだったんです。ですが先ほど、運搬中に問題が起きて仕方なく放置したから後を任せる、と報告されまして……」
悠「あー?」
それは報告じゃなく、丸投げとか命令とかいうんじゃないかと思う。
想「なにぶん、急な報告でしたから、運搬車も牽引車もすぐに手配できるか分からないんです。ですので、皆さんには申し訳ないのですが、撤去の目処がつくまでは迂回をお願いします」
後半の言葉は、おれだけでなく、この場で足止めされている者全員に向けての言葉だった。群衆からざわめきがあがったけれど、そこは逢岡さんの人徳のなせる技か、それ以上の騒ぎにはならなかった。
男子生徒A「んまぁ、逢岡さまがそういうんならなぁ」
女子生徒A「っていうか、悪いのは執行部で、逢岡様は尻拭いをしてあげてるんでしょ?」
男子生徒B「そういうことなら、しょうがねえやなぁ」
想「ご協力、ありがとうございます」
逢岡さんが深く一礼して、その後ろに控えていた同心たちが交通整備にかかろうとする。そのときだった。
「ちょぉっと待ったあぁ!!」
吉音「え、なになに!?」
頭上から響き渡った大声に、吉音だけでなく、その場の全員が一斉に顔をあげる。もちろんおれもだ。
悠「この声、いったい何処から……あっ、屋根の上!?」
「はっはっはーっ!……とうっ」
屋根の上で逆光を浴びて高笑いしたその人物は短い掛け声とともに降りてくる。
吉音「あっ、モココさん」
桃子「いよう、新。それに悠」
悠「ち、ちゃーす、鬼島さん。随分と変わったところからの登場ですね」
桃子「いやな。何だか騒がしかったから、とりあえず上がってみたんだよ」
悠「あー…さいですか」
何とかと煙は……という諺が脳裏をよぎったが、それはいわないでおく。
桃子「んで、こいつはいったい何の騒ぎなわけよ?」
悠「ええとですね……」
桃子「あっ、分かった。このバスが邪魔で困ってるんだな」
悠「……色々と端折れば、そういうことです」
桃子「よぉし分かった。後は、あたいに任せな」
悠「え?」
想「鬼島さん?」
腰の金棒を軽々と担ぎあげた鬼島さんに、おれは急速に嫌な予感がしてくる。それは逢岡さんも同じようで、心配そうな顔になっている。
吉音「悠、なんだったの?」
悠「よー分からん。けど、このバス、しばらくは動きそうにないって」
吉音「えーっ!それって困るよーっ!」
悠「困ってるのは、おれも含めて、ここで立ち往生している連中みんなもだよ。だけど、しょうがないじゃないか。ここで喚いたって、どうなるものでもないんだし」
吉音「じゃあ、どうするのさーっ」
悠「どうするって……急がば回れ。遠回りしてかえるしかないだろ」
実際、ずっと立ち往生しているところで始まらないし、店も開けられない。……まあ、一番にぎわう大通りが塞がれているとなると、今日の客足はあがったりになりそうだけど。
吉音「むうぅー、早く撤去しちゃえばいいのに!」
悠「まったくだわさ」
想「申し訳ありません」
悠「うわっ?!」
吉音「あー、想ちゃんだ。想ちゃんもここで立ち往生?」
想「いえ。私はここで問題が起きているとの報告を受けましたので、その確認と対処に」
悠「あー、ってこたぁ……もうすぐ撤去されるんすか?」
想「いえ……それが、すぐにとは……」
悠「あー…?」
歯切れの悪い逢岡さんの言葉に、おれは首をかしげる。それに気付いたのか、逢岡さんは騒ぎの元凶になっているバスを見やって口を開いた。
想「このバスは廃車予定で、ちょうど執行部の方で輸送しているところだったんです。ですが先ほど、運搬中に問題が起きて仕方なく放置したから後を任せる、と報告されまして……」
悠「あー?」
それは報告じゃなく、丸投げとか命令とかいうんじゃないかと思う。
想「なにぶん、急な報告でしたから、運搬車も牽引車もすぐに手配できるか分からないんです。ですので、皆さんには申し訳ないのですが、撤去の目処がつくまでは迂回をお願いします」
後半の言葉は、おれだけでなく、この場で足止めされている者全員に向けての言葉だった。群衆からざわめきがあがったけれど、そこは逢岡さんの人徳のなせる技か、それ以上の騒ぎにはならなかった。
男子生徒A「んまぁ、逢岡さまがそういうんならなぁ」
女子生徒A「っていうか、悪いのは執行部で、逢岡様は尻拭いをしてあげてるんでしょ?」
男子生徒B「そういうことなら、しょうがねえやなぁ」
想「ご協力、ありがとうございます」
逢岡さんが深く一礼して、その後ろに控えていた同心たちが交通整備にかかろうとする。そのときだった。
「ちょぉっと待ったあぁ!!」
吉音「え、なになに!?」
頭上から響き渡った大声に、吉音だけでなく、その場の全員が一斉に顔をあげる。もちろんおれもだ。
悠「この声、いったい何処から……あっ、屋根の上!?」
「はっはっはーっ!……とうっ」
屋根の上で逆光を浴びて高笑いしたその人物は短い掛け声とともに降りてくる。
吉音「あっ、モココさん」
桃子「いよう、新。それに悠」
悠「ち、ちゃーす、鬼島さん。随分と変わったところからの登場ですね」
桃子「いやな。何だか騒がしかったから、とりあえず上がってみたんだよ」
悠「あー…さいですか」
何とかと煙は……という諺が脳裏をよぎったが、それはいわないでおく。
桃子「んで、こいつはいったい何の騒ぎなわけよ?」
悠「ええとですね……」
桃子「あっ、分かった。このバスが邪魔で困ってるんだな」
悠「……色々と端折れば、そういうことです」
桃子「よぉし分かった。後は、あたいに任せな」
悠「え?」
想「鬼島さん?」
腰の金棒を軽々と担ぎあげた鬼島さんに、おれは急速に嫌な予感がしてくる。それは逢岡さんも同じようで、心配そうな顔になっている。